営農経済事業の改革へ 地域の実態に合わせ工夫を JA-IT研究会 2014年11月19日
・購買・生産一体で
・大規模法人と連携
・子会社と機能分担
全国のJA役職員で構成するJA‐IT研究会(代表=今村奈良臣東大名誉教授)は、11月14、15日、東京で「JAの基本である営農経済事業改革について」の研究会を開き、改革の方向、地域営農システムの構築、JAと法人等の関係、子会社との連携などについての取り組み報告をもとに意見交換した。
JA‐IT研究会は、営農関連事業を主軸とした地域づくりとJAのIT革命を一体的にとらえた研究を目的とするもので、2001年に発足し、これまで年に2、3回、公開の研究会を開いてきた。38回目となる。今回は、JA甘楽富岡、JA越後さんとう、JAさがの3JAの現地報告があった。
◆購買・生産一体で
JA甘楽富岡理事の黒沢健二氏は「協同活動をベースとしたJA経済事業改革への挑戦?地域実態に即応した『地域営農システム』づくり?」で報告。同氏は特に生産販売と生産資材の購買の一体化によるマーケット戦略の必要性を強調した。
農産物を有利に販売するためには、栽培ステージの共有化による計画生産が求められるが、それを実現するには購買品目の統一が欠かせない。また販売パートナー先から求められる安全基準づくりや商品トレースの見地からも、営農と購買をリンクさせた事業展開が必要となる。
JA甘楽富岡では「購買品取引委員会」があり、そこに生産組織代表や、理事会の営農専門委員会が参画し、透明性・公開性の高い購買事業を実現している。委員会は購買品の仕入れ先や仕入れ品の決定、入札執行、購買品供給売価の決定などを行う。
すでに同JAでは、肥料・農薬などの購買品の供給では、「部会別共同一括自取システム」、さらには「圃場ダイレクトシステム」などを導入。これによって大幅な物流経費の削減をすすめ、特に大型ブロック圃場では、共同作業の日程とリンクさせ、効率的な作業を展開している。
営農経済事業は、JAの各組織や組合員が直接事業に参画すること、つまり協同活動によって成り立つ。そのためのポイントとして、黒澤氏は、JA組織内で営農経済事業のあるべき姿・役割・機能を討議して、価値体系に共有化をめざすことの必要性を強調。「購買事業は価格だけで判断できるものでない。組合員との関係性を強め、JAらしいシステムを考えるべきだ」と指摘した。
(写真)
経済事業改革の取組み方向を検討したJA‐IT研究会
◆大規模法人と連携
JA越後さんとうは「JAと法人等による農業振興・営農事業連携」で報告。同JAはカントリーエレベーターの250t入りサイロ1本の利用を大規模生産組織に任せている。きっかけは、平成15年の凶作で米価が高騰したことにある。販売先の需要に応える品質の米が確保できなくなった大規模生産法人が、JAに協力を求めてきた。
そこでJAではサイロ1本分の利用を提案。生産法人は、他の生産法人や大規模生産者に声を掛け、「越路コシヒカリ栽培研究会」を立ち上げ、その組織でサイロを集約利用することになった。
米の販売は研究会が行うので、JAの集荷・販売に直接の寄与はないが、大規模生産者グループとの関係を維持できると同時に、カントリーの稼働率向上、生産資材等の購買事業の利用拡大につながる効果がある。
同JAの水島和夫・営農経済担当常務は「研究会としては部分利用であっても、担い手生産者とJAの接点として両者にとってウイン・ウインの関係を構築できる。また『生産者は自らの経営を守り、JAは地域を守る」という役割が明確になる」と評価する。
◆子会社と機能分担
経済連業務を引き継ぐJAさがは、「子会社との連携による生産振興」で加工事業を中心とした契約栽培、さらにJAと県連、全国連の機能分担について報告した。同JAは昭和45年のブロイラーからスタートし、その後冷凍ピラフやミートセンターなど、子会社による加工事業に取り組んできた。現在、経済連時代からの子会社11社、合併前のJAから引き継いだ子会社8社を持つ。
米飯、カット野菜、食肉、飲料と多岐に渡るが、全国で2位を誇るタマネギでみると、市場出荷のほかは、加工用が中心で剥きタマネギとして年間1400t(27年度計画)、ハンバーグピラフ原料として300?350t使っている。このほかキャベツ・レタスのカット野菜を約2400t製造。
同JAはこの加工の原料となる野菜の契約栽培を拡大するため、定植・収穫の委託制度を導入。これを総合建設・倉庫業を営んでいる子会社の一つが引き受ける。
契約栽培の買い入れ価格は、通常の生産体系にくらべ、契約栽培は同水準か若干高めに設定している。一方、定植・収穫作業委託にしても、最終的な生産者素収益は通常の生産、契約出荷に比べて大差ない。同JA原澄夫常務は「労力を軽減して収益がアップすることで生産の拡大につなげたい」と言う。
このようにJAさがは子会社を活用して、JAの加工事業と農家の営農を結びつける取り組みを機能に乗せている。原常務は「JA、農家、連合会のそれぞれやるべき機能を明確にして、農家所得の最大限確保をはかることが、いま一番求められていることだ」と、営農経済事業改革の進むべき方向を示唆した。
(関連記事)
・新たな中央会制度 農協法に位置づけを(2014.11.07)
・JA解体の第1弾 監査機能を剥奪し中央会の無力化へ 福間莞爾・新世紀JA研究会顧問(2014.10.23)
・JAの機能、もっと発信を 全中の有識者会議(2014.10.10)
・農協改革で日本政府と連携 米国商工会議所(2014.09.18)
・総合事業の必要性強調 全中総合審議会専門委(2014.09.09)
重要な記事
最新の記事
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(1)育苗箱処理剤が柱2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(2)雑草管理小まめに2025年6月17日
-
価格高騰で3人に1人が米の消費減 パンやうどん、パスタ消費が増加 エクスクリエの調査から2025年6月17日
-
深刻化するコメ加工食品業界の原料米確保情勢【熊野孝文・米マーケット情報】2025年6月17日
-
2025年産加工かぼちゃ出荷販売会議 香港輸出継続や規格外品の試験出荷で単収向上を JA全農みえ2025年6月17日
-
2024年産加工用契約栽培キャベツ出荷販売反省会を開催 旬別出荷計画の策定や「Z-GIS」の導入推進を確認 JA全農みえ2025年6月17日
-
和歌山「有田みかん大使」募集中 JAありだ共選協議会2025年6月17日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第110回2025年6月17日
-
「第100回山形農業まつり農機ショー」8月28~30日に開催 山形県農機協会2025年6月17日
-
北海道産赤肉メロン使用「とろける食感 ぎゅっとメロン」17日から発売 ファミリーマート2025年6月17日
-
中標津町と繊維リサイクル推進に関する協定締結 コープさっぽろ2025年6月17日
-
神奈川県職員採用 農政技術(農業土木)経験者募集 7月25日まで2025年6月17日
-
【役員人事】ノウタス(6月17日付)2025年6月17日
-
「九州うまいもの大集合」17日から開催 セブン‐イレブン2025年6月17日
-
農薬出荷数量は1.5%増、農薬出荷金額は2.8%増 2025年農薬年度4月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年6月17日
-
中国CHERVON社と代理店契約 EGO製品の国内販売を開始 井関農機2025年6月17日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年6月17日
-
戦後80年にできることは?情報誌『のんびる』7・8月号受注開始 パルシステム連合会2025年6月17日
-
千葉県成田市に初出店「カインズユアエルム成田店」2025年秋オープン2025年6月17日
-
女子栄養大生が開発「レモン香る油淋鶏弁当」発売 コープデリ2025年6月17日