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慣行栽培の半分で「楽だ」 水稲栽培の新技術「密苗」をみる2016年4月28日

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 大規模化と低コスト化がこれからの水田農業の大きな課題だといわれている。そうした課題に応える栽培法として、いま注目の「密苗」の現場を取材した。

◆播種量は慣行の6割増

移植される密苗 4月25日朝、良く晴れわたった埼玉県加須市にある下山辰巳さんの田んぼの周りに多くの人が集まり、20日ほど前に播種した「密苗」の移植作業を行う田植え機の動きを熱心に見つめていた。
 下山農場は埼玉県の利根川沿いの穀倉地帯・北川辺で先祖代々肥沃な水と土、温暖な気候を活かし良質な早場米を生産している農家だ。また、ここは県内有数のトマト産地でもあり後継者の長男・豊さんが中心となってトマトのハウス栽培も行う複合経営農家だ。
 慣行栽培では育苗箱1枚にコシヒカリの種籾を150g程度播種するのだが、今回試す密苗ではその6割増しの250gを播種。その苗をこの日、移植する。
 この日に合わせて農機メーカーのヤンマーは、既存の田植え機「RG8DIESEL」の移植用の掻き爪を、密苗に対応して9mmと細く改良した試験機を持ってきていた。爪だけではなく、通常、1分間に26回転して移植するところを8条植え30回転にまで対応し、よりスピーディな移植を可能としていることも注目された。密苗に対応した細い爪だが「慣行栽培の150g以上なら対応できる」とヤンマーの技術者。
 移植と同時に散布される基肥と除草剤も所定のタンクに入れられ、下山さんがヤンマーの技術者と田植え機に乗り込み、移植が開始された。
 見つめるのは、播種の時から参加している地元のJAほくさいやJA全農さいたまの関係者、埼玉県加須農林振興センターの技術普及担当者、近隣の生産者、そしてこの日はやや離れてヤンマーのライバル会社の担当者も真剣に見つめている。この近隣で密苗を実際に行うのは、今回の下山農場が初めてということもあって、苗の状態から移植に至るまで、細部にわたってチェックし、技術的な質問が飛び交う。


◆ウエイト高い育苗・田植時間

播種された種籾と育った苗(右:密苗、左:慣行)

 いまなぜ、この密苗が注目されるのか。
 平成25年6月閣議決定の「日本再興戦略」では、10年間で全農地面積の8割(現状約5割)を担い手に集中し、その担い手の米の生産コストを現状の全国平均1万6000円/60kgから4割削減することを目標とした。首相の諮問機関や自民党などからは、生産資材費が高いのではないかという意見が出されている。だが、農水省資料によれば、生産コスト(全算入生産費)1万6000円のうち、直接生産に関わる物財費は、生産資材(肥料、農薬、農機具費)8153円+賃貸料及び料金1325円の9478円となっている。その他は労働費が4191円、地代・利子2650円だ。
 生産コストの4割・6400円削減を実現するために、肥料や農薬、農機具を使うことを止めれば別だが、それをいま生産者に求めることはできないし、実現する可能性は限りなくゼロに近い。
 そこでさまざまな低コスト化技術が開発されている。なかでも最近奨励されているのが、米国などの大規模農場が行っている移植(田植え)をしない直播技術だ。その代表的な技術が「鉄コーティング水稲直播栽培」だ。
 農水省資料では、米の栽培にかかる10aあたり作業別労働時間をみると全国平均は24.87時間。うち「育苗」が3.22時間と全体の12.9%を占めている。これは規模を拡大しても15ha規模まではそれほど変化がない。
 また田植えにかかる時間も3.33時間で13.4%を占め、これを合計すると6.55時間、26.3%となる。大規模では田植時間は短縮するが、作業時間に占める割合は15ha以上(作業時間12.79時間)では、育苗19.2%(2.46時間)+田植え14.9%(1.90時間)で合計34.1%(4.46時間)と高くなる。
 こうした作業時間を低減する技術として、鉄コーティング直播など直播技術が期待されており、一定の規模で実施されてきているが、必ずしも多くの生産者に受け入れられているわけではないようだ。
 やはり、自分で育てた苗を、耕起しきれいに代かきした田に、整然と田植えをするという先祖から受け継いできた栽培技術を簡単には捨て去ることができないのではないだろうか。


◆大規模水田で省力・低コスト化

 そうしたなかで注目されてきているのが、慣行栽培より多く播種することで、必要な育苗箱の枚数を減らし、播種から育苗そして移植までの作業を効率化し労働力を減らすことができる「密苗」だ。
 大規模水田営農を支える省力・低コスト技術として、全国的にも取組みが始まってきている。
 初めて「密苗」に挑戦し、この日実際に移植した下山さんの感想は「慣行だと10a15~16枚だけれども、今日は密苗で8枚だから、楽でいいね」。さらに「ウチより大きな水田に作付する人にとっては、本当に楽だと思う」という。
 秋の収穫を待たなければ結論を出すことは難しいが、慣行とほぼ同程度の収量と品質が保てれば「期待できる技術」だと下山さんたちはいう。秋の収穫がいまから楽しみになる。
(写真)移植される密苗、播種された種籾と育った苗(右:密苗、左:慣行)

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