「米は本当に足りない」と農家報告 困窮世帯、学校給食に影響深刻 自給率上げる農政めざし埼玉でシンポ2025年3月24日
3月22日、さいたま市内で、埼玉の農業・食料の考えるシンポジウムが開かれ、米不足への関心もあって140人が集まった。シンポでは、学校給食やフードバンク、困窮家庭への影響が報告され、農家からは「米は本当に足りない。消費者と農家とが連携して農業予算を増やし、農家をこれ以上減らさない農政を」との意見が出された。
食料自給率引き上げへの課題を説く田代洋一・横浜国立大学名誉教授
●田代洋一氏、自給率向上への農政課題を講演
シンポは埼玉県内で食と農に関わるさまざまな運動を進めてきた人たちの実行委員会が主催した。
横浜国立大学の田代洋一名誉教授が、食料自給率をどう引き上げていくかをテーマに基調講演した。
令和の米騒動の教訓として「ゆとりある需給計画」と十分な備蓄(市場隔離)を説き、「水田を水田として守る」。野菜作りが盛んな埼玉農業の課題にもふれ、農業労働を正しく評価・反映した価格形成と直接支払いのミックスで、農業が引き合う仕事になり消費者も安心して買えるようにする政策課題を提唱。食農教育、子ども食堂の意義や「お米の多様な食べ方」の開発にふれ、「必要な農林予算を確保し、食料自給率50%をめざそう」と説いた。
埼玉の農業・食料の考えるシンポジウムには140人が集まった(3月22日、さいたま市内)
●農家と市民が意見交換
シンポジウムでは、米どころ・加須市の兼業農家で埼玉農民連副会長の松本愼一さん、「安全な地元農産物の活用と学校給食無償化をめざす埼玉連絡会」事務局長・北村純一さん、フードバンクよしみ・かわじま代表理事の佐藤利昭さん、専業農家で農民連女性部副部長の浅子紀子さんが、埼玉食健連・柳重雄会長のコーディネートで話し合った。
1.8ヘクタールの田で米をつくる加須市の松本さんは「米が本当に足りない」現実を報告し、「消費者と農家が連携し農業予算を増やそう」と呼びかけた。
●フードバンク「あと1月で米尽きる」
北村さんは、県内での学校給食無償化の広がりとその意義を説明しつつ、米価上昇の中、「小学校では本来1人70グラムの米を60グラムに減らさざるを得なかった。学校給食会は米を前年並みに確保したというが心配だ」という現場の声を紹介した。
困窮世帯、子ども食堂などに食料を届ける活動をしている佐藤さんは、物価高が困窮世帯を直撃し「参加(利用)世帯は右肩上がりだが、食品寄付は伸びていない。お米はまったく集まらず、あと1ヵ月で手持ちは底をつく」と訴えた。
●見沼田んぼから「安全・安心な食」
さいたま市で有機農業(田と畑各2ヘクタール、平飼い養鶏200羽以上、果樹20アール)をしている浅子さんは、去年は暑くて田の草を取り切れず、収量が減った。カメムシ被害でもち米と黒米はダメで、彩のきずなにも影響が出たと苦労にふれつつ、「安全安心な食料を安全安心な大地から届けるため、これからも見沼田んぼで農業をしていきたい」と抱負を語った。
●「給食無償化=充実」ではない
自然エネルギーの電力会社、学校給食無償化運動に取り組む市民、県内自治体の市議らが、会場から次々と意見を述べた。「給食を無償化すると、米や食材の高騰で、(予算が決まっている)給食の食材の質が落ちる。無償化=充実ではない。どう考えたらいいか」といった問題も出された。
伊藤岳参議院議員(共産)が国会情勢報告を行った。
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