食品流通 シリーズ詳細

シリーズ:いま!食のマーケットは

2015.03.06 
【シリーズ・いま!食のマーケットは】番外編 2014年の小売業界 変わりゆく市場に的確に応える一覧へ

・これからの産地のあり方
・明暗がくっきりと
・安いところに流れた
・運ぶところが伸びた
・これからは地域密着で
・若い世代の獲得を

 2014年の小売業界の売上高などのデータが1月に出揃った。昨年4月の消費税増税後、消費の低迷がいわれてきたが、これまで小売業界を牽引してきたCVS(コンビニエンスストア)に陰りが見えるなど、いくつかの特徴がみられる。そこで「いま食のマーケットは...」の番外編として、こうしたデータをどう読み解くのかを、小売業界に詳しい(公財)流通経済研究所の理事でもある根本重之拓殖大学商学部教授と日本スーパーマーケット協会元専務理事の大塚明氏に聞いた。

◆明暗がくっきりと

 2014年(1月〜12月)の各業態別売上高は表1の通りだ。これを見ると、既存店売上高で前年を上回っているのは食品を中心とするスーパーだけで、これまで小売業界を牽引してきたCVSも2013年に引続き既存店売上げが前年を下回っている。
 全国展開をする総合スーパーの既存店は18年連続で前年実績を下回っている。また、百貨店はほぼ前年実績を上げているが、東京、大阪など都市部の既存店では前年実績を上回っているが、それ以外の地域では前年実績をかなり下回っており、消費動向に地域間格差が存在することを示している。
 新規店を含む全店ベースではいずれも前年実績を上回っているが、CVSが店舗数を5%増やし5万1814店舗に、総合スーパーが12・6%増の9372店舗としたように、店舗数を増やすことで売上高を確保している構造になっている。
 さらに詳細に見ていくと、業態の中で伸びているところと沈んでいるところがある。例えば、CVSでいえば、セブン・イレブンが既存店ベースでも好調なのに対して、ローソンでは都市部を中心に展開している「100円ローソン」や小型スーパー「ローソンマート」は売上げが伸び悩んでいるとして約300店舗を閉店するなど、明暗が次第に明確になりつつあるといえる。
 全国展開するイトーヨーカ堂もイオンも苦戦が続くが、こうした総合スーパーという業態を日本で初めて展開した「ダイエー」が会社名としては残るが、店舗としては完全に消えることになったことも、いまの日本の小売業界を象徴するできごとだといえよう。
 こうした小売業界の動向をどう考えればいいのだろうか。根本重之教授は、伸びた企業の要因を次のように分析する。
 一つは、「新規顧客を獲得した」ところだ。例えば、スイーツを出すことで、下校時の女子高校生を新規顧客として獲得した回転寿司。機能性商品で新規顧客層を獲得したユニクロは浮いたが、シマムラは沈んだ。
 つまり「守ろうとしたところは沈み、新商品や新メニューを開発して、新規顧客を取りに行ったところは浮いた」ということだ。

表1 2014年の業態別売上げ

 

◆安いところに流れた

 二つ目は「安いところにお客は流れた」。具体的にはCVSからスーパーへお客はシフトしたということだ。
 消費税が3%上がっても「スーパーに行けばペットボトル飲料は98円で売っている」。だからCVSより数十メートル余分に歩いてスーパーに行くようになったという。
 根本教授は「消費税増税という制度変更がスーパーにとってはラッキーでCVSにとっては安ランキーだった」という。大塚氏は、スーパーが良くなっているのは、「生鮮に対するものの考え方と、生鮮の価格上昇が結果としてスーパーを押し上げた」結果で、消費税増税前から見られたことだと指摘する。
 スーパーの戦略として「エブリディーロープライス」(毎日が低価格)があるが、「今日はこの商品がこの値段」という従来からのスーパーの一般的な戦略「ハイ・ロー作戦」による「今がこれを買うチャンスですよ」というプロモーションに、実質賃金が上がらない消費者が反応しているということでもあるだろう。

◆運ぶところが伸びた

 三つめは、「運ぶところが伸びた」だ。その典型が生協の宅配(個配)の伸びだ。表2は生協の店舗と宅配の月別の推移をみたものだが、店舗は「右肩下がり」だが、宅配とくに個配は「右肩上がり」と対照的になっていることが分かる。
 これは高齢者層もあるが、若い人たち、とくに「30歳前後の子どもを持っている人たちが、理念には必ずしも賛同していないが、便利だからと新たに生協に加盟してきているからだ」と大塚氏は指摘する。
 さらに「アマゾンというとんでもない存在もあり」、スーパーなども当然参入して大きな流れになってきている。
 四つ目は、一つ目と似ているが「客層を広げたところ」だ。いままで年収400万円前後を対象にしてきたが、600万円以上、300万円前後の両方の層に対応するために品揃えを広げることに成功したところだ。
 多くの経営者が「二極化」という表現をするが、これに対応できたところが伸びているという。
 まとめると「マラソンでいえば、スパートすべき時にスパートする体力があったところ、前から加速してきたところ」が伸びたということだ。そしてそれは「次の時代のマネジメントがきちんと見えていた会社」でもあるということだ。

◆これからは地域密着で

 セブンイレブンは、新店よりも既存店を重視し、一店一店が市場対応力をきちんとつけていこうとしてきた。さらに、関西は弱いので、それをどう引き上げるかを考えた。そして「おでん」の場合、「自分たちの味は東の味覚だから、西には合わない」ので、出汁を変える。あるいはデミグラソースに牛筋を入れて、関西風にする。いままでは全国一律だったのに、それを「ローカライズする」。
 つまり、個店対応力の強化と地域密着スタイルの追求がセブン・イレブンの強さだ。さらにセブン&アイグループは、セブン・イレブンは全国9地域、イトーヨーカ堂は全国13地域に分けて、地域密着型運営を目指すとともに、次の消費税増税期である17年までに商品の5〜7割を入れ替えるという。
 こうした考えが、これからの小売業界の一つの方向ではないかと根本教授も大塚氏もいう。
 それでは生産者サイドはどうすべきなのか。
 大塚氏は「生産者はみんな東京で売りたいというが、僕は、とりあえず地元のスーパーで売り、大成功したモノを持ってきなさい」といっているという。
 根本教授も「大消費地で誰かに頼めば売れるだろう」ではだめだ。地元の小さなスーパーでもいいから地元の野菜を売り、「全国チェーンで全国流通する野菜を買う人を奪う」ことだという。そのためには、地場での料理の仕方や食べ方を伝え、地元の野菜は美味しくて新鮮で健康にもよいことをアピールし、存在価値を示すことだとも。
 出発は違うかもしれないが「地産池消」でありそれが「地産他消」につながっていくわけだ。

 

◆若い世代の獲得を

 もう一つは、「若い世代の獲得」だ。
 コメ余り時代に生まれ育ち、コメを主食とは考えず、「肉には骨がなく、あれば『骨付き」と表示されるのに、なぜ魚には骨があるのか」という人たちを、どう取り込み、「伝統野菜を食べさせるか」が課題だ。
 「農協がクッキングスクールを開くとか、積極的にアピール」することが大事だということだ。そうやって小さくても自分たちで取れるマーケットを探していく。地元で成功することで大消費地にも展開できるし、地元の文化などと結合することで、大消費地の人間を地元に呼び込むこともできる。そうなれば文字通り「地域の創生」につながることにもなる。
 消費は不変なものではない。小売業界も日々変化し、新しい姿に変貌している。その変わりゆく様を見極め、的確に産地として対応することがこれからは求められている。
 今回の番外編を含めて、そのことを少しでも感じ取ってもらえれば幸いだと思う。

表2 生協供給高前年同月比推移

 

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