農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(57)【防除学習帖】第296回2025年5月3日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
24.ジチオラン
(1)作用機構:[F]脂質生合成
(2)作用点: リン脂質生合成(メチルトランスフェラーゼ)
(3)グループ名:ジチオラン・グループコード:[6]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低~中
(5)耐性菌の発生状況:イネいもち病で発生事例あり
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]ジチオラン/イソプロチオラン(フジワン)
※JFRACコード表では、同じグループにホスホロチオレート/IBP(キタジンP)の記載があるが、同成分の国内登録が失効したため本稿では割愛した。
(7)グループの特性:
このグループ[6]は、病原菌の生育の際に、新たに細胞膜を構成するために必要なリン脂質の生合成を阻害し、正常な細胞分裂をできなくして死滅させる作用を示す。これにより、菌糸の伸長を強く抑制して、予防効果と長期の持続性を有し、浸透移行性も有することから治療効果もある。
主にイネいもち病防除で使用されてきたが、近年はいもち病防除剤としての使用量は減っている。果樹の白紋羽病やイネ稲こうじ病の他、トビイロウンカの増殖抑制効果やムレ苗防止といった植物成長調整剤としての効果もあることから、いもち病防除以外の用途が使用されている。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属するイソプロチオランのリスク換算係数は0. 1 であり、その基準年出荷量は合わせて約9.5トンである。
本グループの唯一の薬剤であるイソプロチオラン(フジワン)は、殺菌剤としての使用は年々減少しており、ムレ苗防止などの植調効果を期待した用途で活用されている。このため、使用量の低減を考慮する必要はなく、むしろ植調効果で有効活用できる場面があればその分野で使用する方が得策である。
(9)ジチオラン剤の農薬登録がある主要病原菌一覧
ジチオラン剤の農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌の一覧を次表に示した。
これらは、ジチオラン剤(イソプロチオラン)が農薬登録を取得している作物・病害を整理したもので、本グループの有効成分が活性を示す病原菌群を示したものである。このため、実際の製品ごとの農薬登録内容と異なる場合があるので、あくまで防除できる可能性のある病原菌の参考にとどめ、実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(作物・病害名)を確認して正しく使用するようにしてほしい。

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