【坂本進一郎・ムラの角から】第30回 新型コロナウイルス騒動で、私は二つのことを学んだ2020年3月20日
今回のウイルス騒動は、われわれの日常生活に二つの反省事項を突き付けた。二つの反省事項とは何か。一つは、やたらと木を切らないこと。二つ目は国の予算は、国民の希望にそうように執行することである。順番に説明していこう。
(1)やたらと木を切るな
新型コロナウイルス病ではウイルス菌が人間の体内で増殖し感染症(病気)を次々引き起こし悪さをする。それなら細菌とウイルスは違うのか。断然違う。細菌は細胞を持ち、人間を含めてわれわれ動物の体の構成体であり、細菌自身は生きていくために栄養を摂取しエネルギーを生産している。つまり細菌は生物なのだ。一方ウイルスは細胞を持っていない。野生動物に寄生し4~5日生きるものもいれば3日で死ぬものもある。このように人間の体内に入ってから細胞がないので寄生し、増殖し、感染症を起こしている。ウイルスは細胞を持たないので生物とは言えない。これが細菌とウイルスの違いである。このためウイルスは森林を失えば、森林を住み家としていた宿主の野生動物を失うことになり、廻り回ってウイルスは住み家を失うことになる。極端に言えば森を失えばウイルスは森林外に弾き飛ばされることになる。
菌は人間の歴史と同じように古い歴史を持つ。菌も長い歴史の中で、無名のまま消えてなくなった菌もあったであろう。菌の世界もグロバリゼーションの世界であり悪貨は良貨を駆逐してきた。今残っている菌は元気のいい菌なのであろう。
武漢の新型コロナウイルス菌はどこから来たのか。蝙蝠(コウモリ)でないことははっきりしている。コウモリは単なる伝播者に過ぎないからである。むしろ逆に迷惑をこうむっているかもしれない。森は湿潤で潤いがある。だから森を大切に保全していれば、野生動物も野生動物を宿主とする新型コロナウイルスも、今までどうり湿潤の世界に囲まれて、秩序正しく暮らしていただろう。だが森林を伐採したらどなるか。森林伐採により住処としていた野生動物が森林を離れ、次いで野生動物を宿主としていたコロノウイルス菌もこれまた森を離れざるを得ないに違いない。略図化して言うと森林伐採はコロノウイルス菌の森林外飛散に結果するであろう。それが今回の新型コロナウイルスではないか。
今月に入って早々(3月4日ころ)テレビは感染の予防の仕方を放映した。このときは(今も)治療法がわからず不安と緊張が全国を包んだので、皆熱心に耳を傾けた。テレビは感染予防の仕方を次の通りアドバイスした。「コロナウイルスにとって住み心地のいい場所は、風通しが悪く、大勢の人が集まて、一緒に行為を行っているときで、この瞬間は感染されやすい」。この話を聞いて私ははっと思い当たった。アドバイスを言い換えるとコロナウイルスにとって住よい場所は、体育館のように「密閉空間」に「不特定多数」の人が集って、集会や講演を聞いたりしている風景の時である。ところが多くの人が樹々のように立ち上っている風景は森のように見えてくる。かつてエイズが流行したとき、流行の震源地はアフリカで森を媒介していることがわかった。次々グローバルな伝染病が発生するのはなぜか。無神経に木を切るからではないか。
中国通で私の友人は私に中国を評して「中国は自然破壊の先進国だな」と言っことがある。考えてみれば万里の長城沿い6000キロの森林伐採は、森林破壊であろう。まだある。中国本土の木を切って、本土を丸坊主にするのに2000年を要したが、満州国土を丸坊主にするのにたった100年であった。日本人は植林の労をいとわないが、中国人は消極的のように見受ける。この差異は日本人は水田民族で中国人は畑作民族だからであろうか。水田は水の涵養を必要とするが、畑作地帯は木を切れば畑の用地になるのである。
(2)今こそ直接支給性を
新型ウイルスほど注目を浴びっていないが、新型コロナ騒ぎで地道ながら注目されえたのが直接給付制である。なぜ注目されだしたのか。何と言っても
近隣諸国に比べて新型コロナ対策費があまりに少ないうえ、対策費の執行が後手後手なので政府は何をしているかという不満を表面的にでなく、腹の底から重々しく表現しだしたのである。不満の気持の中には言うべきことがあれば、言わなければならないという決意のようなものも交じっている。
これが腹の底から気持ちを重々しくしている理由である。
極端な貧富の差から1929年に大恐慌が起きたが、ルーズベルト大統領ははニューデーる(新規まき直し)政策を掲げて、人々の購買力を恢復させるため、その一環として農民から購入の農産物価格を引き上げた。このようにアメリカは個人を対象に政策を組んだ。日本ではいまだかつて個人を対象にしたことはない。そのため農民問題と言わず農業問題と称している。ここには農民をマスとして論じようとする雰囲気が感じられる。
経済主体を大企業から個人へ。この変化は可能か。ウイルス騒動が変化を促進するのか。それとも画餅に終わるのか。――それなら、今 大企業と個人の間のどの辺にいるのか。それを表す言葉を拾ってみよう。
(イ) コロナウイルス資金を捻出できず困っている。――これは2月初めの自民党筋の話だが、この陰に何がるのか。
(ロ) この背景には次のような事情が横たわっている。救済資金は個人へのバラマキになるから、それはできない。この勢力のお蔭で我々も戸別所得補償制度が棚上げのままで困っている。
(ハ) しかしコロナウイルスの補償患者はマスでなく個人個人だ。コロナウイルスの攻撃で「個人への道」に風穴があけられるか。自民党は小出し融資はバラマキになるといいながら、産業界に小出しに資金救済を行っている。産業界と小出し融資は手慣れたものなのであろう。
――この矛盾したやり方に財界と自民党政治は一体だという血の通った話が聞けて今回のウイルス騒動はためになった。
――大多数者が困っているとき、その人たちに向けて救済資金を出すのが政治ではないかと思う。
――小出し資金救済が後手後手を招いたようだ。
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