県内のトマト施設でトマトキバガ 国内で初確認 熊本県2021年11月17日
熊本県病害虫防除所は、トマトキバガ(チョウ目キバガ科)の発生を県内の一部のトマト施設栽培ほ場で確認。これを受け、11月12日に病害虫発生予察特殊報第2号を発令した。
トマトキバガ幼虫(写真提供:熊本県病害虫防除所)
10月に県内の一部のトマト施設栽培ほ場で、葉の薄皮化および白~褐変症状と果実の穿孔症状が発生。症状が発生した葉や果実において乳白色~緑白色でやや桃色がかったイモムシ型の幼虫の寄生が確認された。また、当該ほ場内では、暗色で細長い小さなガの成虫が確認された。これらの幼虫と成虫を採集し、病害虫防除所で確認したところ、トマトキバガが疑われたため、農林水産省門司植物防疫所に同定を依頼。その結果、トマトキバガであることが判明した。
同種の発生は日本国内ではまだ報告されていない。南アメリカ原産で、2006年にスペインへの侵入が確認され、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、インド、ネパール、東南アジアに分布を拡大。今年5月までに、新たに台湾、中国、中央アジア諸国などでの発生が確認されている。
成虫は翅を閉じた静止時で体長5~7ミリ。前翅は灰褐色で黒色斑が散在する。後翅は一様に淡黒褐色。幼虫は終齢で体長約8ミリに達する。体色は淡緑白色~淡赤白色で、前胸の背面後縁に狭い黒色横帯を有する。
1年に複数回の世代が発生する多化性で、繁殖能力が高い。発生する世代数は環境条件によって異なり、南米では年に10~12世代発生することが報告されている。卵から成虫になるまでの期間は24~38日ほどで、気温が低い時期はさらに期間が延びる。また、発育下限温度は8℃と推定されている。
成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。雌は一生の間に平均で約260個の卵を産み、寄主植物の葉の裏面などに卵を産み付ける。幼虫では1齢から4齢までの発育ステージがあり、4齢幼虫は土中や葉の表面で蛹化する。
被害はトマトの葉では、内部に幼虫が潜り込んで食害し、葉肉内に孔道が形成される。食害部分は表面だけが残って薄皮状になり、白~褐変した外観となる。果実では、幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数ミリ程度の穿孔痕が生じるとともに、食害部分の腐敗が生じ、果実品質が著しく低下する。
タバコ、トマト、ナス、バレイショなどのナス科植物が主要な寄主植物。マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認されている。海外では、ピレスロイド系やジアミド系などの殺虫剤に対する抵抗性を獲得した個体群の発生が報告されている。
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇現在、トマトキバガに対する登録農薬は無いが、植物防疫法第29条第1項に基づく措置として、別紙に記載された農薬による防除を行う。なお、薬剤防除にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤のローテーション使用を行う。
〇ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
〇被害株や被害果は次世代の発生源となり得るので、ほ場内から除去する。なお、除去した被害株などを野外に放置すると、それが発生源となり、本種が周囲に拡散する恐れがあるため、除去した被害株などは、土中に深く埋設するか、ビニール袋などに入れ、寄生している虫がすべて死滅するまで一定期間密閉した上で適切に処分する。
トマトキバガ幼虫の食害による被害果(写真提供:熊本県病害虫防除所)
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