農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】気象の農産物価格への影響 無関心層に明示を(1)三重大学大学院・立花義裕教授2022年10月19日
農業と気象は切っても切れない関係だ。近年世界各地で異常気象のニュースもよく聞く。日本の食料自給や食料安保にも直接関係する。「今何が起きているのか? 地球は変わったのか?」三重大学大学院生物資源学研究科教授で気象や海洋に詳しい立花義裕氏に寄稿してもらった。
異常気象が「普通の天候」になるのか
三重大学大学院
立花義裕教授
今年の夏も異常に暑く、さらに暑さが9月にまでおよび、9月の1カ月平均で観測史上最高気温を記録した地点も多かった。今年は9月もまだ夏だったのである。一転して10月になると一気に寒くなり、まるで冬さながらの天候に急変し、早くも暖房の季節を迎えている地域もある。これは今年に限った現象ではない。記録的猛暑、梅雨期や夏の記録的豪雨、暑い秋、早い冬の訪れ、そして豪雪。これらは近年発生する共通の「異常気象」である。
冬と夏が長くなり、秋が短くなっているという印象を持つ方も多いであろう。このような極端な気象は、日本だけではなく、欧米でも毎年のように発生している。例えば西ヨーロッパの記録的猛暑も同様である。これら毎年発生する異常気象。このような異常な状態が、「普通の天候」となってしまうのか? もしそうであれば、それに適応した農業へ急いで転換すべきであろう。また日本の農業のみを考えるだけではなく、世界の異常気象にも目を向けねばならない。なぜなら日本は食料の多くを輸入に頼っているからである。
未来の気象・気候がどうなってしまうのであろう。それを知るためには、まず日本が地球の中でどのような気候学的位置にあるかを理解しておくことが重要となる。
北半球で一番暖かい海と一番寒い陸と冷たい海に挟まれた日本
地球上で一番暖かい海域はパプアニューギニアからインドネシア付近である。そしてその海域から暖かい黒潮が日本に向かって流れている。したがって日本の南の海は同じ緯度の他の海域に比べて非常に暖かい。逆に日本の北のオホーツク海の北のシベリア極東地域は、北半球で一番寒い陸地である。
また、オホーツク海は海氷に覆われるが、オホーツク海は北半球で最も南に位置する海氷が広く覆う海なのである。このように日本は、北半球で一番暖かい海と一番寒い陸と冷たい海に挟まれているのである。したがって、南風が吹けば極端に暑くなり、北風が吹けば極端に寒くなるのである。そのような地域は世界中探しても日本しか見当たらない。
日本は地球温暖化時代に突入する以前から、寒暖の激しい気候にさいなまれる地域であったのだ。北風が強く吹く夏は極端に冷夏になるのでる。その代表例が、1993年や2003年の極端な冷夏である。タイ米緊急輸入や米泥棒が横行した年でもある。
地球温暖化に伴い、将来南風が吹きやすくなるのであろうか? それとも北風が吹くのだろうか?それが日本の未来の気候を知る鍵となるのである。それを理解するには、偏西風の蛇行を理解することが重要となる。偏西風は西から東に吹く上空の風である。
異常気象もたらす偏西風が激しく蛇行する年が増加
ジェット気流とも呼ばれている。ジェット気流は、北の寒気と南の寒気を境界で吹く風で、ジェット気流の北側は寒く、南側は暖かいのだ。だから、ジェット気流が蛇行し、日本を北に迂回するように北に膨らんだ蛇行が起こると異常に暑くなり、蛇行が南へ垂れ下がった場所に日本があれば、異常に寒くなるのである。偏西風が蛇行しなければ普通の天候になる。ほとんどの異常気象は偏西風の蛇行でほぼ説明がつくのだ。
近年は偏西風が激しく蛇行する年が増えているのだ。夏は、日本を北に迂回する蛇行パターンが毎年のように生じている。しかも、その蛇行の幅は数千キロメートルにも達するので、日本全体が猛暑となるのである。
この蛇行を西に辿ってみよう。日本付近を北に 蛇行している偏西風は、中央シベリア付近では、逆に南へと蛇行している。そしてさらに西のヨーロッパでは、日本と同じように北へと蛇行しているのだ。つまり偏西風のうねうねが、ヨーロッパと日本で北にうねり、シベリア中央部では南へうねっているのだ。
畑の畝を想像すればわかりやすいであろう。近年同時発生する日本の猛暑とヨーロッパの猛暑は、偏西風の激しい蛇行に伴う同一の現象なのである。さらに西に遡っても蛇行は続き、アメリカでも蛇行している。つまりこの蛇行は地球を一周しているのだ。一旦どこかで蛇行が始まると、それがきっかけで、地球上のあちこちで蛇行が激しくなり、異常気象が世界へ伝播そして連鎖する。これは交通事故がきっかけの交通渋滞が遙か後方まで伝播するのと似ている。地球は丸いので、異常気象の連鎖は地球をぐるぐる廻り、次から次へと世界各地で異常気象が連鎖的に発生する。ではどうして近年偏西風が蛇行しやすくなったのだろうか?
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(163)-食料・農業・農村基本計画(5)-2025年10月11日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(80)【防除学習帖】第319回2025年10月11日
-
農薬の正しい使い方(53)【今さら聞けない営農情報】第319回2025年10月11日
-
食料自給率 4年連続38%で足踏み 主食用米消費増も小麦生産減 24年度2025年10月10日
-
【特殊報】トマト立枯病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内の園芸作物で初めて確認 高知県2025年10月10日
-
【特殊報】スイカ退緑えそ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】ショウガ褐色しみ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【注意報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年10月10日
-
26%が米「買い控え」 米価上昇が家計に影響 住友生命「台所事情」アンケート2025年10月10日
-
コシヒカリ3万3000円に JA常総ひかりが概算金改定 集荷競争激化受け2025年10月10日
-
大豆の吸実性カメムシ類 甲信、東海、北九州一部地域で多発 病害虫発生予報第8号 農水省2025年10月10日
-
(456)「遅さ」の価値【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月10日
-
「いちご新規就農者研修事業」2026年度研修生、若干名を追加募集 JA全農岐阜2025年10月10日
-
10月23日に生活事業総合展示会 贈答品や暮らしを豊かにする事業を提案 JA全農いばらき2025年10月10日
-
本日10日は魚の日 岡山県産「冷凍かき」など90商品を特別価格で販売 JAタウン2025年10月10日
-
収穫が遅れた完熟の「黄かぼす 食べて応援企画」実施中 JAタウン2025年10月10日
-
国消国産の日 一斉行動日イベント「国消国産×防災」開催 JA全中2025年10月10日
-
「日産ビオパーク西本郷」と「小野田工場ビオトープ」が環境省「自然共生サイト」に認定 日産化学2025年10月10日
-
「えひめ・まつやま産業まつり-すごいもの博 2025-」に出展 井関農機2025年10月10日