雇用就農の労働環境改善で検討会 農水省2024年10月4日
農林水産省は雇用就農者の割合が高まっているなか、労働関係法制での農業の取り扱いを含めた農業の労働環境の改善をめざして検討会を立ち上げ、第1回会合を10月1日に開いた。
農業の労働環境改善に向けた政策の在り方に関する検討会の第1回会合
農水省によると農業就業者は1999年からの約25年間で119万人減少し、2023年には181万人となった。一方、雇用者については雇用型経営体の規模拡大などによって同期間の25年間で27万人増え、2023年には55万人となった。
49歳以下の新規就農者のうち雇用就農者は2023年で4割を占め、新規自営就農者、いわゆる親元就農者を上回っている。また、新規雇用就農者の約9割が非農家出身となっている。
このように雇用就農の重要性が高まっているなか、改正基本法では「農業の雇用に資する労働環境の整備」が明記された。
それも農水省は検討会に対して▽労働環境の整備を具体的に進める政策のあり方、▽労働関係法制における農業の特例についての考え方について議論を依頼した。
農水省が示した資料では雇用就農者が就農前に重視した労働環境は、「安定した収入」、「経営者の人柄」「ハラスメントがないこと」、「雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険への加入」の割合が8割を超えているという。
こうした実態を踏まえた意見交換では「将来に向け農業の目指すべき働き方から考えていく必要がある」、「家族を前提とするのではなく、従業員の雇用を意識した作業の仕方を考えていくことが必要」、「経営者は人を雇って初めて自らの経営と働き方を見つめ直す。労働基準法が適用除外だとしても、若い人材を雇用するうえでは法定労働時間を意識して経営することで定着率が向上する」などの意見が出た。
その一方、「農業では今晩作業しないと、作物が霜でやられてしまい1年間の作業が無駄になってしまうという状況もあり、決まった時間で働くのが難しい面もある」との実態を指摘する意見や、「雇用者を導入する経営だけでなく家族経営の働き方にも目配りをしてほしい」との意見も出た。
また、地域によっては常雇いで人材を確保することが難しいとして「すき間時間を活用した働き方も推進してほしい」との指摘も出た。
被用者保険制度については「加入者にとって非常に大きなメリット。とくに年金は個人のライフプランに大きな影響を与える。被用者保険制度の公平性を確保し、職業選択の支障とならないよう適用拡大は重要だ。そのうえで経営への影響や事務負担増などに対する支援を検討していく必要がある」、「事業者にとって掛け金負担は大きいが、若い人を雇うには不可欠と考えている」などの意見がある一方、「労働環境を充実させたいが、現実としてできない経営体も多い。外国人労働者から見ると残業規制のない国のほうが魅力という評価もある」との意見も出された。
そのほか、被用者保険制度はすでに法人経営体にとっては強制適用となっていることから「労災保険、雇用保険の問題も含めて、どのように全体の労働環境改善に取り組むかを考えていくことが重要だ」との指摘も出た。
次回は論点整理をしたうえで議論を行う。
【農業の労働環境改善に向けた政策の在り方に関する検討会委員】
座長:梅本雅(ファームマネジメントサポート代表)
漆山陽子(漆山果樹園代表)
笠木映里(東大大学院法学政治学研究科教授)
黒谷伸(全国農業所経営・人材対策部長)
鈴木泰子(社会保険労務士法人リライアンス代表・全国農業経営支援社会保険労務士ネットワーク会長)
林俊秀(Tedy取締役会長・日本農業法人協会副会長)
水野弘樹(農業経営者・全国農業青年クラブ連絡協議会会長)
元広雅樹(JA全中営農・担い手支援部長)
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