住民参加で挑む「ゆうきの里」づくりと環境負荷軽減 JAはだの・宮永均組合長【農協研究会報告から】2022年4月27日
農業協同組合研究会が「熱く語ろう JAはみどりの食料システム戦略にどう向き合うか」をテーマに、4月23日に開いた2022年度研究大会。神奈川県秦野市の「JAはだの」の宮永均組合長は「都市住民を巻き込んだ食料・農業システムへの挑戦」と題し、農業に関わる人をさまざまな仕組みを通して増やすとともに、直売所を訪れる消費者とともに取り組んでいる環境対策などについて紹介した。
JAはだの組合長 宮永均氏
秦野市は、都心から西に約60キロの都市と農村が混在した畑作地帯であり、多種多様な野菜や花き類などを栽培している。日本全体で生産基盤維持が課題と指摘されているが、やはり生産基盤が脆弱化している課題がある。主食とする米が余る中、もっと需要にあった作物生産に向けた政策転換が必要ではないかと強く思っている。
JAとして、農にかかわる人の裾野を広げ食料自給率を高めようと取り組んできた。市や市農業委員会と連携して「はだの都市農業支援センター」をつくり、人を育てている。市民など希望者を対象にした体験農園を3年前から設置するとともに、手軽に農業体験ができる「はだの農業満喫CLUB」をつくっている。こうして多様な人に農業にかかわってもらい、そのうえで地産地消への理解を深めて食料自給率向上につなげたいと考えている。
「はだの農業満喫CLUB」には383人の会員がおり、WEBなども通してさまざまな農業体験への参加を呼びかけている。これが農への第一歩の関わりとなり、ここから農業に対する理解と主体性の深化につなげる。農園オーナー制度も作り、落花生やサツマイモの植え付けや収穫体験に参加していただいている。中級レベルになると体験型農園で20平方mの土地で作物を育ててもらい、さらにもう少し農業をとなると、市民農業塾の基礎セミナーコースで農業を目指す訓練、研修を積んでもらう。本格的に農業をしたい人には就農コースで2年間学んでもらい、その後40aを借りてファーマーになる。今は60人ほどで13haほど利用していただいている。経営規模は40aから多い人で1.7haを耕作しており、販路については「ファーマーズマーケットはだのじばさんず」に出荷してもらっている。
組合員や地域住民とともに環境対策に取り組んでいる。20年前に地産地消の拠点としてファーマーズマーケットを設置し、多面的貢献とCO2削減に取り組んできた。環境保全型農業への取り組みとして、防除関係ではカーネーションの植え替えで労力の負担軽減のために薬剤を使わない土壌消毒として、温湯土壌消毒の実用化などを確立した。施肥関係では、phやECをJAで独自診断している。さらに農薬関係では、南平地区というところで生産者17人がフェロモントラップを仕掛け、JAで薬剤の半額助成を行ってきた。
現在は積極的に「ゆうきの里」づくりを進めている。畜産農家から耕種農家に堆肥を流通させる取り組みで、化学肥料を低減し、安心安全な農産物を市民に提供しようという考えのもとで進めている。生産者が消費者と共生して有機物のリサイクルや自然環境の保全などを通し、健康と豊かな食生活を創造する。地産地消を軸とした有機農業のさと、さらに生産者と消費者が手を結び勇気を与えていこうと、こう命名をしている。
環境対策としては「見える化」「減らす化」「埋める化」「創る化」に取り組んできた。「見える化」では、ファーマーズマーケットに来店する車両の排出するCO2を調査したところ、年間最大3900トンと推計した。これは店舗の電力使用やLPG使用に伴う合計排出量123トンの30倍以上で、非常に多いと認識した。
「減らす化」では、エコドライブ啓発のチラシ配布にマイバッグ持参で購入金額から3円値引きをする運動を展開したほか、2010年から店舗照明のLED化に着手し、15年に完了した。
「埋める化」では、オフセットとしてLED防犯灯の寄贈を行い、合計155基に達し、市も意識してくれて市内の防犯灯はすべてLED化された。「創る化」では、東日本大震災から続く電力不足への懸念からファーマーズマーケットに太陽光パネルを設置し、年間3万9000kwを発電している。
環境問題は喫緊の課題であり、JAグループの活動にも環境配慮を折り込み、環境保全上の効果を最大限発揮できるようにしなければならない。JAはだのとしても持続的な環境対策で環境意識の涵養に努めなければならないと考えている。JAは運動体でもあるので地道な活動をしっかり継続し、あきらめずに取り組んでいきたい。
(あすは鹿児島県の「JA鹿児島きもつき」の下小野田寛組合長の「有数の畜産・畑作地帯はみどりの食料システムにどう向き合うか」について掲載)
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