【JCA週報】「社会的接着剤」としての協同組合-のとも~るスマイルプロジェクト-(北川 太一)2024年3月25日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 山野徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の協同組合研究紙「にじ」の2024年号春号に寄稿いただいた巻頭言「オピニオン」です。
「社会的接着剤」としての協同組合-のとも~るスマイルプロジェクト-
摂南大学 教授 北川 太一
福井の大学に勤めていた2016年頃から、毎夏ゼミ学生とともに能登を訪れていた。行程は毎回ほぼ決まっていて、朝福井を出発し、金沢を経由して輪島、珠洲、七尾と能登半島を時計回りに巡る2泊3日のコースであった。訪問の目的は、当時、コープいしかわがコーディネート役となって展開していた「のとも~るスマイルプロジェクト」の現場を訪れて、能登の豊かな自然環境に触れ、美味しい食も味わいながら、日々奮闘されている現地の方々のお話を聴くことである。
このプロジェクトは2014年から始まり、能登の農水産物を活用した商品の企画・開発・販売を行うことによって、能登地域を元気にすることがねらいである。プロジェクトは、生協、漁協、農協などの協同組合のほかに、県や市町自治体、地元の製造・加工会社やスーパー、さらには高校生もパッケージやキャラクターのデザインを考えるなど「多様な協同」の実践であり、地域ぐるみで農商工連携・6次化を進めながら販売収益の一部を地域の活動に還元する地域連携型の事業である。
輪島ではJFいしかわ(輪島支所)、珠洲ではJAすずし(現在は合併してJAのと)、七尾では(株)スギヨファームの皆さんに大変お世話になった。さざえ漁に精を出す海女さんたちの笑顔、白米地区の美しい千枚田、能登大納言小豆を栽培する広大な農場、宿泊先の木ノ浦ビレッジや能登島の青い海等々...今でも忘れることができない。廃線になった旧のと鉄道の終着「蛸島駅」付近を散策したのも懐かしい思い出である。
その後残念ながら、販路確保の問題や採算ベースに乗せることが難しくプロジェクトは終了してしまったが、事業性と同時に社会性を持つ協同組合が、ネットワークを活かしながら「社会的接着剤」の役割を果たしていた姿が強く印象に残っている。数年間とはいえこうしたプロジェクトが展開できたのは、能登の人たちが地場産業や自然環境・文化を大切にしながら、人間どうしの繋がりを育んでいたからに違いない。
能登地域をはじめとする被災地の一日も早い復旧・復興を、心からお祈りするばかりである。
注 のとも~るスマイルプロジェクトの詳細は、長谷川隆史「多様な協同の力で農漁業・農山村地域を支えるコープいしかわ『のとも~るスマイルプロジェクト』」『協同組合研究誌 にじ』2016 春号 No.653を参照。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(172)食料・農業・農村基本計画(14)新たなリスクへの対応2025年12月13日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(89)フタルイミド(求電子剤)【防除学習帖】第328回2025年12月13日 -
農薬の正しい使い方(62)除草剤の生態的選択性【今さら聞けない営農情報】第328回2025年12月13日 -
スーパーの米価 前週から14円下がり5kg4321円に 3週ぶりに価格低下2025年12月12日 -
【人事異動】JA全農(2026年2月1日付)2025年12月12日 -
新品種育成と普及 国が主導 法制化を検討2025年12月12日 -
「農作業安全表彰」を新設 農水省2025年12月12日 -
鈴木農相 今年の漢字は「苗」 その心は...2025年12月12日 -
米価急落へ「時限爆弾」 丸山島根県知事が警鐘 「コミットの必要」にも言及2025年12月12日 -
(465)「テロワール」と「テクノワール」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月12日 -
VR体験と牧場の音当てクイズで楽しく学ぶ「ファミマこども食堂」開催 JA全農2025年12月12日 -
いちご生産量日本一 栃木県産「とちあいか」無料試食イベント開催 JA全農とちぎ2025年12月12日 -
「いちごフェア」開催 先着1000人にクーポンをプレゼント JAタウン2025年12月12日 -
生協×JA連携開始「よりよい営農活動」で持続可能な農業を推進2025年12月12日 -
「GREEN×EXPO 2027交通円滑化推進会議」を設置 2027年国際園芸博覧会協会2025年12月12日 -
【組織改定・人事異動】デンカ(1月1日付)2025年12月12日 -
福島県トップブランド米「福、笑い」飲食店タイアップフェア 期間限定で開催中2025年12月12日 -
冬季限定「ふんわり米粉のシュトーレンパウンド」など販売開始 come×come2025年12月12日 -
宮城県酪初 ドローンを活用した暑熱対策事業を実施 デザミス2025年12月12日 -
なら近大農法で栽培「コープの農場のいちご」販売開始 ならコープ2025年12月12日


































