BNI強化ソルガムの環境・経済へのメリットを評価 国際農研2025年1月31日
国際農研は、国際半乾燥熱帯作物研究所(ICRISAT)との共同研究により、生物的硝化抑制(BNI)強化ソルガムの導入が、環境負荷の低減(LCA、ライフサイクルアセスメント手法を用いて計算)と農家の経済的利益の向上を同時に実現する可能性があることを明らかにした。
国際農研は、少ない窒素肥料で高収量を実現するBNI強化作物の開発を進めている。LCA手法を用いた事前評価を通じて、作物の生産性向上と環境負荷低減への貢献可能性を科学的に予測し、研究開発の優先順位決定や社会実装の促進に活用しており、特に、インドで伝統的に重要な食料であるソルガムのBNI能に着目し、その潜在的な環境負荷低減の可能性を探求している。
国際農研は、BNI強化ソルガムの開発を進めるため、インド最大のソルガム生産地であるマハーラーシュトラ州で事前評価を目的とした生産費等に関する農家調査を実施。農家調査の結果から、BNI強化ソルガムを生産する場合でも、窒素肥料が政府の補助金対象であるため、その使用量が必ずしも削減されない可能性が示唆されるなど、環境負荷低減技術の導入と既存の農業政策との整合性に関する課題が浮き彫りになった。
そのため、2つのケースについて、BNI強化ソルガム(目標:土壌の硝化抑制率30%)の導入によるメリットを評価。その結果、以下の点が明らかになった。

図1:農家データを用いたライフサイクル温室効果ガスと農家利益の計算の概念図
(1)収量を維持しながら窒素肥料を削減した場合
・窒素施肥量がラビ(乾期)作4)で8.0%、カリフ(雨期)作4)で7.4%削減
・面積当たりと収量当たりのライフサイクル温室効果ガス(LC-GHG)5)排出量がそれぞれ15.6%と11.2%削減
・政府の窒素肥料補助金支出がラビ作で9.1%減少
・農家利益が微増

図2:BNI強化ソルガムが窒素施肥量、収量、面積・収量当たりLC-GHG排出、
農家の利益、肥料補助金へ及ぼす影響
(2)窒素施肥量を維持して収量を最大化した場合(前提条件として、政府からの補助金は減少しない)
・面積当たりLC-GHG排出量がラビ作で11.3%、カリフ作で8.1%削減
・収量当たりLC-GHG排出量がそれぞれ13.5%と10.2%削減
・収量がそれぞれ2.5%と2.4%増加
・農家の利益がそれぞれ4.9%と6.5%増加
以上のことから、現在開発が進められているBNI強化ソルガムは、農家の窒素施肥量削減の有無に関わらず、農家の利益向上とGHG排出量削減を両立させる技術であることが示唆された。この技術は、窒素施肥量の多い国・地域では環境負荷の低減に、窒素施肥量が少ない国・地域では生産性の向上に貢献し、持続可能な食料生産システムの構築に寄与することが期待される。
同研究は窒素肥料補助金政策が農家の選択に影響を与える可能性を示唆しており、環境に配慮した農業政策の立案にも重要な知見を提供している。
同研究成果は2024年11月14日、科学雑誌『Science of the Total Environment』オンライン版に掲載された。
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