【読書の楽しみ】第10回2017年1月25日
★吉田敏浩
『「日米合同委員会」の研究』
(創元社、1620円)
アメリカの軍人と日本の官僚が出席する日米合同委員会が都内で月に2回は開かれるようになって、もう60年以上になります。ただし、ここで「何が議論され、何が決まったか」は何一つ明らかにはされません。事実はずっと闇の中。国会で議員が質問しても、閣僚も官僚もいっさい答えていないのです。
著者はそこで「何が議論され、何が決まったのか」を、アメリカの公文書や入手した極秘内部資料から探ろうとします。残念ながらはっきりとしたことはわからないのですが、そこですごいことが決まっていることだけは明らかになります。
すなわち米軍基地の範囲とか、米軍が一方的に航空管制を敷いている広大な横田空域とか、米軍関係者の犯罪行為の米側に決定的に有利な処理方法とか、いろいろな日米取り決めがここで決まっているというのです。
憲法から航空法のような法律まで日本の法律をまったく無視した密約がこの委員会で決まる、独立国とは言えない日米関係を日本の政治家と官僚は死守しているのだ、と。
先進国では例を見ないような密議、密約の一端を著者は明らかにしますが、本体はなお闇に包まれたまま。国会と国民に課せられた課題は極めて大きいことがわかります。
★山崎朗・久保隆行
『東京飛ばしの地方創生』
(時事通信社、1728円)
この本は5カ月前に出版されたものですが、最近、著者にインタビューする機会があり、地方の活性化にヒントになる内容がたくさん聞き出せたので、本のほうもご紹介することにしました。
著者の言いたいことは要するに、東京のほうばかりを向いていては、地方は活性化しないということです。東京だっていずれは人口が減っていく。だから地方はもっとグローバルな視点を持て、というのが主張です。
地方の農漁村の生活や農産物、加工品、自然などごく当たり前のものに(日本人は興味を抱かないかもしれないが)外国人は感激する。もっと自信を持って地域を世界にアピールしていくべきだというのです。
福岡、札幌、沖縄がアジアなど世界を相手に元気を取り戻している例をはじめ具体例をたくさん挙げているので、もっぱら国内市場相手に苦闘している地方にとっては参考になることが多いでしょう。インバウンド(訪日外国人)拡大へ向けて地方に何ができるかの提言も。
★文藝春秋編
『犯罪の大昭和史』
(文春文庫、1058円)
昭和前期には大事件が続出しました。本書は作家、ジャーナリスト、評論家などが過去に書いた事件の解説やエッセイの類を集めたもので、昭和元年からの20年間は本当に大変な時代だったと改めて感じました。
殺人事件や猟奇的事件も取り上げられますが、個人的には浜口首相狙撃事件、5・15、2・26、横浜事件といった硬派の事件のほうが興味深く読めました。書名は「犯罪」より「事件」のほうが正確ですが、売ろうということだったか。
筆者は五味川純平、尾崎一雄、平野謙など多士済々、50人余に及びます。昭和史研究が進んでいる今となればすべてここで書かれたとおりではないにしても、事件後、間もない当時の臨場感あふれる筆致もなかなか魅力的です。拾い読みされるのも一興でしょう。
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