頼れる相棒、AI駆使した自動野菜収穫ロボット 初期費用無料で運用開始 inaho2019年8月21日
農作業の機械化を語る上でとりわけニーズが高い野菜の自動収穫ロボット。6月に農林水産省が実施した「スマート農業スタートダッシュミーティング」にこの分野で唯一出展していたのが、AIを使った「自動野菜収穫ロボット」だ。神奈川県鎌倉市にあるベンチャー企業、inahoが近く開始するサービスを紹介する。
アスパラガスを収穫する「自動野菜収穫ロボット」
個体ごとの成長にばらつきがあり、一括収穫できないトマト、ナス、キュウリ、アスパラガスなどの野菜は、人の目で収穫適期を判断しなければならず機械化が難しい。とはいえ、深刻な人手不足のなか、収穫の労力を他の作業に回せれば作業効率がアップすることは間違いない。
同社共同代表の一人、菱木豊さん(36)は、「収穫は本当に大変で忍耐のいる単純作業なのでロボットがやれるようにしていければ、空いた時間で生育管理やよりおいしい野菜を作ることを考えたり、家族と出かけたり、本を読んだりと時間をどう使うかは人それぞれですが、その選択肢が生まれるのが大事」と話す。
知り合いの若い農家から「雑草取りのロボットができないか」と相談を受けたことをきっかけに、野菜の自動収穫ロボットの開発に取り組み、2015年からリサーチを開始。機能を絞り込み、都内の大学などの協力を得ながら試作機を開発してきた。2017年には栃木で、2018年からは、キュウリとアスパラガスの一大産地である佐賀県鹿島市を拠点に導入に向けた実証試験を行い、この夏、本格的にアスパラガスの自動収穫をスタートする。
同社が開発した野菜自動収穫ロボットは、元来、人が目視で判別し収穫していた作業をAIによるセンサーや画像処理で判断し、ロボットが収穫する。導入にあたっては収穫ロボットを無償レンタルし、初期費用とメンテナンス費は無料。従量課金を採用したビジネスモデルが特長で、農家は作物の収穫量と市場価格を掛けた金額の15%を支払う。これはパート1人分の人件費より安くなる計算で、豊作の年に人手不足になったり、不作の年に人件費を惜しむこともなくなる。また、ロボットは定期的にアップデートされるため常に最新のロボットを使えるというメリットもある。
当初は1台につき数百万円で販売することを考えていたが、ある68歳の農家から「あと何年農業をやるかわからないのに、それじゃ使いたくても買えない」と言われ、必要な機能を必要なだけ提供するサービス形態に改めたという。
菱木さんは、「完成品で売り切りより、メンテナンスも自社で持ち、壊れたらすぐに代替品を出せる方がサービス面での不安を解消でき、より早く市場に出せる」とその利点を語る。
同社の自動野菜収穫ロボットは、競合品よりコンパクトサイズで、ほ場に引いた白い線の上を走行するシステム。走行用のレールを新たに設置する必要もなく、環境に制限されずに導入できるところも魅力だ。
2022年までに九州地区へ24拠点、全国40拠点へ進出予定。今後は果菜類全般とトマトやイチゴなど果実も展開していく。
inahoの菱木共同代表CEO。右は自動野菜収穫ロボットのプロトタイプ
鎌倉の本社で運用前のプロトタイプの動きを見せてもらった。白い線に沿って、収穫適期になったアスパラガスを画像で認識するとアームを伸ばしてカットし、カゴに納めていく。続いて収穫適期を過ぎた長いものや、逆に短いものはスルーする。その律儀な仕事ぶりは、ロボットとはいえ愛着がわくのだろう。実際、実証試験では、「自動野菜収穫ロボット」に名前をつけて呼び出す農家もあったことから、現段階ではあえて商品名をつけずにサービスを開始するという。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日