農政:農業協同組合研究会 第13回研究大会
3年後2割の所得増へ【JAいわて中央・久慈宗悦代表理事組合長】2017年4月27日
モデル農家を育て普及
JAいわて中央の28年度の農畜産物販売取扱高は約102億円で、うち米穀類が55億円を占める土地利用型農業中心の農業である。JAの経営の基本理念は「一人ひとりの思いをカタチに。JAいわて中央」をキャッチコピーに、管内で生産される農畜産物のブランド化をめざすということで「食農立国」の商標登録をとっている。農・人・自然を大切にし、豊かな暮らしの実現と地域社会の発展に貢献することがJAの役割だと考えている。
具体的には、第6次中期3か年計画で示している。計画を樹立するに当たり、第5次中期3か年計画を平成27年度で総括し、課題を整理して10年後のJAの姿をどう描くかについて、組合員と農業組織を対象にアンケート調査を行った。
組合員350人、農業組織50の回答があり、JAに期待することは、組合員の第1位が農畜産物の販路拡大で21%、栽培技術の指導が18%、農業機械のリースが14%、農業労務者の派遣が13%。農業組織の期待は販路拡大が29%、機械のリース21%、生産資材安定供給12%の順だった。
この結果に沿った第6次3か年計画では、(1)次世代につなげる「食農立国」の確立、(2)組合員生活基盤の充実による地域の活性化、(3)農協経営の安定による財務体質の強化、(4)一人ひとりの意識改革による活力ある職場づくりの4本の柱を掲げた。その上で具体的には、販売専任部署の設置、生産費の削減と低コスト技術の導入、複合経営の推進を挙げた。それによって農業所得の向上をめざす。
3か年計画の核となる農業振興計画では、まず組織機構を再編。取引先との連携強化、新規市場開拓による販売強化のための販売対策課、技術・経営指導の指導統括課、労働力不足に対応する労働力支援センターを新設した。
農家手取りの最大化のためにはJA・全農・JA岩手県中央会による横断プロジェクトを立ち上げた。
JAと全農、中央会が連携し、モデル農家への生産資材コスト低減や省力技術による労働力削減等の実践メニューを提案し、3年後の平成30年度にはモデル農家の手取り20%アップをめざす。農協は技術、経営指導の営農販売部と営農センターが担当し、それを全農と中央会の担い手サポートセンターが支援。確立された優良モデルは他の経営体へ水平展開する。
モデルは3営農センターで5農家を選んだ。水稲15ha以上または15ha以上の規模拡大を想定している青色申告の農家で、刈り取り期間をずらす乳苗移植、土壌診断によるBB肥料の導入、直播雑草防除体系の改善・防除剤大型規格導入、生産管理システム(アグリノート)の導入などで、はっきりコスト削減の効果が出ている。例えば、除草剤は1kg規格を10kg規格にすることで1~2割削減。また、土壌診断でリン酸やカリなどの肥料成分を見直して2~3割安のBB肥料を開発し、通常と同等の食味・収量を実現した。
さらに、モデル農家には、水稲作業の分散化による余剰労働力を活用するため、ホウレンソウ、ネギ、ズッキーニなど収穫期の異なる園芸作物を導入。特にズッキーニは期待でき、法人への導入を呼びかけている。そのほか、ジェネリック(特許期間切れ)農薬の試験導入、水稲新品種「銀河のしずく」の栽培なども進めている。
モデル農家の実証結果は精査中だが、さらにレベルアップを期待している。JAと全農、中央会の一体的な取り組みは、かつてなかったことだ。全農の肥料担当者や中央会の職員が農家と意識を共有し、総合力で内容を充実させたい。今回は1年の成果だったが、生産資材が高い、安いだけの問題ではなく、経営の無理、無駄をなくすことが重要だと考えている。3年間のモデル農家の実証結果を基に、大型農家、法人を育てるという「食農立国」の未来像が見えてきたように感じている。営農指導、暮らし向上に向け、一層の信頼される農協をめざす。
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