チョウセンミネバリは最終氷期の生き残りか 見過ごされてきた樹木の生態に迫る 森林総研2025年2月27日
森林研究・整備機構森林総合研究所(森林総研)は、筑波大学、千葉大学と共同で分布予測モデルを用いてチョウセンミネバリの最終氷期最寒冷期(約2万2千年前)における分布を推定。日本のチョウセンミネバリが氷期の遺存種である可能性が高いことがわかった。また、チョウセンミネバリが日本の森林の変遷過程を紐解く注目すべき樹種であることがわかった。
写真1:本州中部のチョウセンミネバリ(左)とチョウセンミネバリの枝葉
森林総合研究所多摩森林科学園の設樂拓人研究員、千葉大学大学院園芸学研究院の百原新教授、筑波大学生命環境系の相原隆貴研究員らの研究グループは、これまで国内で十分に認識されてこなかったチョウセンミネバリに着目し、その生態や分布について調査を実施した(写真1、図1)。
図1:チョウセンミネバリの現在の分布地点
チョウセンミネバリは極東ロシア沿海州や朝鮮半島、中国の大陸部に広く分布しているカバノキ科カバノキ属の落葉広葉樹で、日本でも栃木、長野、岐阜、富山、山梨の各県で見つかっている。チョウセンミネバリの現在の分布は、ほかの氷期遺存種の分布パターンとよく似ているため、日本に隔離分布する集団は氷期の遺存種であると考えられてきたが、過去の分布を示す化石などの情報が極めて少ないため、十分に証明されていなかった。
そこで、分布予測モデルを用いてカバノキ科のチョウセンミネバリの約2万2千年前の最終氷期最寒冷期の分布を推定し、当時の日本列島に広く分布していたことを明らかにした。さらに、日本の集団は最終氷期以降の温暖化で分布域が狭まり、現在は本州中部の一部の山地で生き残っている氷期の遺存種である可能性が高いことを示した。
チョウセンミネバリはこれまで日本では図鑑にほとんど掲載されておらず、認識されていない樹種。同研究はチョウセンミネバリが単なる希少種というだけでなく、現在の日本の森林植生がどのような変遷を経てきたのかを紐解く手がかりとなる重要な樹木であることを示している。
また、寒冷・乾燥な気候に適応した樹種であることから、今後の地球温暖化で生育が危ぶまれる可能性があり、注視していく必要がある。
同研究成果は2024年12月25日、『Ecological Research』誌でオンライン公開された。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日