農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2022
【現場で役立つ農薬の基礎知識2022】堆肥利用に高まる関心 土づくりと複合肥料活用のコツは(2)2022年12月23日
【現場で役立つ農薬の基礎知識2022】堆肥利用に高まる関心 土づくりと複合肥料活用のコツは(1)から続く
3.堆肥と化学肥料の良さを併せもつ「混合堆肥複合肥料」「指定混合肥料」(堆肥入り複合肥料)が登場
従前から園芸農家を中心に堆肥と化学肥料を併用する生産者が大宗を占めているが、過去のデータからも堆肥と化学肥料を併用する効果が立証されている(図表6)。
これらの肥料を同時に施用したいという生産者のニーズに基づき、2012年に「混合堆肥複合肥料」が公定規格に新設され、化学肥料と堆肥の混合が法律上認められることとなった。さらに、2020年には「指定混合肥料」の規格新設により、混合できる堆肥の種類の実質的拡大や原料配合の自由度が格段に広がった。
1粒で2度おいしい!? 堆肥入り複合肥料のメリットとは?
具体的に堆肥入り複合肥料のメリットを挙げてみよう。まずは、粒状化により堆肥を施用しやすく、堆肥と化学肥料のメリットが同時に得られることである。
堆肥の絶対量としては、化学肥料を含むため多量に施用できず、堆肥としては十分量を確保できないものの、最近連用により土壌有機物が蓄積することが分かってきた(図表7)。
また、堆肥と化学肥料を混合・粒状化する相乗効果としては、リン酸を中心としてキレート作用等により肥効の増進が期待できるほか(図表8)、製造時の造粒加工や乾燥工程が入ることにより、衛生面や雑草発生のリスクがないことが挙げられる(図表9)。



ますます広がる堆肥入り複合肥料の世界
一連の法改正を契機として、堆肥活用肥料のラインナップが続々と登場している。全農取り扱いの堆肥入り複合肥料のラインアップは、令和3(2021)年度で銘柄数93銘柄、6600tとなっている。直近では、肥料価格高騰対策として引き合いが急激に増加しているため、令和4(22)年度ではさらに伸長する見込みである(図表10)。
朝日アグリア株式会社を例にみると、2013年から豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥を原料とした「混合堆肥複合肥料」の「エコレット」を複数ラインナップしており、今年度では出荷量が1万tを超える見込みである。指定混合肥料では、主に牛ふん堆肥を活用した数銘柄を開発しており、こちらも普及が進みつつある。同社では、「エコレット」シリーズは主に基肥、追肥の用途、指定混合肥料は、主に土づくり肥料として、用途のすみ分けを図っている。
その他の肥料メーカーにおいても堆肥の活用がすすめられており、堆肥入り複合肥料は、資源循環型社会の実現や、肥料原料の国内安定調達の観点からも、さらに注目されてきた。
これらの視点を含めて、堆肥を施用できる地域や生産者においては、堆肥に対する理解を深めて、化学肥料の節減による施肥コスト低減や、健全な土壌管理や作物生産性の向上につなげていただきたい。
一方で、堆肥が手に入りにくい地域や、散布したくても散布できない生産者においては、堆肥入り複合肥料を積極的に活用していただければと考えている。
なお、現在、国の方では、産地生産基盤パワーアップ事業など堆肥を活用する生産者を積極的に支援するための枠組みを整備しているので、こちらも積極的な活用が望まれる。

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