若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
2020年の夏、パンデミック最中に外人記者協会の仲間とローマ郊外で28歳の4人の若者が生産から販売まですべてを行っている水耕栽培の農園を訪問しました。
2017年に始めた農園ではイタリア料理に欠かせないハーブを作っています。
4人は高校時代からの友達。大学では1人が産業政策学を、他の3人は理科系で、水耕栽培や環境工学などを勉強、学生時代から環境にやさしい、持続可能な農業について話し合っていたそうです。
そして水耕栽培から一歩進め、水槽で魚を飼い、その水を濾過して植物に撒き、肥料を使う必要がないアクアポニックスを採用、4人だけで作業を行っていました。
それから5年。久しぶりで訪問した農園、ザ・サークルスは施設が増設され、従業員が30人に増えていました。
現在ザ・サークルでは垂直アクアポニックス システムを使用して 90,000 本以上の植物を栽培しています。
アクアポニックスは水耕栽培(Idroponica)と魚の養殖(Aquaculture)を組み合わせた持続可能な栽培システムです。 アンモニアを豊富に含む魚の有機廃棄物をバクテリアフィルターを通過させ、アンモニアを植物にとって重要な栄養素である硝酸塩に変換します。そして植物 は水に溶けている栄養分を吸収、浄化して池に戻します。
このように魚の排泄物が植物の栄養になり、植物が水を浄化することで、魚にも植物にも良い環境が維持されます。
このシステムにより、従来の農業に比べて 90% 以上の節水が可能になり、サイクルが完結して再び魚が水を利用でき、地面で栽培するのに比べ面積当たり4倍の収穫量があるそうです。
営業担当のトーマス・マリーノさんの話
「アクアポニックスは、魚の養殖と高品質のサラダやハーブの生産を組み合わせた技術です。このシステムにより、栽培植物の収穫量の増加と成長速度の向上が保証されます。生産プロセスを組み合わせることで、好循環と、汚染廃棄物を出さない農業、エネルギー、経済のサプライチェーンを作り出すことができます。
そしてこのシステムでは土壌の質に関係なく完全に地面から離れて栽培するために、汚染された土壌でも生産できます。
また 垂直栽培システムにより、かがんで作業をする必要がなく、作業者の作業が10倍楽になります。
農業法人ザ・サークルはともに起業した4人が営業、経営、農業技術、設備 を担当して運営しています。
初めは私たちが資金を持ち寄り、それに銀行からの借り入れ、自治体の補助金などで運営していました。現在は投資してくれる人も出ています。
現在実質的には黒字ですが、生産を増やすための投資を続けているのでその分が赤字。1年半後には黒字になる予定です。
この栽培法は都市の近辺で行うのに適しており、今後はミラノやパリ、ベルリンやアブダビなどへの進出を考えています。
私たちが作る野菜は割高ですが、高級レストランやホテルに人気があり、そういったところに収めており、スーパーや市場には出していません。
イタリア人は淡水魚をほとんど食べないので、養殖している魚を売ることはしていません。そしてそしてポンプなどに必要な電力には太陽電池を使っています。」
始業した4人の仲間はいずれも農家出身でなく、環境問題に興味を持ち勉強して実践に移しました。イタリアではこういった若者が増えているようです。
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