安倍内閣の歪んだ農業観2014年7月22日
アベノミクスの第3の矢といわれる成長戦略をみてみよう。政府は先月の24日に、"「日本再興戦略」改訂2014"という文書を発表した(資料は本文の下)。そこで、どのような農業観を語っているか。そして、どんな特徴があるか。
そこには、農業が生命を維持するために必要不可欠な食糧を生産している、という認識がない。だから、いまの食糧自給率が39%しかないのに、向上させる食糧安保戦略がない。
また、農業は古今東西どこでも経済的弱者である農業者が担っている、という認識がない。この事実を無視して、農外資本が日本農業を再興できる、という妄信を基本戦略にしている。
この「戦略」の農業に関する部分は、全体で7268文字を使って書いているが、「食料自給率」という文字は、総論的な部分に1か所あるだけである。具体的な戦略については、何も書いていない。
全体の基調としての特徴は、今後の農業再興のために、家族農業を追い出して、農外企業を農業に進出させる、という点にある。「所有方式による企業の農業参入…(を)…検討する」とまで言っている。つまり農外企業による、農地所有である。
◇
そのための戦略は、農業生産法人の要件緩和だけでなく、農業委員会の公選制の廃止であり、農協の連合会の解体である。どれもが、企業進出のじゃまになる、というわけである。
そうして何をするか。
付加価値をつけて、国内で売り込み、また、海外にも売り込むという。ここには、進出した企業の目先の私利私欲の追求だけがあって、食糧安保の考えはない。
◇
また、農業が地方の基幹産業だという認識もない。
ここでは、農業は国民生産の1.0%しか生産額がない弱小な産業、という認識しかない。
だが、「土地持ち非農家」といわれる農家を含めて、農家人口は、全国の総人口の9.4%を占めている。この人たちが、農業を営み、地方をもり立てている。このことが分かっていない。
農業も営利のための普通の産業で、農業生産法人などという特殊な法人は認めない。農業委員会は不必要だ。農協は普通の業者団体だ。そのように考えている。
◇
こうした考えでは、農業は再興できない。
農業の復興には、食糧自給率の向上を、その基本に据えねばならない。かりに、いまの39%でなく、その2倍の78%を目標にすれば、農業生産は2倍になる。前途は洋々と広がっている。
少子高齢化だから農業は縮小する、というのは、輸出国のアメリカの怒りをおそれて、この事実を正視しない歪んだ俗論である。この俗論は、否定しなければならぬ。
そうして、食糧自給率の向上に貢献する人は、老若を問わず、経営規模の大小をとわず、すべて農政の対象にせねばならない。それが、正論であり、農村共同体の論理でもある。
「戦略」は、この農村共同体の論理を踏みにじり、農村社会を破壊して、競争に至上の価値をおく市場原理主義を押し付けようとしている。これは、拒否せねばならぬ。
◇
付加価値を付けて…というのは、国内の1%の高所得者を相手にする俗論である。農業は、全ての国民に高品質で安価な食糧を供給する、という原点に立たねばならぬ。
また、付加価値をつけて輸出、というのは、立場を逆にして考えねばならない。輸出された国の農業者を困窮に陥れることを考慮せねばならぬ。
◇
ひとつ、付け加えよう。
「農観連携」といって、観光産業と連携して農村を活性化する、という。
だが、全雇用者のうち36.6%(2014年5月、総務省:労働力調査)を占める非正規雇用者にとって、農村を観光する時間的な余裕はないし、心のゆとりもないだろう。そうした労働市場のなかでは、正規雇用者にとっても同じだろう。いま、日本中が歪んでいる。
このような労働市場の状態を改善しないかぎり、この連携は耳に快く響くだけで、絵に描いた餅に終わるだろう。
安倍内閣がいう農村の再興戦略は、その根本から見直さねばならない。
「日本再興戦略」改訂2014 はココから。
(前々回 全農の株式会社化は共販を壊す)
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