次期作支援交付金 追加措置を決定-農水省2020年10月31日
農林水産省は10月30日、高収益作物次期作支援交付金の運用見直しにともなう追加措置を決めた。運用見直しで交付金が減額したりゼロになった生産者に対して機械や施設の取得費など支援する。追加措置を決めたものの、自民党内では「制度設計が甘かった」、「究極のはしご外しのうえ、後だしジャンケンだ」、「農家からは次は自民党に入れないと言われた」など批判が相次ぎ、現場での農政不信の広がりや1年以内に行われる衆院選への影響を懸念する声も出ている。
高収益作物次期作支援交付金は、新型コロナウイルス感染症の広がりで需要が減少し、市場価格が下落するなどの影響があった野菜、花き、果樹、茶など高収益作物について、次期作に前向きに取り組む生産者を支援するため、4月の第1次補正予算で措置した交付金だ。交付金の趣旨は国民への食料供給に前向きに取り組んでもらおうというもので、次期作の作付け面積のすべてを対象に10a5万円などの交付金が支払われることになっていた。予算額は242億円で農水省によると第1回の公募で予算額を上回った。申請者のなかには価格が下落しなかった品目もあったことから、10月になって2月から4月にかけて売り上げが減少した品目に限って交付金を支払う見直しを行うことにした。
これに対して交付金を前提にすでに農機を購入したり、資材を発注したりした生産者や事務を行うJAなど現場からでは混乱と問題視する声があがった。交付金が減額となるだけでなく交付金がゼロになるケースもあるからだ。同日の自民党の農林部会でも「究極のはしご外しだ。地元に説明できない」といった声が出た。
そのため今回は10月30日までに次期作に向けて新たに機械、施設の整備、資材などを購入したり発注を行った場合と、これまで使用していない新しい資材の購入で掛りとなった経費がある場合を対象に生産者に追加の支援を行うことにしたもの。補助額は運用見直し前の交付予定額を上限とする。
たとえば、次期作で2haの作付けを予定していた生産者は交付予定額は100万円(単価10a5万円×200a)だったが、見直しで30万円となった場合、70万円の減額分を交付する。(図)
ただし、交付金を見込んで120万円の投資を行った場合でも追加措置は70万円となる。
一方、交付金を見込んだ投資額が40万円の場合は追加措置として40万円が交付される。「農水省は追加的投資への支援」と説明する。
新たな掛増し経費については、この交付金を契機に地域でまとまって品質向上のために新しい肥料を使う場合や産地で決めた優良品種への切り替えなども対象となる。
また、JAや地域再生協などの必要な事務費は国が支払うほか、今回の追加措置による事務負担を軽減するため提出様式の簡素化も図る。2次募集期間は11月末だが、農水省は延長することを検討している。
野上浩太郎農相は30日夜、記者団に「関係者に負担をかけていることは大変申し訳なく思っている。理解を得られるよう丁寧説明していきたい」と述べた。
10月30日に開かれた自民党の会合
同日昼に開かれた自民党農林部会では「説明の前にまず謝罪だ」、「農家には農政を信じていいのかという思いが強い。どう信頼を取り戻すか」、「減収しなかった農家、という言い方はやめるべきだ」、「なぜ7兆円ある予備費を使えなかったのか」などの批判や運用見直しを党に計らなかったことへの不満も相次ぎ、選挙への影響を懸念する声もあった。
農水省は追加措置の予算は第3次補正で措置することを検討している。
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