トマトキバガ 県内で確認 長崎県2022年4月7日
長崎県病害虫防除所は、トマトキバの発生を県内で確認。これを受け、4月5日に病害虫発生予察特殊報第1号を発令した。
3月に、県内のばれいしょのほ場周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップで、トマトキバガと疑われる成虫が誘殺され、その成虫を門司植物防疫所に同定を依頼したところ、トマトキバガであることが確認された。現在、県内の農作物における同種幼虫の発生および被害は認められていない。
同種は南アメリカ原産だが、2006年にスペインへの侵入が確認され、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、インド、ネパール、東南アジアに分布を拡大しており、2021年5月までに新たに台湾、中国、中央アジア諸国などで発生が確認されている。また、国内では同10月に熊本県で初めて確認され、同12月に宮崎県で、今年3月には鹿児島県、大分県、福岡県でも発生が確認されている。
成虫は、翅を閉じた静止時で体長5~7ミリ(前翅長5ミリ弱、開翅約10ミリ)。前翅は灰褐色で黒色斑が散在し、後翅は一様に淡黒褐色。幼虫は終齢で約8ミリに達する。体色は淡緑色~淡赤白色で、前胸の背面後縁に狭い黒色横帯を有する。
生態としては、1年に複数回の世代が発生し、繁殖能力が高い。発生世代数は環境条件によって異なり、南米では年に10~12世代発生することが報告されている。
卵から成虫になるまでの期間は24~38日程度で、気温が低い時期は更に期間が延び、発育下限温度は8℃と推定されている。成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。雌は一生のうちに平均で約260個の卵を産み、寄主植物の葉の裏面などに産み付ける。幼虫は1齢から4齢までの生育ステージがあり、土中や葉の表面で蛹化する。
他県ではトマトの被害が確認されており、葉の内部に幼虫が潜り込んで食害し、葉肉内に孔道が形成される。食害部分は表面のみ残して薄皮状になり、白~褐変した外観となる。果実では、幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数ミリ程度の穿孔痕が生じるとともに、食害部分の腐敗が生じ、果実品質が著しく低下する。
海外では、ばれいしょの地上部を加害し、塊茎は直接加害しないとされてきたが、近年、フランスでばれいしょ塊茎への直接加害も報告されている。
寄主植物は、トマト、ナス、タバコ、バレイショなどのナス科植物が主要なもの。マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認されている。海外では、ピレスロイド系やジアミド系などの殺虫剤に対する抵抗性を獲得した個体群の発生が報告されている。
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇現在、トマトキバガに対する登録農薬はないが、植物防疫法第29条第1項に基づく措置として、別紙に記載された農薬による防除を行う。なお、薬剤防除にあたっては、薬剤抵抗性発達防止のため、異なる系統の薬剤によるローテーション散布を行う。
〇ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
〇被害葉や被害果はほ場内から持ち出すとともに、野外に放置せずに速やかに適切に処分する。また、掘り取ったいもは長くほ場に放置せず、残りいもも適正に処分する。
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