農薬:サステナ防除のすすめ2025
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
「暑さ寒さも彼岸まで」の通り、いよいよ春本番となり農作業も本格化する。そこで大切な農作物の品質と収量を左右する防除技術に焦点を当て「サステナ防除のすすめ」をスタートする。初回は「移植水稲の初期病害虫防除」がテーマ。
(1)本田初期防除のポイント
近年の気候変動に対応し、防除適期を逃さないためには、箱処理剤等による予防散布が有効だ。その際、長期に残効が期待できる薬剤を使用すれば、使用回数が少なくても確実に防除効果のあがる防除が可能となる。このため、特別栽培米など農薬の使用回数が制限される栽培にも適している防除法だ。また、本田初期は、まだ病害虫の発生密度も少なく、効果が出やすい時期でもあるので、この時期の防除を確実に行っておくと、栽培後期の防除効率を上げることになり、最小限の防除対策で収穫を迎えられる可能性を高めることになる。
「病害虫が発生した時に必要な農薬を必要な量だけ散布すること」が効率的な防除法と考えられる場合もあるが、いつ発生するかもわからない病害虫に目を光らせ、発生と同時に適切な防除を行うことはかなり難しい。近年の大規模化にともなって、圃場ごとに細かく見回りするのは相当難しくなっているし、また、発見した時には既に拡散しており手遅れとなっている場合もある。例えば、病害の場合、感染してから発病するまで症状が出ない期間(潜伏期間)があるので、病斑が見つかった時には既に目の前の病斑以外にも、病気の症状は出ていないが、すでに感染している株が発病株の周辺にもある可能性が高い。
このため、発生する可能性がある病害虫については、病害虫が発生する前に予防剤を散布しておくことが、病害虫を確実かつ効率的に防除でき、農薬の使用回数も少なくする有効な方法だといえる。
もちろん、地域単位で全く出ない病害虫には防除の必要はないが、地域で毎年発生する病害虫に対しては、長期に持続する農薬をあらかじめ処理しておく予防的散布がより効率的な防除法である。
(2)育苗箱処理剤による本田初期防除
移植本田の初期防除では、その効果の持続性や処理しやすさなどから、長期持続型の育苗箱処理剤を使用することが多くなっている。
この長期持続型の有効成分を含む育苗箱処理剤は、育苗箱に予め処理しておくことで長期に安定した防除効果を発揮するので、確実な本田初期防除が可能となる。
表に主な殺虫成分と対象害虫、主な殺菌剤分と対象病害、ならびに育苗箱処理剤とその有効成分一覧を示したので、発生する病害虫から使用する剤を選択する。
主な殺虫成分と適用害虫
主な水稲殺菌成分の特性一覧
殺菌剤成分では、現在では抵抗性誘導剤を有効成分とする箱処理剤が主流となっている。主なものは、イソチアニルを有効成分とするルーチン、スタウト、ツインターボ、フルターボなど、プロベナゾールを有効成分とするDr.オリゼ、ビルダーなど、チアジニルを有効成分とするブイゲット剤、ジクロベンチアゾクスを有効成分とするブーン剤などである。これらは、育苗箱に処理することでいもち病の他、細菌病にも防除効果が期待できる。
いもち病イネに侵入する際に必要なメラニンの合成を阻害する作用を持つ薬剤には2種あって還元酵素を阻害するMBI-Rと、それとは異なる酵素を阻害するMBI-Pとがある。MBI-Rには、ピロキロン(商品名:コラトップ)とフサライド(商品名:ラブサイド)とトリシクラゾール(商品名:ビーム)がある。MBI-Pには、トルプロカルブ(商品名:サンブラス)がある。これは、これまでのメラニン合成阻害剤が阻害する酵素とは異なるの酵素を阻害するとともに、抵抗性誘導も起こすことにより、従来のメラニン合成阻害剤とは全く異なる作用を示し、いもち病だけでなく細菌病である籾枯細菌にも効果を発揮する。
いもち病と紋枯病の同時防除に威力を発揮するストロビルリン系薬剤は、耐性菌が発生して効果が低下している地域が多いので、指導機関の情報を十分に確かめるなど注意が必要だ。
殺虫成分では、初期の害虫であるイネミズゾウムシやイネドロオイムシに対し、カーバメート系(オンコルなど)、ネオニコチノイド系(アクタラ、アドマイヤー、ダントツなど)、フェニルピラゾール系(プリンスなど)が定番である。
最近では、チョウ目害虫に高い効果を示すジアミド系薬剤の新規薬剤シアントラニリプロール(ミネクト)が登場し、初期害虫はもとより幅広いチョウ目害虫を中心に多くの水稲害虫防除に有効である。
また、ウンカ類に長期の残効を示すピラキサルト(商品名:ゼクサロン)の評価が高い。同剤は、育苗箱処理で長期の残効があり、ウンカが媒介する縞葉枯病の感染阻止効果も高く、2019年のウンカ類が大発生した年にも高い効果を発揮し高い評価を得た有効成分だ。
なお、育苗箱に処理する剤型には、箱処理粒剤と水に希釈して灌注する剤型(顆粒水和剤など)があるので、実際の作業形態に合わせて選ぶようにする。
(3)育苗箱処理剤以外による初期防除
育苗箱処理以外の初期防除には、種子処理(FS)剤の利用と側条施肥機による顆粒水和剤の処理がある。
種子処理は、FS剤を使用してあらかじめ種子コーティングする方法で、鉄コーティングやカルパーコーティングなど直播栽培で使用される技術ではあるが、育苗箱にコーティング種子を播種することでも利用できる。
種子自体に薬剤が付着しているので、育苗箱に薬剤処理する手間は不要で、通常の育苗と同様に育苗箱にFS処理種子を播種して育苗し、田植えすることで効果を発揮する。種子1つ1つに薬剤が処理されているので、蜜苗など播種量が多い技術に対しても、育苗~移植時における薬剤処理の手間や処理ムラなどを一切考えなくて済むので大変効率的な処理法である。使用する育苗箱枚数が多い場合など活用してみるのも一考である。
側条施肥機による顆粒水和剤の使用は、密苗、密播といった省力移植技術を行う場合に必要になる技術である。通常の育苗箱処理剤は、1箱あたり50g、使用箱数20枚/10aで効果を発揮するように設計されており、使用する育苗枚数を減らす密苗、密播では薬量不足が起こる恐れがある。そういった場合には、側条施用が可能な薬剤を選択して、側条施用することでそのような課題が解決できる。
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