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マーケティングの「4C」で行動変革、実績につなげよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年8月29日

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1957年「日本にマーケティングがやってきた」

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

戦後の経済白書で「もはや戦後ではない」と日本政府が自信を覗かせたのは1956年のこと。当時のGNP(国民総生産)の伸び率は平均8.5%だった。終戦から10年余りのことだから、驚異的な復興を実現したわけだ。
順調な経済復興が進むが、もっと諸外国に学ぶべしと、敗戦から5年後には、欧米への企業視察団が出かける。コスト削減、経営組織、生産管理、マーケティング、労使関係などをアメリカの企業に学ぶ。

諸外国への視察で受けた新鮮な刺激を日本の企業経営に活かしたいと、政府の協力を得て1955年に日本生産性本部が設立される。経営者の多くは、遠い先の日本経済の成長や企業の隆盛を視野に入れていたのだろう。そんな持論を力説する私のコンサルの先輩がいたが、当時の経営者たちの強い思いは凄まじかったという。

ところで、海外への視察活動で、多くの経営者が関心を寄せたのは「マーケティング」であった。新鮮で、耳新しく、急いで学び、導入したい、と強く感じたようで、市場調査や製造管理、価格決定、プロモーションなどの一連の活動普及に向け、1957年には日本マーケティング協会が設立される。

マーケティングが日本にやってきて、企業活動に変化が生まれ、成果も大きかった。モノやサービスを顧客に売り、利益を得る、販売や営業活動などのセリング(商品の営業活動)が中心。当時は三種の神器のように、商品を作れば売れる時代。大量生産・大量消費がこれを後押ししたのである。

この初期のマーケティングは「4P」といわれ、製品・サービス(Product)、価格(Price)、流通チャネル(Place)、広告・販売促進(Promotion)が活動の中心だ。
これが、商品を売るためのマーケティングの論理、技法と理解する人が多かった。

感性を高め、マーケティング論の「進化」を取り込む

マーケティング論の大家であるフィリップ・コトラーの論文に、こんな一節がある。「日本は経済先進国だが、マーケティング後進国である。バブル崩壊という大転換期でも変わることができず、いまだに高度成長期のような環境を前提とした、新興国型のマーケティングを続けている」と。市場調査や商品、サービスの販売促進はマーケティングだが、それは機能の一部に過ぎないという。

その代表的な理解が、マーケティングはセリングである、というもの。セリングは、企業サイドの発想で、商品をいかに消費者に営業推進するか、あるいは、売り込むか、である。消費者への一方向の販売営業活動で、1960年代から2000年代まで、こうした理解でマーケティングを捉える営業活動が継続された業界や会社が少なくない。JAの事業活動も、信用・共済・購買などの普及・推進活動を考えてもらえれば、理解いただけると思う。とても長らく続く。

しかし、マーケティング論は進化する。1970年代には、それまでの企業側の「製品志向の時代」、セリング中心の第1世代マーケティングから、第2世代の「顧客志向の時代」へと変化する。マーケティングの主人公が商品から、顧客の期待や希望に変化する。ソニー「ウォークマン」や「ケータイ」が代表的なもの。だが、この時代の変化に気づかない業界は、2000年代に入っても、依然として、商品中心の営業型マーケティングを続けていた。

マーケティングの進化は早い。1990年代から2000年代にかけて、第3世代の「価値志向の時代」に移り、インターネットの本格的な普及で、消費のトレンドや商品、企業動向などの情報を消費者自らが入手できる環境が整う。消費のスタイルも変化する。さらに、2010年以降、第4世代の「自己実現の時代」へ進む。価値志向や自己実現の時代では、企業と消費者の関係性に新たな変革、デジタル化が進化する。

4Cの新マーケティング論でJAの事業活動の変革を

ここで、提案したいマーケティングは、1993年にアメリカの経済学者ロバート・ラウターボーンの定義である。マーケティングに重要なものは、顧客価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の「4つのC」で構成される、この4Cを顧客との関係性で考えるというフレームワークだ。

<顧客価値>顧客が商品やサービスに抱く価値で、性能、便利さなどの品質に加え、デザインやブランドイメージなど、顧客にとってのあらゆる価値を指す。

<顧客のコスト>顧客が商品やサービスの価値を得るために支払う費用。手に入れるための費用は価格だけではない。顧客にとっての価値とはいくらか。

<顧客の利便性>商品やサービスの入手方法は顧客が期待し、求める方法か。店舗へのアクセシビリティー(アクセスし易さ)、ネットでの購入、決済方法、配送など。

<顧客とのコミュニケーション>店舗、訪問、イベントなどでの対面、相談などのほか、オンライン、SNSなど多様な情報ツールによる接点を通じ、いかに良好で、親しみやすい関係性を構築するか。
この4つの視点で、事業活動の見直しを行い、新たなマーケティング戦略の再構築に活かしてもらいたい。JA組織は、組合員との関係性がメインテーマだが、つい先ころまで、第1世代のマーケティング、いわゆる営業推進を行い、組合員に無理をお願いしてきた。見直しと改革は必要だが、4Cによる「組合員・利用者との関係づくり」をマーケティングの基本に再構築してほしい。まずは、コミュニケーション活動の展開だ。
そして、組合員の農業経営や暮らしに、しっかりコミットすることで、新たなマーケティングの世界を具体化したい。組合員主義、地域主義のJA組織の特性発揮がカギである。組合員との接点を増やし、関係性の質を高めることだ。そのために、JA役職員のエネルギーを必要とする。ここは手抜きしないで向き合う行動を起こしてほしい。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)より、『コラム名』を添えてご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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