同意形成から合意形成へ――着実に進むJAの自己改革2016年11月30日
今年の冬はいつになく急ぎ足。観測史上初とか何十年ぶりとか報道も賑やかだ。あちこちで雪の便りが聞こえ冬本番の様子。とりわけ規制改革会議・農業WGによるある意味乱暴な「農協改革に関する意見」が公表されて以降、協同組合にとって冬の季節が到来かと寒々とした気分になっているのは私だけではないはず。
JAグループは自主自立の協同組合であると自負を持ってこれまで頑張ってきたつもりだが、確信犯的なビンボールに呆れ果てている。11月21日の緊急集会の熱気は冷めることがないだろうと思っているがどうだろう。
そんな中、全中が全国紙等に出した全面広告は、文字だけのわかりやすい内容ではあったが、あえて苦言を呈すれば、もっと主張すべきは主張した意見広告であって欲しかったと思っている。
改革の狙いが何であるか明確になってきているにもかかわらず、誰かに遠慮しているような気がして仕方ない。
※ ※ ※
さて、当組合では組合員との議論を経て「JA松本ハイランドの自己改革」を平成27年1月に決定した。「農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化の実現に向けて」とサブタイトルがついているが、このコラムではその中核をなす「農業者の所得増大」への挑戦について紹介したい。
さらに今年度から第4次長期構想後期中期計画がスタートし「自己改革」への取り組みを一層強化する様々な取り組みをすすめているが、その中核をなすのが「農業元気づくり支援対策」である。平成28年度から30年にかけてJA独自に1億6000万円余を支援していく計画だ。
※ ※ ※
農業で生きようとする組合員の「できたらいいな」というつぶやきを支援していく。すでに取り組みが始まっているが大きな評価を得ていると確信している。
事業は9つの分野にわたっており、このうち主なものはリンゴ高密植栽培導入支援事業、ぶどう産地支援強化事業、樹園地リフレッシュ支援事業、野菜特産生産規模拡大支援事業等であり、規模拡大、定年帰農、新規就農をめざしている組合員へ事業を活用するよう生産部会等とも一体となって呼びかけを行っている。
これらの中で事業効果の一番早くあらわれるものが「野菜特産生産規模拡大支援事業」である。品目ごとに支援金は異なるが10アール当たり最大12万円の支援を受けることができ、計画20haに対し28haの実績となった。これだけの基盤が拡大すれば事業効果も相当なものであり、出荷量物量ベースでみても102%~113%とすべての品目で前年を上回る出荷となっている。
また、リンゴ高密植栽培支援では、苗木代の40%を樹園地リフレッシュ事業では資材費を最大50%支援する等攻めの農業に向かって元気な農業づくりへの取り組みの真っ最中である。
これらが、ばらまきで終わっては何の意味もない。営農指導が個々の農家の進捗管理をきちっと行っていくことは当たり前のことである。
※ ※ ※
もう一方の販売革新への取り組みも重要な位置づけ。組合員の要望は多様化しつつあり、これをしっかり受け止める事業方式への転換を図らねばならない。
現在、アグリビジネスの事業化モデルの構築に向け研究を進めているところであり、独自ブランドの強化はもとより、販売店側のプライベートブランドづくりへの連携や、地域の食に関連する企業とのより深いネットワークづくり等一歩ずつ前進させていかなければならない。
生産部会はもちろん青年部も加わって非常勤理事代表を交えての「販売戦略研究会」で具体化に向け懸命の努力が続いている。
※ ※ ※
自己改革への取り組みは、農業で生きようとする組合員が儲かる仕組みをどんなプロセスで実現していくのかという重い命題を背負いながらの取り組みである。いくつもの連立方程式を解いていく取り組みでもある。
そのためには何よりも組合員との「対話」が当たり前に行われていなければならない。これまでの単なる同意形成のための会議を、一歩進めて合意形成への「対話」を重視した組織運営への転換が重要な要素でもある。
取り組みが始まったばかりであるが、組合員と役職員の意識改革を促すことで「組合員のつぶやき」を大きな提言へ、そして協同組合としての夢の実現に変化させたいと師走を前に決意を新たにしているところである。
重要な記事
最新の記事
-
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日 -
「農林水産業みらいプロジェクト」2025年度助成 対象7事業を決定2025年12月19日 -
福岡市立城香中学校と恒例の「餅つき大会」開催 グリーンコープ生協ふくおか2025年12月19日 -
被災地「輪島市・珠洲市」の子どもたちへクリスマスプレゼント グリーンコープ2025年12月19日


































