【小松泰信・地方の眼力】馬鹿の壁は崩壊する2018年6月27日
馬鹿と煙は高いところへ上る。内閣支持率の上昇が示唆するところはその辺だろう。馬鹿の壁の前で、支持率のアップダウンに一喜一憂しないことに決めた。どんどんあがればいい。そして、最後の最後に落下すればいい。格差社会づくりに余念のない連中に、落差社会を堪能してもらおう。大切なことは、自分自身が堕落せぬことのみ。
◆名ばかり留学生の愚行は訴える
全九州高校体育大会における男子バスケットボールの試合で延岡学園高校の留学生選手(今年2月に来日した一年生15歳)が審判を殴った。選手は自主退学し、母国のコンゴ民主共和国に帰国するとのこと。バスケットボール部には他に留学生計3人がおり、再発防止のためフランス語を話せる非常勤講師を雇用し精神面のケアなどを図ることを学園側は考えているそうだ(毎日新聞、6月24日)。留学生同士でしか言葉が通じず、教室でも部活でもまともな意思疎通が困難な環境下にあったことがうかがえる。名ばかり留学生、実はバスケットボール部の助っ人。だとすれば、学校そのもののあり方が問われなければならない。
◆低レベル発言で、晩節を汚せ
「試合が終わるかと思ったらロスタイム5分。長く感じた。この国会延長も同じだ。ロスタイムの間に下手な失点がないように、よろしくお願いします」と、ワールドカップネタと絡ませた麻生副総理の発言。どの口で? そうあの口で。出席議員から笑いが起こったことは、多くの新聞が紹介している。笑うことしかできない所属議員も笑われている。
その舌の根も乾かぬ24日、新潟県新発田市での講演で、昨年秋の衆院選において、30代前半までの若い有権者層で自民党の得票率が高かったことから、「一番新聞を読まない世代だ。読まない人は全部自民党(の支持)だ」、だから「新聞(の購読者増)に協力なんかしない方がいいよ。新聞販売店の人には悪いけど、つくづくそう思った」と語った(毎日新聞、25日)。
もうこの程度では驚きません。元首相にはより低レベルの発言で晩節を汚し、生き恥をさらしていただきましょう。
◆やじ議員に懲罰を
阿呆先輩に引けを取らない愚かな自民党議員。その人の名は、穴見陽一衆院議員(大分1区)。ファミリーレストラン「ジョイフル」の役員にして、大分がん研究振興財団の理事。もちろんこの後辞任。議員辞職も願うところ。
15日開催の、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を審議した衆院厚生労働委員会において、参考人として意見陳述した長谷川一男氏(日本肺がん患者連絡会理事長)が、屋外での喫煙について「なるべく吸ってほしくないというのが患者の気持ち」と訴えながらも、「喫煙者がどこでも吸えないと言うのも分かる」と理解を示した後、「いいかげんにしろ」とやじを飛ばしたのが穴見。
高鳥委員長から口頭で厳重注意を受けたが、「参考人を妨害するような意図は全くなく、喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいた。今後、十分に注意したい」とのコメントを出した(毎日新聞、22日)。
参考人招致は、国政調査権の一つで、専門家や関係者の意見を聴取し法案審議に反映させるためのもの。自分たちと異なる意見を聞くことにこそ意味がある。その意見に対して、「いいかげんにしろ」とは、おまえこそいいかげんにしろ。
そして、差別とは片腹痛い。優先されるべきは、受動喫煙で迷惑を被る人たちを守ること。これ、イロハのイ。
極めつけは"つぶやいた"とのざれごと。誰が信じるか。詭弁、強弁がお家芸の党に安住すればこその不穏当な言辞の数々。
「衆院規則には『議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者』の除名など懲罰規定がある。国会は穴見議員の責任を見過ごすべきではない」(毎日新聞・社説、23日)
◆「世論形成」を重視するなら縁を切れ
党の重珍二階幹事長も、「この頃、子どもを産まない方が幸せじゃないか、誇れるんじゃないかと勝手なことを自分で考える(人がいる)」「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで国も栄えていく方向へいくように、皆がしようじゃないか」、さらには「食べるに困るようなうちは今はない。こんな素晴らしい幸せな国はない」と、政治評論家との対談で、聴衆の質問に答える形で発言した(東京新聞、27日)。
もう、ツッコミどころ満載で、底なし沼の様相を呈している。相手にする気にもならない、と思わせんがための愚考の披瀝か。自民党が、ならず者集団の跋扈する無能・無法地帯と化したことを、議員らが雁首そろえて証明している。
その重珍が少なからぬ影響力を持つJAグループが、食料安全保障の確立に向けた基本政策や自らの行動計画について検討を始めた(日本農業新聞、25日)。リード文には、「農産物の自由化が一層進む中、国内の生産基盤を維持・強化し、食料自給率や自給力を向上させる必要性を提起。国民各層を巻き込んだ議論で認識を共有し、食料・農業政策と地域政策を車の両輪とした政策を示す」などと、記されている。そして、「取り組みには消費者・国民の理解が欠かせないため、農業・農村の価値や課題を共有し、国民的な議論としていく」ための切り口の一つとして「世論形成」を上げている。
本気で世論形成を意識するのであれば、ならず者集団と縁を切り、JAグループとして更正の道を歩み始めることである。
でなければ、堅気の組合員、役職員は浮かばれない。
◆正しく怖がり、壁の崩壊に備えよ
最相葉月氏(ノンフィクションライター)は"正常性バイアス"、すなわち「災害や事故の際、都合の悪い情報を無視したり過小評価したりして、まだ大丈夫だと思い込む心理学の言葉」を紹介し、「それ自体は誰にでも備わっている重要な心理メカニズムなのだが、時と場合によっては大惨事を招いてしまう」と、指摘する。そして「緊急時はどんな人でも正常性バイアスが働くことをあらかじめ知っておくことが、リスク軽減に結びつくよう祈る」として、正しく怖がる習慣の必要性を説いている(山陽新聞、25日)。
大阪府北部地震で小学校のブロック塀が倒れ三宅璃奈(りな)さんが死亡した。「塀の危険性に気付くチャンスが過去5年に3度もありながら見過ごし」「高さが建築基準法施行令に違反する状態だったほか、......必要とされる『控え壁』と呼ばれる補強材もなかった」「(基礎部分とブロックの)接続部分の鉄筋は長さ33cmしかなく、基礎部分に13cm、ブロック部分に20cm埋め込まれているだけだった」(毎日新聞、23日)等々から、間違いなく人災である。
このブロック塀と内閣支持率の上昇が示唆する〝馬鹿の壁〟は同じ構造である。壁の高さにひるむことはない。中身は空洞化した脆弱な代物。しかし崩壊が及ぼす災禍に巻き込まれるのはごめん被る。当コラム、正しく怖がり、警鐘を乱打し続ける。
「地方の眼力」なめんなよ
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