【JCA週報】 第2弾の「改悪」にどう闘って行くか(2016)(冨士重夫)2022年11月28日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「にじ」2016年臨時増刊号「農協改革を協同組合から問う」に、当時のJC総研理事長であった冨士重夫氏が執筆された「第2弾の「改悪」にどう闘って行くか」です。
第2弾の「改悪」にどう闘って行くか(2016)
JC総研理事長 冨士重夫
改正農協法が4月から施行された。附則には5年間の組合員実態調査を行ったうえで准組合員の事業利用規制のあり方について、結論を得ることが盛り込まれている。
政府与党主導による今回の「農協改革」はあくまで第1弾であって、第2弾、第3弾の改悪を今後迫って来るものと考えられる。
「農協改革」の背景にある考え方は、つき詰めれば①株式会社、他業態とのイコールフッティング、②JAの総合事業は分離解体すべき、③JAは農業者による協同組合に特化すべきという3点に整理されると思う。
JAグループの将来も含めた立ち位置は、「食と農を基軸とした地域に根差した協同組合」であり、協同組合による総合事業体と准組合員による自由な事業利用を今後とも担保して行く法的枠組みの確立が必要である。
それでは、なぜ①協同組合で②総合事業で③農家だけでなく准組合員の自由な利用が必要なのかを、現場の検証を踏まえ具体的に論証できるように闘いの準備を整えておかなければならない。
(1)利益・配当優先の株式会社は赤字や儲からないと直ぐに撤退する短期主義である。農業の営み、人々の暮らしは、いっとき良ければというものでなく長い時間の中で成就する。JAの現場である地域農業、地域経済は協同組合による持続可能性を踏まえた事業展開が根本であり、最も効果的であるということを論証し、具体的に見える化する必要がある。
(2)地域の農業、暮らしを支える事業のうち、農産物販売、生産資材、生活購買、介護、福祉などの事業は極めて収益性が低い。組合員のニーズに応じて持続可能性のある事業として実施していくには、収益性の高い信用・共済事業も含めて主体的にJAが総合事業で展開できなければ地域の活性化、創生はできない。この場合、連合会との関係における代理店化の問題や、金融の規模論における1県1JAの課題についても、検証・論証し、具体的な数字で示すことが必要である。
(3)地域農業従事者・農村人口の減少、過疎化・高齢化の加速化という地域の状況の中で、農家を核としながら地域に住む全ての住民も自由にJA事業を利用することが、総合事業による収益性を確保し、地域の農業振興や暮らしを支える事業が展開できるのであって、利用制限をすれば成り立たないことを数字で論証する必要がある。
また、この場合におけるJAの利用高配当、剰余金処分の具体的な方法や不分割積立金みあり方など、協同組合として、総合事業体として、地域住民の組合員に対してJAのアイデンティティーに基づく最善の仕組みを確立する必要がある。信用・共済事業などの利用を自由にすることに対応した整えるべき条件整備の具体的内容や、准組合員への共益権の付与のあり方なども含めて検証、論証する必要がある。
以上の様な論点を提示しつつ、協同組合の側から、いわゆる今回の「農協改革」を、どう乗り越えていくのか、論稿や実践報告を含めて明らかにしていくことが、協同組合研究誌にじの使命である。
この使命に基づき、にじ64年の歴史において初めて増刊を企画し、これから3年間にわたり、第2、第3の改悪に対峙して闘うフォース(力)を提供していく所存である。
JC総研 協同組合経営研究誌「にじ」2016年 臨時増刊「農協改革を協同組合から問う」 より
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