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【近藤康男・TPPから見える風景】TPPから見える地域2018年8月6日

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【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

◆TPPは地域にとって何なのか?

 TPPに代表される"21世紀型"と称される通商協定(以下TPPで代表する)は、多国籍企業の権能と利益拡大のために事業環境を整えること、そのことと裏腹に各国、特に途上国の国民経済の発展、経済先進国も含め地域における経済循環と地域主権を制約するものだ。その点で、日本では農業・食に係る分野に次いで、投資・金融・サービス貿易・電子商取引・知的財産権などへの関心が高いが、地域の主権や地域における経済の循環を規制する規制の整合性・政府調達(以下公共調達)・国有企業(以下公有企業)などの分野の重要性も高い。同様に農産物の市場開放を促す市場アクセスに関する分野も、地域を支える農業を脆弱にする点で地域の均衡ある発展を制約する。
 つまり、電子空間で展開する通商などを除けば、TPPが具現されるのは、暮らしの現場や地域なのだ。

 

◆鉄道・郵便・病院等々、地域の経済・暮らしに必要な基礎的社会インフラ

 今日本では地域の疲弊が大きな問題となっており、"地方創成"がうたわれて久しい。最近では地域の郵便局を地域インフラとすべきと政府が言い始めている。その点では、地域の基礎的社会インフラとして暮らしと地域経済に欠かせない郵便、鉄道、そしてTPPではリストに挙げられてはいないが、日EU・EPAでは対象となりかねない公立病院などを地域で支えることはますます大切な課題となっている。端的に言えば、TPPでは公有企業も商業ベ-スで事業をすることを求めている。そして公的な経営支援ともいえる"非商業的援助"により他のTPP参加国に悪影響を与えてはならないとされる。
 TPPでは発効後に規制対象の公有企業が公表される規定となっており、国会答弁で11社が公表されて(内1社はその後完全民営化で除外)いるが、日EU・EPAではそのような規定は無く、潜在的には規制対象は増える可能性が高い。TPPでも論理的には規制対象となり得る企業は他に相当あると推察する。既に多くの公有企業が海外投資・事業多角化により国内外で他国との競合に関わっており、上述した制約を受ける可能性は現在・将来とも高くなっている。JRの中には数百億円の公的支援を受けている事例もあり、公的支援の制約あるいは、経営・事業の合理化・縮小は、地域の暮らし・経済の疲弊をもたらし、その疲弊がまた経営・事業に負の影響を与える循環が続いている。
 地域に欠かせないインフラである公有企業はTPPの制約から自由であることが必要だ。日本はゼロだが、TPP参加国は、驚くほど多くの公有企業をTPPの規制対象から除外している(附属書Ⅳ)。日本は何故留保しなかったのか??

 
 
◆TPPと地域の経済振興、経済の地域循環(政府調達・公共調達)

 政府調達章は、政府・地方自治体・独立行政法人(教育機関、病院、公共サ-ビス等々)などが一定金額以上の物品・サ-ビスなどの購入をする際に、国内外の企業に対して入札という形での市場開放を求めている。環境配慮、中小企業配慮などもうたわれているが、基本的には市場主義だ。
 筆者は資本に内外の違いは無いと考えており、単純に外国企業を排除する立場はとらないが、地方・地域からの人材・雇用・経済利益の流出を食い止め、再生を目指す観点からは雇用と経済が域内で循環することがますます必要と考えている。その意味では、単なる公開競争入札には、一定の基準として、積極的に地域に雇用を創出し、地域の事業体の参画を促し、経済の地域循環を作り出す内容が、利権としてではなく、正当に織り込まれて然るべきだ。公共調達は国民の負担・税金を使って行われている。TPP,日EU・EPAの公共調達は、我々の拠出金を地域外に流出させる道を広げ、舗装するようなものだ。
 WTOの政府調達協定では日本は率先して調達市場の開放を進めて来たが、それは日本や多くの国が直面している課題に背を向け、地方・地域の疲弊を進めるものだと思う。市場開放の基準となる調達金額も日本が一番低い(参入が容易)。
 さらに日EU・EPAは対象機関、対象サ-ビスをTPP以上に拡大した。政府はWTOの有志国による政府調達協定に準じただけだというが、素直に受け取る訳にはいかない。TPPは16年2月4日に合意署名したが、その政府調達の対象機関・サービスは、14年4月発効(改訂)のWTO政府調達協定に基づく最新17年12月15日の日本政府公表の内容とほとんど重なっている。しかし、17年12月8日に投資紛争解決と個人情報流通を除き妥結した日EU・EPAでは、TPPでは対象となっていない地方独立行政法人について附属書の日本の表1で、18年2月1日の表の法人について対象にしている。TPPで対象となっていない"中核都市"についても、附属書日本の表の2で協定発効あるいは19年7月6日のうち遅い時期に市場開放をするとしている。おまけにWTOの調達協定やTPPで除外している鉄道の安全に係る調達、発・送・配電事業、食品供給サービス(給食と理解)なども対象にしている。

 

◆水道民営化と政府調達章についての考察
 
 TPPやWTO政府調達協定で除外されている"飲料提供サ-ビス"は"上水道事業"ではないかと推察されるが、日EU・EPAでは附属書の日本の表5「サ-ビス」で協定の適用範囲とされている。直営であれば政府調達章の適用がされ、施設の老朽化や人口減が続く中で我々の負担・税金が更に使われる懸念は避けられない。
 一方現在も"コンセッション"(民間企業への運営権の譲渡)が進みつつあるが、通常国会で継続審議となった水道法改正が今後成立すれば、この流れを含む民営化、独立行政法人化が進むことは必至だ。独立行政法人による政府調達についてはTPP、日EU・EPAとも国有企業章は適用されないが、日EU・EPAでは政府調達章は直営方式の場合と同様適用される筈だ。
 逆にコンセッション方式は多分協定の適用対象とはならないものと推察する。しかし問題は一層深刻化する。
 水道事業は地域独占を免れ得ないし、そのことがこの問題の鍵だ。この場合、利益と株主への配当を優先せざるを得ない民間企業は、地方自治体からの利用権の譲渡を可能な限り安い価格で求めるだろうし、地域独占はその後の料金値上げを容易なものにする。つまり、地域住民の資産を劣化させた上に、生命に欠かせない水が人質に取られやすくなるのが論理的帰結だろう。
 地方自治体には、住民を巻き込むとともに経営負担の軽減に努め、必死で水道事業を守って欲しいものだ。

 

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