農薬:サステナ防除のすすめ2025
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(1)耕種的防除を併用【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
本稿「サステナ防除のすすめ」では、みどり戦略の目指す農産物の安定した品質・生産量を確保できるサステナブル(持続可能)な防除体系の提案を目指している。そのためには、IPM防除の精神に則って現状ある防除技術を上手に組み合わせて減らせる化学農薬は削減し、必要不可欠な農薬は効率よく使用しながら安定した効果が得られる方法の探索に挑戦したいと考えている。あくまでも、みどり戦略に対応したサステナブルな防除の考え方の例として参考にして頂ければ幸いである。それでは、今回は春夏野菜の病害虫防除をテーマに探ってみようと思う。
耕種的防除を併用
本稿のテーマである「サステナ防除」とは、いい換えれば、持続可能な農業を実現するために必要な防除という意味でもある。
この持続可能な農業とは、いつもどおりに植え付けて、いつもどおりに生育し、いつもどおりに収穫が得られる農業のことで、それが永年継続して行われるものと考えている。その永続性を妨げるのは、低温、高温、乾燥、過湿、台風、鳥獣害、病害虫雑草害であり、いずれも自然環境の変化によって毎年同じになるとは限らないものである。特に病害虫は気候の変化に敏感で、発生消長などは常に変化する。このため、今回のテーマである春夏野菜の病害虫防除も気候の変化に耐えられるような防除を考えていかなければならないだろう。もちろん、その際には、コスト的にも労力的にもリーズナブルなものにならなければ意味がないと考えている。
サステナブルな防除を妨げる要因には、抵抗性害虫・耐性菌の発生などもあるが、一番大きいのは気候変動による病害虫発生様相の変化によって適期防除ができないことであろう。いうまでもなく、病害虫の防除を効率的に実施するには、病害虫の生育密度が低い初期を逃さないようにすることが肝要であるが、近年の温暖化等の影響により病害虫の発生が例年より早まったりすることがある。
それに対応するためには、病害虫が発生する時期にはほ場の見回り回数を増やすなどして、病害虫の発生初期を見逃さないように注意する必要がある。
例年通りで大丈夫とタカをくくることなく、防除適期を逃さないように気象の変動に気を配りながら、ほ場の観察を怠ることなく、早め早めに行動するように心がけたい。
春夏野菜の代表選手であるトマトやキュウリ、ピーマン、ナス、スイカやカボチャといった作物では、春先から初夏にかけてはまだ病害虫の発生も少なく、少ない労力で確実に防除できる時期でもある。この効率よく防除できる時期に徹底防除を行い病害虫の密度を抑えておくことがサステナ防除の重要なポイントである。
耕種的防除法は、農作物やほ場の環境を、病害虫が活動しにくい、あるいは嫌がるような環境に変えることで効果を表す。一般的な例では、抵抗性品種の使用や輪作、黄色や青など害虫が集まりやすい色をした粘着資材、アブラムシが近づくのを嫌がるシルバーマルチなどがある。このように、耕種的防除は、発生前や発生初期の病害虫の発生密度が低い時に効果が高いので、できるだけ栽培体系の一部に組み入れて毎年実施し、病害虫の密度が低い状態を維持できるようにするとよい。
それでも、病害虫の生育に適した環境が続くような場合には、病害虫の発生密度が急激に高まり耕種的防除だけでは防ぎきれなくなることも多い。このような場合には、耕種的防除を病害虫の密度を下げるための補完的な手法と割り切り、化学的防除(農薬)と組み合わせることでより確実な防除が可能となる。その場合には、できるだけ病害虫の発生前の予防的な防除が可能な時期を逃さずに組み入れるとよりよい。
[耕種的防除の例]
(害虫)防虫ネット、有色粘着紙、シルバーマルチ、周辺雑草防除、手取りなど
(病害)熱消毒、土壌還元消毒、拮抗微生物利用、有機物施用、輪作、抵抗性品種の利用、弱毒ウイルス、栽培時期の移行、適正施肥、雨よけ栽培など
(雑草)機械除草、耕運、マルチかけ など
使用適期を逃さず
農薬それぞれには、一番効果的に使える使用適期がある。その適期の幅は、有効成分によって異なるが、多くの場合、使用適期を逃すと十分な効果が出せない。このため、使おうとする農薬のラベル、解説技術資料などをよく読み、特にこの「使用適期」を十分に把握した上で使用するようにしてほしい。記載されている使用適期は、たくさんの薬効試験の積み重ねによって、一番効果が認められた時期を定めているので、これを守るだけでも、防除の効率は格段によくなるはずである。
例えば、「病害が発生する前に散布する」と書いてある場合、病害の発生後にいくら散布しても効果がなく、「害虫が小さい時に散布する」と書いてある農薬の場合、既に大きくなった害虫にはまず効かないと思ってよい。使用適期を逃した散布は、多くの場合、無駄な散布になってしまうので注意が必要だ。このような無駄な散布を排除することもサステナ防除の重要なポイントである。
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