21年産米が需給均衡できるか米作の「正念場」だ【坂本進一郎・ムラの角から】第39回2021年1月6日
12月21日の野上農水大臣の談話を見てびっくりした。過剰米の重圧を避けるには転作が必要だ。転作への転換がスムーズに進まないと来年は大変なことになるというのである。
大変なことの意味も含めて、この辺のことについて農水相談話は次のように言う(語句一部修正)。
「残念ながら、国内需要の減退が今後も続くと見込まれる中で、今年産の需給については、需要減少に見合った作付面積の削減が1万3000ヘクターのみと進まず、さらにコロナウイルス感染症の影響などによる消費減退も加わり、在庫の過剰に直面しています」
「需給と価格の安定を図るためには、来年産(21年産)の主食用米について、全国で過去最大規模の6.7万ヘクタール(36万トン=ミニマムアクセス米の約半分)もの作付け転換が必要です。これが実現できなければ、需給と価格の安定が崩れ、危機的な状況に陥りかねません。まさに正念場を迎えています」
さらに野上農水相は言う。
「近年需要が高まりつつある国産麦・大豆・加工・業務用野菜等の高収益作物、加工用米の生産拡大などを支援してまいります」
野上農水相は彼なりの危機意識から畑作転換を熱心に、農民に呼び掛けている。おそらく農相の危機意識は彼が富山市に生まれ、魚津に端を発した1918(大正7年)の米騒動を聞き知っていたので、臨場感を持ち事件の話のことを記憶にとどめていたのかも知れない。そのことが彼のバックにあって転作転換を呼び掛けているのかもしれない。確かにそのことは理解できる。しかし幾つか引っかかるところがある。
一つはコメ過剰問題を農民だけに押し付けていることである。個々の農民が米の需給を見通してコメ作りをやることは不可能だ。綱渡りになるからだ。
そこで二つ目の問題は、全体を見通しかつ需給を計画的に差配できる機関が必要だ。なぜなら農業生産は豊作凶作があって計画的に出荷できるようにコントロールできる機関が必要だからである。この前までの生産調整と食管法が対であったことを想い出せばいい。マスコミの役割も重要だ。今回農水相談話があったのに東京のA紙は無視した。
三つ目の問題はミニマムアクセス米の問題だ。ミニマムアクセス米は自由貿易の替り門戸を開いたと思われているが、さにあらずアメリカの押し売りによって、毎年約40万トン買わされているもの(ミニマムアクセス米全体で77万トン、そのうち半分はアメリカの利権下にある)。アメリカ以外にオーストラリアなどからの輸入をいれると85万トンにも達し 日本列島の米は踏み潰されているようなものだ。これでは政治主権を失ったも同然だ。そこで日本国内が過剰になって受け入れ能力を失ったときは、将来輸入するから今回は輸入をストップできないかという約束を結べないものか。どうせ相手国は自由貿易でなく押し売り貿易で稼いだのだから。
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