農政:コロナ禍 どうなるのか?日本の食料 変動する世界の農業生産
コロナの影響を特集へ 2020年度「農業白書」-農水省2021年1月26日
農林水産省は1月25日、食料・農業・農村政策審議会企画部会(部会長=大橋弘東大公共政策大学院教授)を開き2020(令和2)年度の「食料・農業・農村白書」作成に向けた議論を始めた。
会合はテレビ会議方式で行われた。
農水省は白書の「特集」で「ウィズコロナ・ポストコロナ」をテーマとする方針を示した。新型コロナウイルス感染症の拡大による食料・農業・農村への影響を記録、分析するとともに、今後のポストコロナ社会に向けた新たな動きも紹介する。外出自粛等による食料消費への影響と、生産者、食品産業への影響と対応状況などを記述する。
また、コロナ禍で「密」を回避する新たな生活が求められるなか、地方への関心の高まりや、移住によるテレワークといった働き方、農村との「関係人口」の増加といった新たな動きも記述する。
JA全中の中家徹会長はコロナ禍でマスクが不足するという現実があり、「これが食料だったら、という声も聞く。輸出規制をした国もあった」と指摘して、白書では「国民が必要とする食料は国で産出するという国消国産の重要性を強調してほしい」との述べた。
全国農業会議所の柚木茂夫専務は「品目によってコロナ禍の影響に差がある。品目別の動向分析をすべき」との指摘したほか、海外依存が明らかになった労働力問題、農村への移住の動向把握なども記述するよう求めた。
日本農業法人協会の近藤一海副会長は、コロナ禍で表面化したドライバー不足など物流問題を取り上げるべきだと話した。また、東京農大の高野克巳学長は「高級食材を扱っている産地など打撃が大きい。地域別の分析も重要だ」と指摘した。
イチゴ生産者の栗本めぐみ委員は「中小農家が8割を占める。弱小な農家を置き去りしない記述をしてほしい」と求め、同じイチゴでもJA出荷と個人出荷、観光農園と業務用出荷など影響の受け方は多岐に渡るとしてきめ細かく実態を記録することが必要がという。
また、生産者として肥料や農薬、労働力の外国依存に不安を感じたことや、国内労働力も昨春の一斉休校の影響で地域のパート確保が難しくなるといった事態があったことにも触れ「農家のリスクマネジメントも記述すべき」と話した。
日本総合研究所の三輪泰史委員は「コロナの影響とさまざな対策の効果、試行錯誤していることも記録すべき」と指摘するとともに、コロナの影響か、それとも長期的な変化なのか区分けする視点も必要だとした。
白書では輸出戦略やスマート農業実証プロジェクト、生産から流通・加工などで食分野の新しい技術やその技術を活かしたフードテックの現状なども記述する。
輸出戦略について掘切功章キッコーマン代表取締役CEOは「大半が零細な事業者。より具体的なシナリオをしっかり作り実行する必要がある」と指摘した。スマート農業については染谷農場の染谷茂代表取締役が「農家のための技術になっているか検証が必要」と述べた。
そのほか将来の人材確保のためにも「農業が職業として考えられるような白書にしてほしい」(佐藤ゆきえ委員・まるせい果樹園)などの意見もあった。
また、実施1年目の基本計画の進捗状況についても企画部会で検証する場を設けるべきとの意見も出されている。
白書は3月以降、企画部会で2回議論し審議会からの答申をもとに、5月ごろ閣議決定され国会に提出、公表されることになっている。
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