米:特集
【JA全農米穀事業】21年産米生産・集荷・販売方針 需給改善はJA連携が鍵(上)2021年3月12日
JA全農はこのほど2021(令和3)年産米生産・集荷・販売基本方針を決めた。需給環境が大幅な緩和状況となるなか、主食用米は2年産比で▲36万t減と大幅な作付け減が必要となっている。かりに計画生産が達成できない場合は、販売価格・概算金の大幅な下落が想定されている。現在の需給状況について生産現場と認識を共有し、JAグループで連携し徹底して需要に応じた生産に取り組むことが求められている。21年産米の事業方針でJA全農は集荷量の確保、拡大に取り組み安定した取引を継続して行い、生産者の手取り確保に貢献するとともに、将来を見据えた中長期的な取り組みも実践する。米穀生産集荷対策部の栗原竜也部長に聞いた。
作付け転換し所得確保 主食用米の生産減が課題
――21年産米を取り巻く状況をどのように認識すべきでしょうか。
国が生産数量目標を示さないなかで、各県で判断して目安を示してきたわけですが、やはり自県産米の生産量を減らすよう現場に仕向けるということについてはブレーキがかからざるを得ないというのがこの数年の傾向だったと思います。
ただし、西日本は生産力が弱まっており、目安を示してもそれを達成することができないという実態にあり、一方、北・東日本の主産県のなかで目安以上に作付けする県もあり、作況は「99」でしたが、結局、過剰になったということだと思います。
こうした状況のなかでコロナ禍による需要減もあって、国が示した21年産米の適正生産量は693万tでした。これは20年産にくらべて全国平均で5%削減する必要があるということです。
しかし、主産県を中心にかつてない削減量だということから、各県の目安を集計すると3%程度の削減にしかなっていません。非常に危うい状況が現実ではないかと考えています。
ですから、どういう現実になっているか、生産現場に周知を図るということがいちばん求められています。
国は生産数量目標を示さなくなり、一貫して米への関与を弱め、JAグループの集荷量も低下しているなかでは、もはやJAグループだけで全体の米生産・流通をコントロールすることは困難な状況になっています。
われわれJAグループは必要な政策支援を国に求めることはもちろん行いますが、自由な米の生産・流通となっている現状を明確に認識したうえで、農家組合員の所得確保に最大限取り組んでいく必要があります。
今は、生産者直売、JA直売、さらには実需者も直接、生産現場と取引きするなど、いろいろな流通形態が錯綜(さくそう)している実態にあります。そういう認識のなかで、5%も削減するというのはJAグループだけでは無理ですから、国も含めてJAグループを利用していない生産者の方にもこういう状況をしっかり認識してもらう必要があります。(図1)
(図1)米を取りまく基本認識
そこで組織やメディアを通じた情報発信に努めるとともに、行政からも生産現場に状況をしっかり示してもらうことが必要だと思います。
米穀生産集荷対策部 栗原竜也部長
そのなかでわれわれJA全農としては、JAを通じた生産現場への正確な状況の伝達に取り組みます。このままでは米価が非常に下落する可能性があるということをしっかり伝えていくことが重要です。米価が暴落した2013(平成25)年産、14(26年)産のときと、よく似た状況になっています。われわれのシミュレーションでは計画生産が達成できなかった場合、21年産の販売価格は60kg1万1360円と推測されています。
概算金も20年産にくらべて▲2000円~▲4000円程度下がり、すでに概算金を支出した20年産の共同計算収支も、このまま何もしなければ大幅な赤字になってしまうということもしっかり伝えていかなければなりません。(図2)
(図2)今後想定される状況
飼料米を転換の柱に
――作付け転換の重点とする取り組みは何でしょうか。
水田農業の安定を図るために、国が3400億円の予算を確保していますから、それをしっかり活用し国・行政と連携して水田活用米穀の取扱いを大幅に拡大します。ただし、コロナ禍による需要減は、酒造用途など水田活用米穀にも影響が出ているため、潜在需要が大きい飼料用米を「転換の柱」と位置づけて取り組みます。
その際、水田活用の直接支払交付金、水田リノベーション事業も含めて飼料用米、輸出用米などの手取り水準が主食用米水準となることを示していく必要があります。(図3)
(図3)生産者の手取りイメージ
国は作付け転換を支援する予算措置はしてくれましたが、米の市場隔離は行いません。そこを認識して、われわれは21年産の主食用米を削減するということが極めて重要だと考えています。
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