【近藤康男・TPPから見える風景】今後の日米「本格交渉」、願望と思い込みで通用するのか?2020年1月16日
◆TPPと「対日交渉目的」は実質的に同じ、米国の狙いは2国間の包括的協定だけ
下記の表を一覧すると、「対日交渉目的」の表題自体がTPPに類似する章は、前文を除く30章の内22章(下線)ある。更に共通する内容を含む章は、「繊維及び繊維製品」、残る7章は、ある意味では日米2国間では重要でないと考えられるものだ。
一方で「対日交渉目的」の項目でTPPに含まれていないのは「医薬品・医療機器の公正な手続き」と「為替」のみ。しかし、「医薬品・医療機器の公正な手続き」はTPPに並行する日米交換書簡(国際約束を構成しない)に同じものがある。ただ、「対日交渉目的」の「一般規定」の4項目の内「日本による非市場国(※筆者注:中国)との自由貿易協定交渉への牽制」を意図する項はTPPには無い内容だが、トランプ政権による新NAFTAと「対EU交渉目的」に含まれている(為替も同様)。
従って「為替」と「一般規定」の一部を除き、TPPと「対日交渉目的」とはほぼ同じものと考えてよい。但し、「対日交渉目的」には「ISDS条項」が含まれず、一方で内容的にTPPを超えるものも含まれているという点でも、2国間協定として合意できれば、米国にとって、TPP復帰は全く無意味なものとなる筈だ。
◆"桜"と全く同水準の臨時国会での審議、願望と思い込みに終始した政府答弁
「米国にとってのインセンティブはある。米国にとって、TPPのメリットは日米貿易協定以上にあるからだ」(渋谷政策調整統括官12月4日外交防衛委員会)
「再協議については、自動車・部品を想定しており、農業含めそれ以外は想定していない」(茂木外相11月6日衆院外務委員会など)
これ以外にも毎回の委員会で繰り返し根拠を示すことなく、「米国の意図を記しただけ」「義務を負った訳ではない」などの答弁が繰り返された。
昨年3月4日の通常国会参院予算委員会で国民民主・舟山氏の日米交渉での情報開示を求める質問に対して、茂木担当相は「日本も米国も、交渉途中の段階で同じような形、レベルで国民に説明していきたい」と答弁したが、その後の情報開示は実質皆無のまま協定は批准された。
米国は18年9月の日米共同声明を受けて、TPA法に基づき12月に「対日交渉目的」を議会に提示し、法的な責任・権限・義務・手続きに基づいて交渉に臨んでいる。そのうえでの「本格交渉」発言なのだ。日本政府のいい加減さとは本気度のレベルは雲泥の差だ。
「対日交渉目的」の内容については、次回以降のコラムで記すこととしたい。
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