種子法廃止は消費者問題なのだ2017年4月10日
種子法の廃止問題が、悪名高い規制改革推進会議で、昨年秋に突如取り上げられた。有力委員さえも戸惑うほどの唐突さだったようだ。そして、ほとんど議論をしないで答申に盛り込んでしまった。政府は早速、この答申に応えて法案化し、今の国会での成立を狙っている。なぜ、これ程までに急ぐのか。
ここには巨大な力が陰で働いているとしか思えない。
巨大な力は何か。それは、種子法の廃止によって莫大な利益を得る者の力である。
何故、唐突なのか。それは、それによって深刻な不利益を受ける者が、気付かぬうちに廃止しようと考えているからである。
なぜ、議論をしなかったのか。議論をすると、不利益を受ける者が大多数の国民であることが暴露されるからである。
種子法廃止の目的についての、政府の言い分はこうだ。種子法は、民間の種子開発意欲を阻害している。民間活力を活用すべきだ。そのように政府はいう。しかし、そんな事実はない。ここには、隠された目的がある。だから、それを露わに言えない。
隠された目的は、種子会社による日本の種子の支配である。当初は、日本籍の企業だろうが、やがて多国籍企業に乗っ取られる。
多国籍企業が、日本の種子を支配して行おうとしているのは、遺伝子組替え稲による日本の米の支配、つまり日本農業の支配である。ここに隠された目的がある。それに成功すれば、その後、遺伝子組替え稲を東アジアへ広められる。そうすれば、莫大な利益が得られる。
彼らには、大豆やトウモロコシでの成功経験がある。いまや、アメリカでは大豆の94%が遺伝子組替え大豆、トウモロコシの93%が遺伝子組替えトウモロコシである。遺伝子組替え小麦の栽培も始まろうとしている。世界の3大穀物のうち、残っているのは米だけである。そこに狙いをつけたようだ。
だが、しかし、遺伝子組替え食品には、国民の間に根強い反対がある。だから、この目的は、ひた隠しにしている。
◇
なぜ、遺伝子組替え食品に根強い反対があるのか。それは、安全性が確認されていないからである。
遺伝子組替え食品の推進派は、品種改良も遺伝子を組替えたものだし、こんどの遺伝子組替えも、その安全性は、科学的な根拠(エビデンス)に基づいて確認したという。しかし、せいぜい数十年の間の検査で、しかも、数百の検査項目についての確認にすぎない。
これに対して、品種改良の歴史は、農業が始まって以来の数万年の実証結果として、安全性を確認している。また、それ以後、数百億人の人類が、実際に食べて安全性を確認している。つまり、数百億人の人たちによる、数万年の歴史の検証に耐えてきたのである。
◇
このように言うと、推進派は、科学を信じないのか、と反論するに違いない。
しかし、科学は信じるものではない。たえず疑うものである。疑うことで、科学は進歩してきた。科学を信じていたのでは、科学に進歩はない。このことを、推進派は理解していない。
いまは、数百の項目を検査しているが、今後、新しい検査項目を追加すべきだ、という科学的知見が得られるかもしれない。そうしたことが科学の進歩なのだ。そのことが、まるで分かっていない。
◇
それに加えて、国民の間には、科学的根拠なるものに対して、拭いがたい不信がある。似非科学者への不信である。
古くは、水俣病がある。水俣病被害者は、その原因が、チッソの工場が垂れ流すメチル水銀であると主張し、告発してきた。しかし、長い間その主張には科学的根拠がない、として否定され続けてきた。そうして、塗炭の苦しみに耐え忍んできた。
最近では、福島原発の事故によるガンの多発である。ここでも、その原因が放射能であるという主張には科学的根拠がない、として否定され続けている。
こうした状況のもとで、大企業の利益のために、遺伝子組替え稲で国民を苦しめようとするのが、こんどの種子法の廃止である。
◇
遺伝子組替え稲の栽培は、日本は事実上規制しているから杞憂だ、という人がいる。当面は、そうだろう。しかし、日本はISD条項が含まれるTPPを国会で承認してしまった。だから、遺伝子組替え稲で日本の米を支配しようとする多国籍企業は、日本は遺伝子組替え稲を事実上規制しているので、利益を得る機会を失って損害を受けているというだろう。そうして、日本政府を告発する。裁判の結果は、日本政府が負けて、強欲な多国籍企業に莫大な賠償金を支払うことになるだろう。
こうなるTPPを、国会は承認してしまったのである。
◇
こうした事態に陥ることを回避するには、種子法の廃止を断固として阻止するしかない。さらに、TPPの発効を断念させるしかない。
これは、農業だけの問題ではない。食品の安全性を願う消費者の問題なのである。だが、生協などの反対運動は不活発にみえる。農協とともに、力強く反対することを期待したい。
(2017.04.10)
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