農林漁業者の自殺数32%増の395人 「経済・生活問題」原因が3割超 農業団体「誤った選択しないで」2023年3月15日
昨年1年間の農林漁業者の自殺者数が395人に上り、前年を97人(32.5%)上回ったことが厚生労働省のまとめで分かった。原因・動機別で「経済・生活問題」が139人と3割以上を占め、資材高騰などによる経営環境悪化も背景にあるとみられる。酪農・畜産の状況を調査している農業団体は「厳しい状況はわかるが誤った選択をしないでほしい」と呼びかけている。
厚労省は、今回から統計方法を一部変更し、農林漁業者は「自営業・家族従業者」から「農林漁業自営者」「農林漁業者従事者」と2つの分類に分けた。このため前年との単純な比較はできないと説明している。
まとめによると、昨年1年間の農林漁業従事者は、「自営者」で254人、「従事者」で141人で、合わせて395人に上った。前年の298人から97人、率にして約32%増えた。男女別では、男性が合わせて359人、女性が36人で、男性が約9割を占めた。
年齢別では、「自営者」では60代が60人と最多で、次いで70代が59人、50代が53人、40代が37人と多かった。「従事者」では30代と40代が32人で最も多く、次いで50代が22人だった。
原因・動機別(複数回答)では、「自営者」では「健康問題」が129人で最も多く、次いで「経済・生活問題」が95人だった。さらに「経済・生活問題」の中では、「事業不振」(34人)や「負債(多重債務)」(18人)、「生活苦」(18人)が多かった。「従事者」では、「健康問題」が55人、「経済・生活問題」が44人と多かった。
「経済・生活問題」は合わせて139人で、全体の3割以上を占めており、資材高騰などによる農業の経営環境悪化も背景にあるとみられる。
農業をめぐる経営環境の悪化については、農民運動全国連合会(農民連)が特に厳しい経営に直面しているといわれる畜産・酪農の生産者を対象に全国的な調査をもとに国に緊急支援を求める要望活動を続けており、調査活動の中で九州や東北で厳しい経営を苦に自死したとみられる事例などがあったという。
同会の長谷川敏郎会長は「自死まで追い込まれる方がこれほどいるのかと怒りを覚える。会としても特に気持ちが暗くなりがちな年越し前などに『誤った選択をしないでほしい』と訴え続けてきた。生産者への一刻も早い支援が必要だと感じる」と話している。
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