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「国際収支」報道を見て思う【坂本進一郎・ムラの角から】第36回2020年6月18日

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2020年6月9日の新聞を見て驚いた。前日財務省は速報だが国際収支を発表した。このところ、貿易収支は赤字が続いており、貿易の揚がりで農産物を購入している日本人としては、「商品」の輸出・輸入の差額である「貿易収支」に敏感であってもいいように思う。それなのに9日付け新聞は申し合わせたように、一紙を除いてこの出来事には無関心を装い、報道はなかった。

今回の発表は月ごとでありしかも速報である。だから各社とも無視したのかもしれない。しかし今年に入りコロナウイルス猛威を振るい、世界経済は減速し日本もその例外ではなかった。だから日本経済の指標はどうだったか知りたいというのは、当然であろう。そこで新聞を見て驚いたのは、第一に貿易収支とサービス取引を含めた「経常収支」の黒字額は前年同月の84%も下落したのに一斉にその事実を無視したのである。この「一斉に」を見て、私は「前見て」「横見て」「後ろ見て」のムラの原則を思い出した。ある時秋田のマスコミ人と雑談をしていて、ムラのことに話題が行ったときその人は「私は朝他社の新聞を見てわが社と同じことがかいてあると安心する」といったものである。

新聞を読んで驚いたことの二つ目は、上述のように貿易で稼いだお金で農産物を買っているのだから、農産物の輸入状況に敏感であるべきである。それが財務省発表の84%もの黒字大幅縮小も無頓着のように見える。無頓着は自給率37%と表裏一体としか思えない。
貿易収支黒字は日本国内産業が、好転していることを示している。だが日本は産業の盛衰がイギリスに酷似している。まず1815年地主・農民を守るため「穀物法」を制定した。しかしその30年後「穀物法」を撤廃した。イギリスは「世界の工場」としてイギリスの資本家にとって千年至福の時が来たからである。
日本でイギリスの世界の工場の歴史位相を探せば1961年の「農業基本法」の制定された時にあたるであろう。しかしイギリスの世界の工場の地位も100年しか持たなかった。その原因の一つはドイツの駆逐艦の攻撃で食糧不足になったことである。しかもイギリス国内産の基盤は弱い。そこで国内生産の再生に行きつく。そこで1947年戸別所得補償法など農業保護を大胆に取り入れた農政に転換した。
世界の工場も100年しか持たないとすれば、日本の場合も計算上はあと40年で日本の隆盛も終わる。事実今日国際収支は加工貿易収入より、投資収入のほうが多くなった。これは世界の工場を中国に明け渡したことを意味する。
投資収入で思い出すのは、南ア連邦のアパルトヘイト<人種隔離施策に対する各国の対応だ。イギリスは南ア連邦に一番かかわりを持っているはずなのに、ずっと沈黙を押しとうした。なぜ沈黙なのかわからなかった。マスコミもそういう視点で報道していないせいもあった。後で気が付いたのは、イギリスは南ア連邦には多額の投資を行っている。そのため態度を表明して、投資収入を失うことを避けたのであろう。この話は資本主義から活気が失せてなんだか暗い感じがする。レーニンは『帝国主義論』で金利生活は何倍も収入を得ている。「寄生性」「腐朽性」こそ帝国主義の本質だという。それが暗いイメージを作っているんだろう。日本もそういうめぐりあわせが訪れるのだろうか。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

坂本進一郎【ムラの角から】

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