20世紀末の農村とパチンコ屋【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第190回2022年3月31日
1980年代、パチンコ台は大きく変わってハンドルに手を添えるだけで玉を打つことができるようになった。だから玉の射出頻度はすさまじく速くなった。0.6秒に1発なのだそうである。
実を言うと、台がこのように変わってから私は一度もやったことがない。これではあっという間に終わり、暇つぶしなどにはならないからだ。もう一つ、田舎の駅前からパチンコ屋がなくなったからでもある。世の中ちょうどそのころ車社会になり、駅を利用する客(=パチンコ屋を利用する客)が減ったからである。
そして駐車場を備えた大きなパチンコ屋が町の真ん中、田畑の真ん中に建つようになった。
田畑の真ん中のパチンコ屋には農閑期の暇つぶしに農家のご主人も車で通うようになった。
ある農家の方と雑談をしているときのことである。
「先生、パチンコ通いも農業に役立つんだよ」
「はあ?」
たまたま隣に座った客と仲良くなった、雑談のなかで先日ハウスの一部が雪で壊れた、困っていると口説いたところ翌日家に来てアッという間に直してくれた、いろいろな職種の人と友だちになり、いろいろな情報が聞ける、本当に勉強になる、こう言うのである。異業種の人と仲良くなるということはたしかにいいことなのだが、それがパチンコを通じてとはとちょっとひっかかる。
しかもパチンコは、依存症とか児童の車内放置とかさまざまな社会問題をひき起こす、やはり博打は博打なのだ。
そのころ、米+メロンで名声を馳せていた秋田のある村でメロンの暇な時期を利用してチューリップ栽培を始めた。なぜ始めたのかと聞いたら、農協の営農部長はこう言う、「冬の農閑期になるとみんなパチンコ屋に時間を潰しに行き、金をパチンコ屋に貢いでくる、それで『どうせ咲かないチューリッブの花をパチンコ屋で咲かせようとするなら、ちょうど(メロンの農閑期で)空いているハウスの中で咲かせろ』と勧めたのだ、けっこういい値で売れている」、思わず腹をかかえて笑ったものだった。
21世紀初頭、北海道に数年間住み、また東北に帰ってきてしばらくぶりに農村部に行ったときのことである。家内の運転する車の中からまわりを見渡していてふと気がついた、駐車場に一台の車も止まっていない、あるいは荒れはてたパチンコ屋があちこち見られるのである。廃業したようだ。
過疎化が進み、公共交通機関はますますなくなり、高齢化が進んで自家用車に乗ることもできなくなるなかでパチンコ屋の客が減り、経営が成り立たなくなったのだろうか、パチンコ店はなくなってしまったのである。もう一つ、カラオケボックスもなくなっていた。その代わりに何か新しい店や建物ができるわけでもない。
無人のパチンコ屋・カラオケボックス、何ともうら淋しい眺めだった、胸が締め付けられる感じだった。
仙台の町の中でもあまり見かけなくなっていた。騒音公害で騒がれたこともあるのだろう。市内の盛り場で私がその存在をを知っているのは一軒だけ、かなり大きいが、外見ではパチンコ屋と言うことがわからない、しかも騒音も少ない。だからして、昔のようにわからないだけ、本当はかなりあるのだろう。パチンコ店のテレビのCMがすごく多いことからもそれがわかった。といっても、一見しただけでは何の宣伝かよくわからない。パチンコという言葉を出さないからだ。でも愛好者には見ただけでわかるのだろう。あれだけ何回もCMが出るのだから、全国チェーンの大手なのだろう。
昔と違う巨大パチンコ店、今はどういう人が入っているのだろうか。どれだけの入りがあるのだろうか。
そのCMを見てたまにそんなことを考えるようになったころ、東京にいる孫がパチンコ店のアルバイトをしていることを聞いた。そこで東京に行ったとき、早速パチンコ店の近況を聞いてみた。
驚いた、パチンコ店は高齢化に対応して「進化」しており、また流行ってもいた。次回それを紹介させていただこう(もしかしてすでに皆さん方ご存じのことかもしれないが、そのときにぱお許し願いたい)。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日