【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】言葉の破壊の行きつく先は国の破壊2018年10月4日
疑惑の人たちを温存し、疑惑の人たちを呼び戻した新内閣は、まさに役者が揃っている。「詭弁」とも呼べないくらい稚拙なごまかしが常套手段となり、言葉の破壊が繰り返されてきた。
特定企業などへの露骨な便宜供与を指示したことが疑われる人たちが、そのまま政権中枢を担っている。
農林水産業の改革も、「民間活力の最大限の活用」を名目に、ごまかしやカムフラージュの裏に透けて見える目的は共通して、相互に助け合って自分たちの生活と地域の資源とコミュニティを守ってきた人々を「意欲のない非効率な者・組織」と決めつけ、その権利を剥奪して、特定の日米「お友達」企業への便宜供与を貫徹するかのような法律改定、廃止、新法が矢継ぎ早に出されている。
政治とお金の問題で絵に描いたような斡旋利得罪と多くの法律家が断じた方が雲隠れの後不起訴となり、何の説明もないまま復帰した。
自衛隊員が海外で生死に関わる戦闘に巻き込まれている可能性の疑惑もうやむやにされたままである。
TPP断固反対として選挙に大勝し、あっという間に参加表明し(「聖域なき関税撤廃」が「前提」でないと確認できたとの詭弁)、次は、農産物の重要5品目は除外するとした国会決議を反故にし(「再生産が可能になるよう」対策するから決議は守られたとの詭弁)、さらに、米国からの追加要求を阻止するためにとしてTPPを強行批准し、日米FTAを回避するためにTPP11といって、本当はTPP11と日米FTAをセットで進め、ついに日米FTA交渉入りして、これはFTAでなくTAGだと言い張る始末である。日米経済対話やFFRは日米FTAの準備交渉だった。何度も何度も同じような光景(デジャブ)が繰り返されている。
今は、「TPP水準を超える譲歩はしない」と、TPP水準こそ大問題だったのに、TPP水準はすでにベースラインになってしまっている。稚拙な言葉のごまかしが繰り返され、「なし崩し」的に食・農の破壊が続いている。稚拙な「入れ知恵」で政治を操っている一部の官僚も罪深い。
例えば、酪農では、日欧EPAではTPPを上回る譲歩をしているから、それを日米FTAにも適用することは間違いないので、それだけでも、TPP水準を超えることはすでに明白である。
とどめに、「TPP水準を超える譲歩はしない」に対しての稚拙な言い訳を聞かされる前に、これまでの国民・農家ごまかしの総括と反省に立ち、食・農・国土の破壊を停止してもらわないといけない。一度だけでも、正直に話してもらい、建設的な議論の糸口を見いだせないものだろうか。「言葉の破壊の行きつく先は国の破壊である」と歴史は語っている。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】 記事一覧はこちら
(鈴木宣弘教授のよく読まれている記事)
・TAGは「実質FTA」でなく「FTAそのもの」【鈴木宣弘・東京大学教授】(18.09.28)
・【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】グローバル種子企業への便宜供与「4連発」(18.07.12)
・「農協改革」は農協潰し:東京大学教授 鈴木宣弘氏(17.02.12)
・【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】「強い農業」は災害に「弱い農業」? ~9月10日(月)テレビ収録用質疑資料~(18.09.13)
・【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】従順な日本がグローバル種子企業の世界で唯一・最大の餌食にされつつある~種子と関連問題の再整理~(18.09.21)
・【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】輸出促進、GAP、検疫をめぐる議論の「真実」(18.06.14)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(1)2024年4月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(8)【防除学習帖】 第247回2024年4月27日
-
土壌診断の基礎知識(17)【今さら聞けない営農情報】第247回2024年4月27日
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日