JAも積極的に企業事例に学び、活かそう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年3月28日
超優良企業を徹底的に学ぶアメリカの「国家品質賞」

前回の本コラムで、1992年に公表されたアメリカの「SCANSレポート」を紹介した。アメリカの国際競争力の低下という危機感から、大統領のイニシアティブによって、ビジネス教育を国家戦略に位置づけた。そこでは、企業の現場に求められる能力を明確化し、産学連携により学校教育の段階から人材養成を行う戦略を示した。現在のアメリカのIT企業の隆盛やIT産業の革新のスピードと広がりは、この戦略の成果とみることができる。
この「SCANSレポート」とともに、もう一つ取り上げなければならないのが、アメリカの優良企業表彰制度である。当時のレーガン大統領が1987年に創設した「マルコム・ボルドリッジ国家経営品質賞」(以下、MB賞)である。マルコム・ボルドリッジは、当時の商務長官の名前。この賞が、後のアメリカの多くの企業の変革に大きく寄与したことは間違いない。
アメリカは、1980年代前半の経済活動の大幅な落ち込みの原因分析と根幹的な対策の確立に国を挙げて取り組み、従来のマネジメント・スタイルを大きく変える手法を開発する。これがMB賞誕生の背景である。
といって、制度の概要を日本語訳で読んだのは、3年後のこと。その時、ショックだったのは、紹介された企業事例の内容だった。アメリカの企業経営の最大の特徴は、ビジネスのダイナミズムにあると思っていたのに、レポートの中心は顧客志向のビジネスが中心だった。
のちに、この受賞企業の事例に共通しているのは、「顧客満足」と「経営品質」だと教えられる。経営資源の効率性、収益性、生産性などの数値の高さを軸にした経営のダイナミズムではないとすれば、何が評価の対象なのか。疑問に感じたのは、私だけではなかった。新しいビジネス、新しい企業経営のモデルが提起されている。
ちなみに、表彰対象の企業組織の審査ポイントは、「経営品質(TQM:Total Quality Management)」の考え方に基づき、リーダーシップ、戦略策定、顧客・市場の重視、情報と分析、人材開発とマネジメント、プロセス・マネジメント、業績といった7部門で採点されるという。
顧客満足の向上と経営品質の改革で高い活力を
大きな話題を集めたのは、新しい企業評価のキーワードに加えて、MB賞の受賞式は、ワシントン・DCのホワイトハウスで行われ、大統領が直接表彰することだ。アメリカの本気度が理解できる。
このMB賞をキッカケにして、アメリカの企業は徹底した「顧客志向」の経営、「顧客満足」のビジネス、「経営品質」高い経営の革新という新しいテーマとその実現のためのビジネス戦略、IT戦略、マーケティング戦略などの開発に取り組むことになる。1990年代以降のアメリカの企業活動の復調にMB賞の果たした役割を高く評価する研究者・経営者は多い。
ちなみに、このMB賞の成果を見て、日本も「日本経営品質賞」という制度が創設される。1996年、9年後のことである。
ところで、アメリカの企業活動の変革に大きな役割を果たしたMB賞だが、その理由の一つに、受賞したすべての企業の資料・データが公表され、無償で閲覧できることをあげる人が多い。ページ数にして60~70頁のレポートであるが、何より、顧客が満足する経営品質の改革をトップがリーダーシップを発揮して、創造的かつ継続的に全社で展開し、その内容を客観的に評価するという経営システムが紹介される。
とはいえ、不勉強な経営コンサルタントには、「顧客志向」と「顧客満足度」、そして「経営品質」がどのように連結し、マーケティングとマネジメントがどう展開されるのか、理解できない状態であった。
そんな時期に、MB賞を92年、99年と2回受賞した企業が、日本にやってきた。1997年のこと。大阪で新たに開業した「ザ・リッツ・カールトン大阪」というホテルである。客室292室、従業員600人。このホテルの誕生で、アメリカでのMB賞の受賞関係資料が配付され、勉強会が行われたものである。
1泊5万円を超える出張旅費は出ないし、予約も取れない、そんな時期が続いた。入手したホテルの従業員が携帯している「クレド・カード」に記載された内容は、大きな衝撃であった。クレドは信条、信念などの意味だが、「サービスの3ステップ」「モットー」「20のベーシック」「従業員への約束」などの"ゴールド・スタンダード"などは、サービスという大雑把な概念から、顧客満足という具体的なサービスの品質を高める行動を科学的に表していて学ぶ点が少なくなかった。
このホテルの資料をもとに学習会から画期的なキーワードを学んだ。人の能力を引き出す「エンパワーメント」と、顧客満足を高める関係論の「ホスピタリティ」である。この2つのキーワードは、簡単に定義できない。いまだに、明快な説明ができず、アクションとしての提示に迷うことしばしばである。
人の組織である協同組織にとって、この2つのキーワードが、いかに重要であるかは、いまも変わらない。
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