農政:許すな命の格差 築こう協同社会
【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】現地ルポ:組合員目線で都市農地守る あってよかったモットーに(3)飯田勝弘 JA世田谷目黒(東京都)経営管理委員会会長に聞く2021年8月12日
飯田会長へのインタビュー最終回で、これからの農協組織のありかについて、「組合員一人ひとりが主体であり続ける農協組織であってこそ、組合員への貢献ができる組合員本意の組織になる」と強調する。そして自身の農業・農協への思いを熱く語ります。
連携を深める友好組合の農産物販売
寄りかからぬ 相互扶助前提
――コロナ禍は、今日の社会のあり方に大きな問題を提起しています。ポストコロナではどのような社会を予想しますか。
協同社会が望まれていると言いますが、重要なことは協同組合自体ではなく、組合が「農業・農地を守り、組合員のくらしと資産を守る」ことで、主役である組合員が地域の核となり、社会にどんな貢献ができるかです。協同組合は「助け合い」の組織ですが、それは自立した個人が集まってつくる組織であり、寄りかかりの「助けられ合い」の烏合(うごう)の衆とは違います。
基本は「自立」であり、これが抜けていると、無責任な前年踏襲の農協運営になってしまいます。組合員一人ひとりが主体であり続ける農協組織であってこそ、組合員への貢献ができる組合員本意の組織になるのだと思います。
――農業をしながら都市農業と農地を守る運動を展開してこられました。会長の農業への思いを。
こういう都心で農業をやるのは自然体ではできないと思っています。本来生業であった農業が、相続税を猶予されているということは、国に膨大な借金を背負って営農することであり、やめると利子税もかかります。尋常な精神ではできません。逃げたら破産です。農業は楽しいとか、もうかるとかの世界ではなかったですね。
管内の世田谷区・目黒区は高級住宅地であり、宅地並み課税の全国で最初の対象地だったことからマスコミに狙われました。「偽装農地」と言われないよう、作付け・管理を徹底し畑には草一本生やさないようにしました。それでも「税金逃れ、土地の値上がり待ち」と言われる時代でした。
そんなとき、マスコミの取材があると農協のベテラン職員が必ず中に入って上げ足をとられないよう指導してくれました。こういった経験をした組合員の声が、相談業務中心の事業を展開する今の農協の始まりです。
【JA世田谷目黒の概要】
1952(昭和27)年、世田谷区、目黒区の5農協が合併し、世田谷目黒農協が成立。典型的な都市農協で、経済事業の規模は非常に小さく経済店舗を設置していないが、信用・共済事業に偏らない経営として、総合事業による組合員の農地保全と相談業務を中心とする経営を目指している。
管内の農地は世田谷区に約30ha、目黒区に約3haが保全されている。これら農地を活用し、JAでは中心事業である相談業務を補完する体験型農園事業を3カ所で展開。都市農業・農地への共感と賛同を得るための重要な事業となっている。
▽組合員数
2092人(うち准組合員1550人)
▽貯金残高
769億6000万円
▽長期共済保有高
1890億6000万円
▽宅地等供給事業
2億400万円
▽買取購買品取扱実績
5569万円
▽買取販売品取扱実績
370万円
▽職員数
54人(うち嘱託3人)
【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】
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