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【近藤康男・TPPから見える風景】日米貿易協定はTPPと瓜二つ2019年3月7日

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【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

 前回のコラムの閉めで、今回は「対日交渉目的」について、TPPとの比較を中心に少し詳しく検討したい、と書いた。しかし、具体的に書こうとするとコラムの字数では手に負えないし、前回のコラムで既に重要な点については触れたと思われるので、今回は割愛することをお許し願いたい。

 ただ、米通商代表のライトハイザ-氏は、2月27日の米下院公聴会で、"為替も重要"、"日米貿易協定の緊急性は高い"として3月訪日の意向を発言した。そして一方ノンビり構えている日本政府も押され続ける中で、交渉範囲が訪日の際の協議となると認識せざるを得なくなっているので、具体的な分野だけを以下に紹介したい。

 

◆TPPを超える米国の「対日交渉目的」と「対EU交渉目的」

 中身には触れないが、以下の一覧で共通部分に【 】をつけて見ると、一目瞭然だ。TPPは「前文+30章」だが、日米では直接的な交渉事にはなり難い分野を除くとほぼ22項目と同じだ。勿論内容は多少異なる。多少異るというより、TPPの内容で、合意後も米国議会が不満を持っていた内容や日米交換文書に別途書き加えられている内容が、今回日本にぶつけられることを覚悟したほうがいいだろう。「為替条項」、「一般規定」の問題は前回説明した。
 「対EU交渉目的」の24項目は載せないが、その差は、原産地規則と補助金が独立した分野となっているだけで後の22項目は、勿論内容は異なるが、分野としては全く同じだ。

(TPPの全文、30章:【 】内は「対日交渉目的」と共通する章)
・前文
・冒頭の規定及び一般的定義
・内国民待遇及び【物品の市場アクセス】
・【原産地規則及び原産地手続き】
・繊維及び繊維製品
・【税関当局及び貿易円滑化】
・【貿易上の救済】
・【衛生植物検疫措置】
・【貿易の技術的障害】
・【投資】
・【国境を超えるサ-ビスの貿易】
・【金融サ-ビス】
・ビジネス関係者の一時的な入国
・【電気通信】
・【電子商取引】
・【政府調達】
・競争政策
・【国有企業及び指定独占企業】
・【知的財産】
・【労働】
・【環境】
・協力及び能力開発
・競争力及びビジネスの円滑化
・開発
・【中小企業】
・【規制の整合性】
・【透明性及び腐敗行為の防止】
・運用及び制度に関する規定
・【紛争解決】
・例外及び【一般規定】
・最終規定

 

(22項目の対日交渉目的:【 】内はTPPと共通する分野)
・【物品貿易】
・【衛生植物検疫措置】
・【税関・貿易円滑化・原産地規則】
・【貿易の技術的障害】
・【規制に関する優れた慣行】
・【透明性・(貿易に関する法・諸規則・制度の)公表・行政措置】
・【通信、金融を含むサ-ビス貿易】
・【電子商取引・国境間データ流通】
・【知的財産権】
・医薬品・医療機器の公正な手続き
・【国有・国営企業】
・競争政策
・【労働】
・【環境】
・【腐敗防止】
・【貿易救済措置】
・【政府調達】
・【中小企業】
・【紛争解決】
・【一般規定】
・為替

 

◆全く!中途半端な日米経済対話以降の経過

○日米経済対話:17年2月10日首脳会談で合意
 麻生副総理とペンス副大統領をそれぞれトップに据える経済協議の枠組みで合意。2国間協定の回避と中国牽制を意図したといわれる。

 

【近藤康男・TPPから見える風景】日米貿易協定はTPPと瓜二つ 

 その後18年も閣僚・事務方の会合が続いたがいつのまにかFFR(自由かつ公正で相 互的な貿易)が浮上。
○FFR:18年4月17~18日、6月7日の首脳会談で合意、茂木経済再生担当相とライトハイザ-USTR代表がトップとなっている。
○8月9~10日・日米FFR初会合、前日になっても"議題は宙ぶらりん"、何が協議されたのかもハッキリしない。(18年8月9・10日付日経・農業)
 米国:FTA、自動車、農産物市場、対中対応
 日本:TPPが最善、LNG・防衛装備品輸入、対中対応
○9月25日午前・FFR第2回閣僚級協議、関税協議へ(18年9月26日付農業、日経)⇒
気が付いたら物品貿易協定へ
○日米、物品貿易協定交渉入り(18年9月年27日付日経)
 日米両首脳は25日、NYのホテルで約1時間15分会談した。両者は、農産品などの関
税を含む2国間の「物品貿易協定」Trade Agreement on Goodsの交渉開始で合意した。協議中は米国が自動車・部品への追加関税を発動しないことでも合意した。

 

◆物品貿易??? FTA?

 呼称も内容も中途半端な経過を繰り返して辿り着いた日米交渉だが、安倍首相はじめ日本政府は繰り返し、「物品貿易協定はFTAや経済連携協定ではない」と強調しているが果たして??安倍首相本人が、18年11月5日の衆院予算委員会で自民・山本太一氏の質問に「"農産品などは、私たちの要求以上なら国会を通らないので、出来ない"と大統領に言った」と答弁しているのは国会承認が必要な条約に等しいことを意味しないか?

 そして交渉分野を比べれば、誰が見ても物品貿易とは言えない。幸い3月4日の参院予算委員会で茂木経済再生担当相は、国民民主・舟山氏の日米交渉での情報開示を求める質問に対して、「日本も米国も、交渉途中の段階で同じような形、レベルで国民に説明していきたい」と答弁している。大いに期待したいものだ。

 

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人のコラム【TPPから見える風景】

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