トビイロウンカは山口県で警報も 病害虫発生予報 農水省2020年8月6日
農林水産省は8月5日、向こう1か月の主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)を発表した。
トビイロウンカに関する発生予察情報
◆水稲
水稲は、トビイロウンカが近畿、中国、四国及び九州の一部の地域で多くなると予想され、一部の県では警報が発表されている。病害虫別の予報は次の通り。
<いもち病(穂いもち)>
関東、甲信、北陸、東海、中国及び四国の一部の地域での発生が多くなると予想。病害虫予報第5号の発表以降、葉いもちが広域に発生している複数の県から注意報が発表され、一部の地域では上位葉に葉いもち病斑が見られたことから、早期の薬剤散布が指導されている。当該地域では、断続的な降雨により水稲の葉面が湿潤となり、本病に感染しやすい好適な条件となると、急激に穂いもちに進展するおそれがある。
今後の本田散布に際しては、本田での発生状況を把握するとともに、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に検討する。
・紋枯病の発生が、南東北、北関東、北陸及び東海の一部の地域で多くなると予想。特に、昨年、多発したほ場では今年も多発するおそれがあるため注意が必要。同病は高温多湿条件で発生が助長され、病勢は少しずつ進展していく。今後の発生状況に注意し、適期に防除を実施する。
<コブノメイガ>
北東北、北陸、近畿、中国、四国及び九州の一部の地域での発生が多くなると予想。上位葉での被害が多くなると収量に影響するため、本害虫の本田での発生状況を把握するとともに、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に若齢幼虫の最盛期をとらえた防除を実施する。
<セジロウンカ>
北海道、北陸、中国及び四国の一部の地域での発生が多くなると予想。同虫は、梅雨時期に中国大陸から飛来し、本田で増殖して水稲を加害する。本田の見回りの際には株元を注意深く観察し、株元に褐色の点又はすじ状の傷(産卵痕)が目立ち、成虫または幼虫の発生が多く見られる場合は、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適期に防除を実施する。
<トビイロウンカ>
近畿、中国、四国及び九州の一部の地域での発生が多くなると予想。病害虫予報第5号の発表以降、平年を上回る広域かつ高密度の発生が確認された複数の県からの注意報と、山口県からの警報が発表されている。同虫は、梅雨時期に中国大陸から飛来し、夏以降に高温少雨傾向になると本田で急激に増殖し、一部に集中して稲を枯れさせ倒伏させる被害(坪枯れ)を引き起こす。また、近年では一部の薬剤に対し抵抗性を持つトビイロウンカの飛来が報告されている。
本田の見回りの際には株元を注意深く観察し、株元に成虫または幼虫を確認した場合には、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適期に防除を実施する。
<斑点米カメムシ類>
北東北、関東、甲信、北陸、東海及び中国の一部の地域での発生が多くなると予想。病害虫予報第5号の発表以降、平年を上回る広域かつ高密度の発生が確認された複数の県から注意報が発表されている。都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適期に防除を実施する。同虫は、本田周辺の雑草に生息し、出穂期になると本田に侵入し穂を加害するため、出穂期を迎えた地域では、本田周辺雑草の除草作業は控える。
◆野菜・花き
野菜類では、ハスモンヨトウの発生が関東、近畿、中国及び四国の一部の地域で多くなると予想。作物別の予報は次の通り。
<いちご>
炭そ病の発生が、東海及び四国の一部の地域で多くなると予想されており、愛知県から注意報が発表された。同病は気温が高くなる時期に発生しやすいため、今後の発生状況に注意し、感染株は早期に抜き取り、ほ場外で適切に処分する。また、菌の胞子はかん水などにより飛散し感染するため、かん水の際には水滴の小さい機材等の利用も検討する。
<大豆>
吸実性カメムシ類の発生が、北陸及び中国の一部の地域で多くなると予想。同虫の飛来状況は地域や園地により異なるため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考にしつつ、園内の観察をきめ細かく行い、飛来が認められた場合は、飛来初期から防除を実施する。
<トマト>
灰色かび病の発生が、北東北および東海の一部の地域で多くなると予想。伝染源となるり病部は早期に除去するとともに、効果の高い薬剤を均一に散布するなど、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適切に防除を実施する。同病は気温20度前後で発生が拡大しやすく、多湿条件で発病が助長されることから、ほ場内の通気に努める。
<作物共通>
ハスモンヨトウの発生が、関東、近畿、中国及び四国の一部の地域で多くなると予想されており、複数の県から注意報が発表されている。ほ場内の発生状況に注意しつつ、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、適期に防除を実施する。
◆果樹・茶
果樹では、果樹カメムシ類の発生が、本州以南の一部の地域で多くなると予想。このほか、水稲のいもち病等、地域によっては多くなると予想されている病害虫がある。主な作物別の予報は次の通り。
<ぶどう>
・晩腐病の発生が、北関東および甲信の一部の地域で多くなると予想。り病部は伝染源となるので収穫後も園地に残さず、適切に処分する。また、同病は降雨により発生が助長されるため、天候の推移に注意し、適期に薬剤防除を実施する。
・灰色かび病の発生が、北東北及び北関東の一部の地域で多くなると予想。伝染源となるり病部は早期に除去するとともに、効果の高い薬剤を均一に散布するなど、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適切に防除を実施する。同病は気温20度前後で発生が拡大しやすく、多湿条件で発病が助長されることから、園内の通気に努める。
<もも>
・せん孔細菌病の発生が、南東北および甲信の一部の地域で平年より多く発生している。同病は、収穫後の防除対策を適切に行うことにより、翌年の春型枝病斑の発生の抑制に繋がる。今年多発生となった園地は、来年の発生を抑えるため、収穫後に、り病枝の切除と薬剤散布による防除を的確に実施する。
<果樹共通>
・果樹カメムシ類の発生が、本州以南の一部の地域で多くなると予想されており、複数の県から注意報が発表されている。
今後、越冬世代以降の世代を中心に、夏期の薄暮時に餌を求めて園地に移動するようになる。今年の越冬世代の発生が多かった地域では次世代の発生量に注意が必要。
同虫の飛来状況は地域や園地により異なるため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考にしつつ、園内の観察をきめ細かく行い、飛来が認められた場合は、飛来初期から防除を実施する。
<茶>
・ハマキムシ類の発生が、東海、近畿及び北九州の一部の地域で多くなると予想。ハマキムシ類の防除は、幼虫が葉をつづり合わせる前(ふ化期~若齢幼虫期)までに薬剤散布を行うことが効果的だが、地域や発生する種類の違いにより薬剤の効果が異なることが知られている。都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、適切な薬剤を選定し、地域の予察灯やフェロモントラップによる前世代成虫の誘殺最盛日の7日後程度を目安に防除を実施する。
・炭そ病の発生が、東海、近畿および北九州の一部の地域で多くなると予想。同病は前茶期に発生したり病部が感染源となり、降雨により発生が助長される。都道府県の発表する発生予察情報等を参考にしつつ、園内の観察をきめ細かく行い、新芽生育初期から防除を実施する。
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【現場で役立つ農薬の基礎知識2019】いもち・ウンカ防除は計画的に
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