【坂本進一郎・ムラの角から】第27回 やっぱり?ぁー2019年12月18日
日米貿易協定が決まった時、アメリカの強引な「押し売り」と日本はと言えば、日米貿易協定が形だけの国会審議――つまり「国会軽視」で決まっていく。いつものパターンに、「やっぱり?ぁー」と思った。急いだのはアメリカ大統領選挙の日程に間に合わせるためである。ところがである。今回このパターンにおまけが付いた。安倍首相は日米貿易交渉の結果について日米両国にとって「ウイン、ウイン」の合意だったとブラ下がりの記者会見で言ったのである。
しかし「ウイン、ウイン」なら日本もこの交渉からアメリカ並みに利益を受けなければならない。ところがアメリカのみ利益を受け、日本はだれが見ても一方的な敗北であった。これを「ウイン、ウインの合意」というなら、「ウイン、ウイン」という言葉への冒涜だし、そうでなければ安倍首相の神経がおかしい、と思わざるを得ない。
私は「ウイン、ウイン」の言葉を聞いた時、大きな岩にぶつかって、この脅威をよけないかぎり前に進めないという違和感を感じた。多分安倍の手でこの岩をさらわなければ違和感によって、圧死しそうである。
それで私は魯迅を思い出した。魯迅は『阿Q正伝』や『賢人と馬鹿と奴隷』などで辛亥革命当時の中国人の典型を主人公に造形し、俎の鯉(まないたのこい)にして料理した。魯迅の気持ちは辛亥革命当時の中国人に巣くう「阿Q」という奴隷性を糾弾しようとしたのである。そして魯迅は結局奴隷根性の主人公の「阿Q」を小説では銃殺し、この小説から主人公を抹殺してしまう。
だが日本はそうはなっていない。国会審議がアメリカの都合に合わせているということを述べたが、後述のように日本はアメリカの言いなりだ。「阿Q」の「阿」は何々さんの敬称の意味で、従って「阿Q」とは「Qさん」ぐらいの意味だが、「阿Q」はすでに一般的に固有名詞なのでここでも「阿Q」を使っている。
かつて中国は日本から没法子の国とさげすまされた。ところが今「没法子(メイフアーズ=仕方がない)は日本におくられるあだ名になった。唯一なにがあっても車だけはアメリカに抵抗しても守ろうとしている。そして日本の農業は車産業の道ずれにされている。日本の畜産は大丈夫か。
日本の畜産は今回の日米貿易交渉の結果、限りなくゼロに近い関税を仕向けられ、まず畜産業は大打撃か倒産の目に合うかもしれない。人の国の畜産業をひどい目に合わせておいてこれを自由貿易と言えるか。「押し売り貿易」あるいは「荒野の世界」といってもいいのだろう。いうことも言えず、アメリカの言うことを聞き、アメリカを主人公にいただく日本は、アメリカの奴隷でないか。ところがこんなに外部圧力による食料の心配をしなくていいのか。地元新聞も農業県なのに、他人様の出来事のようにさらりと書き流している。一番言いたいことは「独立国」として他人の食料に頼って恥ずかしくないのかということである。「軽農」はもうやめるべきである。
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