【近藤康男・TPPから見える風景】色褪せるISDSに何故しがみつくのか、日本政府2018年3月15日
昨年9月の総選挙で政権についたニュージーランド(NZ)のアーダーン首相はTPP11の交渉に際して、(1)海外からの中古住宅への投資を禁止できるようにすること、(2)ISDSを全面的に撤廃することを明言してきた。
本年1月末に公表されたNZ政府のCPTPP説明文書では、ISDSについて「(16年2月4日のTPP原協定署名と同日に)豪州との間で締結した、ISDSを両国が互いに除外するという取り決めを継続させる」「これによりNZへの海外からの投資の80%はISDSを行使出来なくなる」更に「類似のISDSサイドレタ-を他のCPTPP参加国との間で結ぶことを追求する」「これらのサイドレタ-は条約として扱われる」、ということを明らかにした。
・18年1月NZ政府のCPTPP説明資料抜粋"Housing and Investment"
・豪州との16年2月4日付及び16年2月6日付けISDS Side letter
◆CPTPP(包括的及び先進的環太平洋パ-トナ-シップ協定)参加各国のISDSサイドレタ-
3月9日までに公表されたNZ政府のサイトでは、NZ政府がISDS除外に関連して締結した豪州、マレーシア、ペル-、ベトナム4ヶ国とのサイドレタ-が掲載されている。つまり11ヶ国中5ヶ国がISDS除外を国際約束としたのである。
NZと豪州のサイドレタ-の内容はTPP原協定署名直後16年2月6日付のものと同じもので、"互いの国の投資家は、互いの国の政府に対して、TPP投資章のISDSによる紛争解決には依存しない"ことを確認している。
マレ-シアとのサイドレタ-は少し違った内容になっている。ペル-・ベトナムとの間のサイドレタ-は未だチェックしていないが、多分同内容だろうと推測する。"投資紛争TPP投資章のISDSによる紛争解決には依存せず、このサイドレタ-に従って解決する"とした上で、"マレ-シア企業対NZ政府の間、NZ企業対マレ-シア政府との間で協議により解決する"、しかし、それでも協議要請の書面を受け取ってか6ヶ月以内に解決されない場合は、"該当国政府の同意を得た上でTPP投資章ISDSによる仲裁に付することも出来る"としている。
・マレ-シアとの18年3月8日付ISDS Side letter
加えて、カナダ・チリがNZと共同でISDSについて18年3月2日付け共同宣言を発表し、3ヶ国はISDSについて"責任ある形で利用する"としている。具体的とは言えないものの、中小企業の投資を保護すること、国家の正当な公的政策の権利の再確認など6項目を宣言している。
・3ヶ国共同宣言
◆EUにおける動きと日EU・EPAにおける投資紛争解決
日EU・EPAではEU側がISDS方式による紛争解決を受け入れることはあり得ないということは、既定の事実となっている。
EU加盟国のほとんどはISDSに反対しており、欧州司法裁判所も17年5月16日のEUとシンガポ-ルのFTAについての判決で、投資分野はEU委員会には決定権が無く、EUと各国とが共有する、とした。また、同裁判所は18年3月6日のプレスリリ-スで、EU加盟国間(今般はオランダ企業とスロバキア政府との投資紛争)の投資協定について、ISDSはEU法と適合しないという判決を下している。(未だ一般化できるかは疑問も出ている。)更に今月スイスがEUとの間での常設の仲裁裁判所の検討を始めたとの報道もある。
◆日本政府の姿勢への疑問:ISDS派は時代遅れの少数派になりつつある
このような流れを見ると、果たしてISDSに拘ることが日本政府、あるいは日本企業にとって時代の流れに適切に沿った選択なのか大きな疑問が湧いてくる。
現在CPTPPの新規参加を検討している国は、韓国、フィリピン、インドネシア、台湾、コロンビア、タイ、(英国)と7ヶ国あるようだ。CPTPPの11ヶ国でも既に5ヶ国がISDS排除、慎重論を加えれば7ヶ国、と過半数だ。そして上記の新規候補の多くもISDS反対の立場を明確にしている国と慎重と想像される国が大半だ。
EU、RCEP参加国などを加えると、確実にISDS派は、少数派、時代遅れ、になろうとしているとしか思えない。
政府は通常国会でのCPTPP承認を目指しているようだ。しかし、国会議員も凍結項目について多くの誤解をしているやの声も聞こえ、新規のサイドレタ-などを含む取り決めに対する認識も聞こえてこない。次回以降も少しCPTPPについて記して行きたい。
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