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【坂本進一郎・ムラの角から】第25回 農業は農業である2019年11月21日

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【坂本進一郎】

 農業は「生産の場」か「生活の場」か?
 昨年の今頃の日本農業新聞を見てやっぱりだなと思った。新聞には「『希望の党』の小池代表は農家への補助金を削る。農家は儲ける農業をしてくれという希望の党の公約である」、自民党は農家への補助金を削ってきたが、希望の党も自民党に似て来た。これで、希望の党はやはり第2自民党だということがハッキリしてきた。
 この希望の党の公約を見て色々の事を思い出した。まず農業は「生産の場」であると共に、「生活の場」――手っ取り早くいうと生業(なりわい)――であることである。農業はもともと生業であったものが、農業の中でも織物、味噌、醤油などの加工部門の儲かる部分は農業から独立して行った。そして今日のようにもっとも農業らしい部分が残った。それは生業の性格を引きずっている。農業問題を見る時、「生産の場」であると共に「生活の場」であると言うことが出発点であることを心にとどめなければならない。

 ところが農基法農政は農業を儲かる農業いわゆる工業へと人々を誘導する役割をした。高度経済成長は「資本の論理」が日本列島に浸透して行く役割をしたが、農業もそれに合うように改変しようとした。それが農基法農業であった。だが農業は資本主義のメカニズムに合わない。守田志郎はEU農業を視察した後、「農業は農業である」と言ったという。私もEUの広々とした農業の大地に立った時、そのことを感じた。
 EUが潤沢な補助金を支給しているのを見て農業らしさを一層感じた。補助金が潤沢なのは農業と工業をそのまま競争させたら農工間格差により農業は工業に呑みこまれてしまう。そこで、EUは戸別所得補償などの助成金によって農業を守ろうとしているのである。中山間地ほど資本主義のメカニズムに弱く工業との競争力はないので、助成金は条件不利地対策のように手厚く優遇している。これは19世紀末農業新興国アメリカから安い農産物がヨーロッパに押し寄せてきて、それと対抗するため関税を高くして農業保護を行った。その伝統が今日も続いていて、農業を保護しようと言う気持ちが人々に受け入れられているからだ。だが「農業は農業」だという発言は『農業基法農政』に対する異議申し立てでもある。 

◆多国籍企業に丸め込められた日本農政

 一方、文化勲章をもらった東畑精一は1960年代の規模拡大に大驀進するアメリカ農業を見て、「農業は企業になれる」。農業と工業の違いは何か。それは煙突があるかないかの違いだけだと言い放った。彼は農基法農政推進の立場であった。しかし、東畑の考えは農業を荒廃させ、社会に格差を生み出し、「農業を行う自由」(農業権)(憲法22条)を侵害するに違いない。事実今そうなっている。
 例えば、必要以上に農産物が輸入され自給率が下がれば減反あるいは耕作放棄という形での国内の生産基盤が奪われ,農業収入は減少する。4割ものコメ生産調整(減反)による農業収入の減少は、生産基盤が失われた結果だなとシミジミ実感している。大潟村は入植以来入植総戸数のうち100戸も離農したという。100戸の離農は現実の何物かを語っているのだろう。ここでの流れに沿って言えば国家による農民からの生産手段の奪取は「農民の農業を行う自由」を奪うことになるし、農民の基本的人権を侵害することにもなる。
 貿易自由化の背景には世界貿易の流れがある。ガット時代は相互互恵により貿易交渉は比較的自由裁量の余地があった。ところがWTO時代になると、世界貿易を牛耳るまでに成長した多国籍企業のカーギル、コンチネンタル等にとってガット方式の交渉では儲けがまだるっこい。そこで超大国アメリカ政府に働きかけた。その結果、交渉から自由裁量は消えた。TPPになると「国境」は.もう不要だと言わんばかりに弱肉強食になった。「持久性」の高い農業にとっては、相互互恵の交渉が肌に合っているのに。
 ともあれ、MSA協定(1954年)やガット加入(1955年)以後、食料輸入の基調が農政の根幹になっていった。しかもアメリカはさらに日本に小麦を輸出するにはどうしたらいいか作戦を立てた。それには日本人の食味を粒(コメ)から粉(パン)食に変えさせることだと考えた。
 そこで麦の穀倉地帯である西海岸・オレゴン州ポートランドに小麦販売戦略の前線基地を設けた。そしてキッチンカーが小麦食宣伝のため農村を隅々まで走り回ったことは有名である。すでにMSAは.農業基本法農政を裏から支えていたのである。結局日本人はコメを食べなくなり、食料輸入が農政の根幹になっていく。今小麦の輸入量は620万トン、コメの生産量はたったの750万トン。その分農業の生産基盤は落ちていく。

 最後に憲法問題がくすぶっている。ここでは次のことを注意しておきたいと思う。護憲と農業再生は裏腹の関係にある。上からの目線の改憲でなく、草の根の改憲ならいいが国論を2分する改憲は、国内のまとまりを難しくして動きが取れなするだけなので、改憲論争はやめた方がいい。


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坂本進一郎【ムラの角から】

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