TPP、止める力はJAに 孫崎氏が強調2013年8月7日
家の光協会が8月5、6日に開いた「家の光文化賞トップフォーラム2013」では元イラン大使の孫崎享(まごさき・うける)氏が特別講演。TPP(環太平洋連携協定)問題を中心に話した。
◆ISD条項で国家主権が失われる
孫崎氏は、TPPは「日本の将来を決める岐路。今日の外交のもっとも大きな問題」と強調。とくに投資家が国家を提訴することができるISD条項がTPP協定に盛り込まれようとしていることに警鐘を鳴らした。
ISD条項は、外国企業が進出先の国で期待した利益が得られなかったときに、その国に補償を求める「企業利益最優先」が基本理念だと指摘。メキシコに進出した米国企業の廃棄物処理施設が有害物質を排出しているとして、自治体政府が操業不許可をしたところ、この企業はメキシコ政府を訴え1700万ドルの賠償金を勝ち取ったなど、その実態を解説した。
孫崎氏は各国の法律や制度は企業利益だけでなく、生命、健康、環境、地域格差などさまざまな観点でつくられているものだが、「それがおかしいというのがISD条項。しかし、国家の主権が失われる深刻な問題だ」と訴えた。
◆TPPは国民全体の問題
しかし、国内では「あたかも正しそうなキャッチフレーズの政治になってしまった」と孫崎氏。たとえば、1.5%を守るために98.5%が犠牲になっている、というのも、TPPが農業だけでなくISD条項を含め多くの人々の生活に影響する21分野で交渉されている実態を知らせない。「だから、知らない人は自分は98.5%に属している、と思ってしまう」と問題点を挙げた。また、中国・韓国・台湾との貿易はすでに米国のそれより2.5倍になっているのに「TPPに参加しないと世界の孤児になる、という。正しそうだが実態は逆」などと指摘した。
こうした問題を挙げ「TPPは国民全体の問題。大きな問題は農業かも知れないが、国民の健康や日本という国を守るということ。JAグループに大変期待している」と述べるとともに、将来世代が大きな影響を受ける問題だとして「何であの世代はTPPに入ったんだ、と糾弾されることなる」と強調した。
(関連記事)
・次代につなぐ協同活動を 支店の教育文化活動で地域を元気に 家の光「JAトップフォーラム」(13.08.06)
・【梶井功の時論的随想】(76)ねじれ解消で「思うがまま」は許されないーTPPと規制改革ー(2013.08.06)
・孫崎享氏「TPP参加に歯止めを」 農協研究会(2013.06.10)
・【対談】どう考える 日本の安全保障 孫崎享氏・田代洋一氏(2012.07.18)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































