国境なきパネットーネ2023 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年11月18日
クルーズ船
イタリアのサヴォーナを出港しフランス、スペインそしてジブラルタル海峡を通り、ポルトガルのリスボンまで往復10日間のクルージングがあり、その船上では今年のイタリア伝統菓子「パネットーネ競技会」が開催される。
イタリアを中心にスイスやフランス、スペインの有名なパティシエが船客にスイーツづくりを教え、パネットーネやジェラートなどを味見してもらい、また競技の投票にも参加してもらうなどして盛りあげた。最終日の審査で、北イタリアの町、ブレシャのマウリツィオ・サリオーリが優勝しました。
有名なパティシエたちと参加した船客
今年は外国部門も作られて、日本のパティシエもエントリーしました。
主催者のファウスト・モラビートさんは「来年は日本でイベントを開催する」と打ち明けました。これに応えるかたちで、日本のパティシエの代理として参加していた、イタリア食文化研究家のエレディタート・かおりさんが壇上で「日本記念日協会が、12月1日をパネットーネの日と認定した」と発表し、花を添えました。
壇上のエレディタート・かおりさん
話は変わりますが、クルージングに審査員として参加したスペイン最高のパティシエであるパコ・トッレブランカさんは、ケーキで造形を行う芸術家でもあります。
パコさんに話を聞きました。
◇ ◇ ◇
私は12歳の時に父の友人であるパリの有名なパティシエJean Milletに預けられました。父はスペインの内戦(ピカソの絵『ゲルニカ』やヘミングウェイの小説『誰がために鐘は鳴る』などでもよく知られている、正当な共和国政府に右派のフランコ将軍がクーデタを起こし、3年にわたる激しい戦闘の末、ファシスト政権が樹立された)で共和派として戦い、彼はその時に義勇兵として一緒に戦った戦友です。父は私をファシスト政権のもとで育てたくなかったのです。
スペインが民主主義を回復した年、23歳でアリガンテに戻った私は、小さな手作りのスイーツの店を始めました。私のおじいさんはお菓子屋でした。
3年ほどで従業員も増え始め、10年後には120人になり、現在はホテルや航空会社、エミレーツなどに出しています。多くのお菓子は冷凍で出しますが、すべて手作りで、保存剤などは一切使いません。
私が店を始める時に、日本の製菓会社「コロンバン」で働いていたスペインの友人が、資金を提供してくれたことから、その友人が日本でスペインのお菓子のデモストレーションを行った際に呼ばれ、その後4回参加しました。
私は和菓子のシンプルさが素晴らしいと思います。味は西洋の方が良いと思いますが、妻は日本の方が美味しいと言っています。
私は谷崎潤一郎など日本の作家がとても好きです。
そして和菓子の影響を受けてか、お菓子作りは芸術でもあると考えるようになり、スイーツで芸術作品を作るようになりました。
パコさんの作品 チョコレートの生け花自然さへのホマージュ
西欧人は光しか見ませんが、東洋人は影も大切にします。
その結果、スペインの大学から「名誉美術学士」の称号を、そのほか栄養学や料理学学士の称号も貰いました。
◇ ◇ ◇
スペインに民主主義が復活すると故郷に戻り洋菓子店を開いたパコさん。1978年にスペインの最高パティシエ賞、1979年にはヨーロッパの最高パティシエ賞を受賞。
スペイン国王フェリペ6世の皇太子時代の結婚式にウエディングケーキも作りました。
イタリア人は個性のある手作りの食べ物が好き。
どこでも同じ味のチェーン店は敬遠されます。
「国境なきパネットーネ」は『手作り』の良さを教えてくれます。
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