農作業時の事故防止にスマート水田サービス「paditch(パディッチ)」 笑農和2019年8月27日
農作業中の死亡事故発生数は、全産業の平均と比べると約9倍にもなるという。死亡事故のうち、最も多いのは機械作業中の事故だが、熱中症や農業用水路での事故も多く、高齢化も事故増加の一因になっている。そんな状況をテクノロジーで打開しようと、スマート水田分野を開拓するアグリテック企業、笑農和(富山県滑川市)の水稲農家向け水位調整サービス「paditch(パディッチ)」を紹介する。
農林水産省の発表によると、平成29年の農作業事故死亡者数は304人。農業就業者10万人当たりに換算すると、死亡者数は16.7人となり、過去最高を記録した前年を更新した。
産業別の死亡者数では、農業が1位で、高所での作業など危険なシーンが多い建設業界に比べても、農業の死亡事故発生件数は2倍以上。全産業の平均と比べると約9倍と、農作業時の危険性の高さが浮き彫りとなっている。
笑農和が開発した「paditch」は、米農家が特に負担に感じる作業である水管理を自動化するスマート水田サービス。遠隔で水門を自動開閉でき、手元のスマートフォンやタブレット、パソコンなどを使い自宅にいながらでも水量や水温の調整など水管理ができる。タイマー機能を使えば、深夜の水入れや朝方の水止めなど寝ている間の水管理も可能。水が抜けると異常アラートで知らせる。また、水温を見ながら細目な入水管理ができ、高温障害も防ぐ。台風や大雨の日など災害の危険時も、遠隔で水管理を行うことができる。
(写真)笑農和が開発したスマート水田サービス「paditch」
同社は、「水田に行く頻度を大幅に減らし、農作業中の危険なシーンを避けることができるため、熱中症対策や農作業中の事故防止に効果を発揮する」としている。
富山県の米農家、サンライス青木では、「paditch」を6台導入。「1日1回、水門の開閉を自動で行っていて、深夜や早朝になる場合はタイマーを活用しています。導入以降、現場に行く回数が大幅に減り、深夜や早朝作業がなくなったのは非常にありがたい」とコメントしている。
日本農業情報システム協会代表理事でスマートアグリコンサルタンツCEOの渡邊智之さんは、農作業中の事故が起こる原因として、(1)1人で作業しているため、事故があっても気づかれない(2)農機具の多くは「安全対策」が二の次になっている(3)農家の「安全管理」に対する義務感が薄い、の3つを挙げ、「すべてに通じるのは、農業が個人経営であり『経営』の意識が低いこと。企業であれば社員を守るのは当然であり、安全管理を第一に考えるはず」と説明。
さらに、「農業界では作業の効率化だけでなく、事故を防ぐ目的でもテクノロジーをどんどん活用していくべき。血圧、心拍数、体温といったバイタルサインの変動を検知するバイタルセンシングやドローンを使えば、農作物だけでなく『人も観察する』ことができる。例えば、paditchにセンサーを搭載、ドローンを併用して人の動きを検知し、paditch経由で通信ができるようになれば、農作業時の死亡事故の減少に大きく寄与するでしょう」と話す。
(写真)用水路の脇に設置すれば水温・水位を自動で管理する/スマホやタブレットで水門を遠隔開閉できる
「paditch」は、笑農和が2017年から運用を開始。現在までに導入数は全国で100件を超える。
2019年には、北陸で初めてベンチャー・キャピタルより大型資金調達をおこない、「paditch gate02+」を発表。これにより水門の遠隔開閉、タイマー自動開閉、全体開閉、個別開閉、エリア開閉などが可能となった。
同社は、「この技術は農作物の栽培だけではなく、人命救助にも一役をかっています。特に大雨や水害時など、用水路での事故の一因は、農家が水門管理途中に転落したケース。水門をITシステムで遠隔管理することでそういった事故を防ぐことが可能です」としている。
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