低圧炭酸ガスを用いた「クリ果実殺虫技術」が農薬登録 農研機構2023年1月25日
農研機構は、1MPa未満の低圧炭酸ガスを用いて1時間くん蒸処理することで、収穫したクリ果実内のクリシギゾウムシを殺虫できる技術を開発。この技術は、日本液炭株式会社により2022年9月に農薬登録(適用拡大)され、くん蒸作業の負担が少なく、安定供給可能な農薬として使用できる。
クリ果実内のクリシギゾウムシ幼虫(左)と幼虫脱出によるクリ果実の被害
クリ果実の主要害虫であるクリシギゾウムシの殺虫には、ガスを用いたくん蒸剤による処理が効果的。農研機構は、炭酸ガス(二酸化炭素)を用いたくん蒸による殺虫技術の開発に取り組んできた。今回、1MPa未満の低圧炭酸ガスを用いたくん蒸殺虫技術を開発し、日本液炭により2022年9月にクリシギゾウムシを対象とした農薬登録(適用拡大)を行った。
同技術は、気密性耐圧容器にクリ果実を入れ、減圧したあと低圧力(0.95MPa)の炭酸ガスで30分間くん蒸し、ガスを放出し常圧に戻す工程を2回繰り返す。殺虫効果のある炭酸ガスを昆虫体内に圧力をかけることで高濃度に溶解させ、短時間で十分な殺虫効果が得られる。
低圧炭酸ガスくん蒸法は、くん蒸時間が短く、薬剤の残留を気にすることなく、取り扱いが容易なことが特徴であり、くん蒸作業の負担軽減につながる。また、炭酸ガスは飲料・食品分野や医療分野でも広く利用されているガスで、安定的に供給可能な物質。今後、クリ以外でも、風味や品質を重視した加工食品原料などへの応用が期待できる。
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