500産地品種16万俵もの売り玉が提示されたFAX取引会【熊野孝文・米マーケット情報】2020年10月13日
10月8日に開催された日本コメ市場のFAX取引会では、参加者に送られた売りメニューには500産地品種16万俵もの売り玉が提示された。新米の出盛り期とは言え、まさに売り先行で俵の圧力が一段と強まっており、1件当たりのロット数が多いこともあって買いが入らず、成約量は10分の1程度に留まった。

FAX取引会が開催される前から仲介業者に刈取りが本格化し始めた北海道や東北から2年産米の売り打診が日に日に増加、成約した途端に次の打診価格が下がるという有様で「買い手に嫌な思いをさせる」という取引状態が続いていた。産地では新米の刈取り最盛期であるにも関わらず、地元卸のなかには買い止めしたところもあるなど買い子が農家に行かないというケースもあるという。あまりにも下げのテンポが速すぎて利ザヤを稼げないのだから集荷に走り回っても無駄足になりかねない。目下の最大の焦点はどこで下げ止まるかにあり、それを知るには格言通り「相場に聞く」しかない。
FAX取引会当日に成約したものは、青森つがるロマン1等1万2250円(東京持込 税別以下同)、秋田あきたこまち1等1万3100円(1月末まで)、山形つや姫1・2等1万7350円(2等▼500円)、山形つや姫1等JA1万7950円(11月まで)、福島中通コシヒカリ1・2等1万2300百円(2等▼300円、12月まで)、福島中通コシヒカリ1等1万2550円(5月まで)、福島中通ひとめぼれ1等1万2100円(11月10日まで)、茨城ひとめぼれ1等JA1万1900円(11月30日まで)、茨城キヌヒカリ1・2等1万1600円(10月末まで 2等▼300円)、群馬あさひの夢1等1万1450円(1月29日まで)、千葉コシヒカリ1・2等1万2350円(10月末まで2等▼300円)、千葉ふさおとめ1等1万2200円(10月末まで)、新潟佐渡コシヒカリ1等1万5980円、新潟魚沼コシヒカリ1・2等1万8000円(12月末まで 2等▼300円)、新潟一般コシヒカリ1・2等1万4900円(10月末まで2等▼300円)、元年産新潟魚沼コシヒカリ3等1万3700円(12月末まで)など。
こまごまと受渡期日やJA玉か商系玉かまで示したのは、先行きの相場動向を知るうえで重要な意味があるからである。FAX取引会の売りメニューの中には、受渡し期日として長いものでは来年3月末や6月末と言うものや一番長いものは来年9月末と言うものもある。取引会終了後の売り手と買い手のやり取りの中でも秋田あきたこまちや関東のBランク米の商談で年明け以降の価格交渉が行われた。買い手の卸としては保管料が加算される全農系統の事前契約より、保管料が必要ない先渡し条件で契約した方が得であることは言うまでもない。卸の中には年明け以降受渡しする玉の代金を今支払っても良いというところさえある。卸に言わせると「保管経費に比べれば銀行金利などタダみたいなもの」ということになる。ついでに運賃のことまで記すと関東玉を九州まで運ぶ場合、一般的には1俵900円程度掛かるが、中には589円に抑えている業者もいる。これは契約運送業者が帰り荷を送り荷の場所まで持って来る仕事があるためだが、運賃を抑えられれば現在の相場で九州まで運んで十分に成約が見込める。
最大の要素である全農系統玉との価格差については、2年産全農相対基準価格の主な銘柄は、北海道ななつぼし1万4600円(1等建値東京着税別以下同)、宮城ひとめぼれ1万4300円、秋田あきたこまち1万4300円、山形はえぬき1万4000円、新潟一般コシヒカリ1万6100円といった具合である。前年産相対基準価格よりは500円程度値下げしているが、FAX取引会の成約価格と比較すれば大幅に高い。では全農各県本部はこれ以上価格を引き下げられないのか? というとそんなことはない。県本部の委託共同計算書をみると主食用うるち米の年間計画の販売単価を税込みで1万3701円に置いて収支計算している産地もある。全農相対基準価格はあくまでも基準価格であり、相手先卸との交渉で柔軟に設定できる方式に切り替えたため基準価格マイナス10%と言う価格で購入出来る卸がいても不思議がない。ただし、それでも実勢価格との比較では割高感がある。分かりやすく言うと全農相対基準価格マイナス10%の価格より安ければ商系玉や農協直売玉を拾っていけば良いわけで、それが薄くなる来年3月ごろが相場のターニングポイントになるというのがひとつの見方になる。2年産米の作柄が確定した以上供給面での変動はないため値上がりを期待するなら消費者にコメを食べてもらうしかない。
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