「いのち」と「くらし」脅かすTPP批准に反対-日本協同組合学会2016年5月16日
日本協同組合学会(会長:石田正昭龍谷大学教授)は5月13日の理事会で「地域に根ざすいのちとくらしを脅かすTPPの批准に反対する」とした声明をとりまとめ、14日に開かれた第35回日本協同組合学会春季研究大会で報告された。
声明では、TPPは「世界市場を取り込みたい内外のグローバル企業だけに着目し、その活躍の場を国家的に提供しようというもの」、「TPP協議と並行してすすめられた農協法改正は協同組合の原理・原則を根本的に否定し株式会社化への道を開くものであり、単に農協だけにとどまらず協同組合そのものに対する攻撃であると理解せざるを得ない」と指摘した。また、TPPは「われわれが被害者になるという視点は重要だが、TPP参加の途上国に対しては加害者になるという視点も忘れてはならない」として、日本のグローバル企業の進出が途上国の経済や環境、健康に影響を与えかねない側面も強調した。
そのうえで声明では以下の6点の問題を挙げてTPP批准に反対することをアピールしている。
(1)交渉経過も明らかにせず本則・附則あわせて20本の法改正を短時間で一括審議するのは論点、争点隠しで議会制民主主義を軽視。
(2)ISD条項の運用次第では、わが国の司法の及ばない恐れ。日本の社会制度・文化・伝承の否定をもたらす危険性がある。
(3)TPP議論は、背後には日米安全保障・防衛問題が隠されており真の自由貿易の議論ではない。
(4)TPPは関税撤廃に向けた後戻りできない一本道の条約。いずれは関税撤廃に追い込まれることは確実。7年後に相手国の要請によって開催される再協議がそれを裏打ちしている。
(5)都市の消費者にとって生産者との産消提携は地域にねざす「いのち」と「くらし」を守る重要な取り組み。こうした人と人との関係性を軽んじるTPPは市民生活のすべてに破壊的な影響を及ぼす。
(6)非関税措置の撤廃によって、農協金融・共済事業の分離、共済と保険とのイコールフッティング、厚生連病院の社会医療法人化、遺伝子組み換え食品の表示ルールの変更、外国企業による農地所有、政府調達への外国企業参入による協同組合受託事業の縮小など、協同組合の存続にとって重大な脅威となる仕掛けが内在している。
(写真)日本協同組合学会の石田正昭会長
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